#368 過酷な日々
練習最後にあるグランドを走るタイム走は1周と3周の二種類があった。
1周が約340ⅿ位なので3周だと1020m。
僕は1周走は1回で切ることができたが、3周走は得意ではなく、何度も走る事となった。
3人一組で走り、前の組が終わるとすぐに次の組がスタートする。
あまり得意でない者にとっては自分より速い人と組んだ方が引っ張ってもらえるので僕は結構フォワード一列の者に一緒に走ろうと誘われた。
僕は先行逃げ切りをしたかったので、他二人が遅かろうが速かろうがあまり関係なかった。1周走はとにかくスタートダッシュを猛烈に行い、グランドの第3コーナーまでは全力疾走。第3コーナーを切ってから20m程減速後、最後ひと踏ん張りでスピードを再度上げ、ゴールを駆け抜ける。
1周走は最初の1本目で切れないと、その後余力は残っておらず何本も走る事となる。
1周走の前は集中力を高め、無心になることが重要だった。
一方3周走はタイムが切れず、5~6回走り、「最後このタイムが切れなかったら明日からもう来なくてもよい。」と先輩が言った時になんとかクリアという感じだった。最後は大甘なタイム設定となるので、そのことも助けられる一因となる。クイズ番組で良く見られる最後の問題がボーナス得点で
一気に挽回チャンスありみたいな感じ。
このタイム走は常に頭が真っ白になる位に追い込まれるメニュー。
もちろん、練習の最後なのでそれまでのメニューでの疲労の蓄積も大きい。この様に毎回、新人練は心身共に追い込まれる過酷なものだった。
身体の疲労はもちろんのこと、心も削られていく感じだった。
新人練の真ん中位に行われたメニューとしてヘッドダッシュ(別名:キックダッシュ)があった。この練習は唯一、ボールを使っての練習。
4人一組で先輩が前後左右いずれかに蹴ったボールをキャッチもしくは拾い上げ、ゴールラインまで約50mを全員でパスでつないで走り抜ける。
4人のうち、誰かが遅れるとボールを繋ぐ人数が減り、より負担が大きくなる。この練習もついていける者と遅れる者の差が著しく生じた。
入部希望者には浪人生(1浪~3浪まで半数近くが浪人生)が多く、現役時代に比べると著しく体力が低下しており、苦戦するものが多かった。
自分の組に着いていけないと、その遅れた者は一人で後から追っかけて走る事となる。僕の組も度々、1人2人と遅れる者が出て、少ない時は2人でボールを繋いでいることが度々あった。
僕は高校の時に、この練習は散々していたおかげで、タイム走に比べると
比較的楽に感じた。
続く…