#306 東鳩

午後から部内の紅白戦が始まった。順番に5軍チームと6軍チームの対戦から行われた。その試合が終わると、3軍チームと4軍チームの試合が行われた。最後に1軍チームと2軍チームの試合で締めくくられた。
やはり上のチームになる程、レベルがどんどん高くなっていくのを感じた。
テレビで観たことのある有名選手が次々と登場した。
中でも大学生にしてラグビー日本代表に選ばれている増保選手は抜群の存在感で異彩を放っていた。
僕は入部すればこのような凄い選手と対戦したり、一緒に試合が出来ることを考え、嬉しくなった。暗い気持ちで新人練習を何とかクリアしていた僕にとって光明が見えた気がした。
3試合の紅白戦が終わると、新入生が集められて午後の部の練習が始まった。この日は1周走は何とか最初の1本目でクリアできた。
3周走はいつもの通り、1回ではクリアできず、5本走って何とか最後の最後でクリアできた。グランドの外の外周コースを走るメニューは東鳩と言われていた。コースの途中に東鳩工場があり、この前を通過すると甘いキャラメルの匂いが充満していた。
この日もやはり変わらず心身共に追い込まれる厳しい練習となった。部内の紅白戦を観て少し希望を見出したはずだったが、新人練習開始と共にその様な思いを吹き飛んでしまった。
翌日は月曜日で部自体がオフの為、新人練習も休みだった。4日続いたハードな練習で僕は体中が痛く、疲弊していた。2年間の浪人時代運動らしい運動をほとんでしておらず、体重も7キロ痩せてしまっていた。
僕は運動をしないと筋肉が落ちてしまい、痩せてしまう体質だった。
1日オフで心身共に療養出来る時間が取れるのは助かった。家でも暗く、あまり話すこともしなかったので母や兄が心配していた。いつもはうるさいと言われることもあるほど、しべっていたのでそれは心配されるだろう。
明けた月曜日は重い体を引きずるように学校へ行った。
この日は新人練習が休みとは言え、翌日の練習を考えると気が重かった。

続く…

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