#371 まさかの事態...

新人練の日程で半分を過ぎたあたりから希望者の減少が滞った。希望者を減らす為に練習は過酷さを増していった。そうすると、一度停滞していた希望者の減少もまた動き出す。100名近くいた希望者もこの時点では既に約半分までになっていた。
東鳩やグランド1周走、3周走で脱落者が出る。
タイム内に戻って来れずに、新人練担当の先輩から不合格を言い渡される。
その不合格の一人に友人Aがいた。無情にも友人Aはこれ以上新人練を続けることができなくなったのである。
僕が2回目の新人練チャレンジを踏み切れたのも友人Aの存在は大きかった。彼が猛烈に僕の背中を押してくれた。目を輝かせながら一緒に新人練2回目を受けるのは当然の如くいつも僕に熱いラグビー談義(談義というよりはほぼほぼ一方的な語り)を話してくれた。
新人練中も彼は僕にとっての心の支えにもなってくれていた。
彼も頑張るから僕も頑張ろうという思いを自然と思いつつ、毎日の新人練を乗り越えてきた。
この日の新人練が終わり、一年生部室で入部希望者達が狭い室内で身を潜める様に立ち尽くしているところの真ん中で友人Aは僕に抱きついてきた。「新人練また落ちてしまった…」と号泣した。
僕は締め付けられるような思いに駆られた。
心の支えを失った僕自身も新人練終了が脳裏をよぎった。シャワーを浴び着替え終えてからお互いほぼ無言で駅までの道を進んだ。
途中で別れる際に友人Aは「じゃあな。頑張れよ・」と言葉少なげに去っていった。遠ざかる彼の後姿は見るに見かねた。
翌日の新人練からは僕一人で乗り切っていかなければならない。
僕もまるで自分が新人練を脱落したかのようなどんよりした気持ちに包まれていた。自宅までの道のりがやけに遠く感じた。
続く…


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