#304 蛇に睨まれた新入生
新人練習3日目は僕が通う学部のオリエンテーションがある為、午前中のみの参加で午後は休む旨をラグビー部主務に申告していた。
午前の練習は9時開始だったので8時30分前にはグランドに就いて着替えていた。練習開始までの少しの時間は神奈川県立高校出身の同級生や数人の話す様になった新入生と途切れ途切れながら話していた。
最初は一人だったのが、少し話が出来る新入生が出来たことでかなり気が楽になったとは言え、精神的にも肉体的にも追い込まれる練習を前に気持ちは淀んでいた。
間もなくラグビー部主務が登場すると、新入生達の緊張感が一気に高まるのを感じた。
最初にラグビー部主務が出席を取ると、前日より更に人が減少したことが分かった。
名前を呼ぶと返事がない場合、もう来なくなり、脱落したことを意味していた。名前を呼んで返事がないとラグビー部主務はその名前をボールペンで線を引いて消していた。その時のボールペンが紙を擦る音が聞こえる位に静まり返っていた。
ストレッチから始まるが、既に筋肉痛で体中が痛くてストレッチ自体が苦痛を伴っていた。異様な空気の中、ここ二日で行われた練習が次々と行われていった。僕はグランド3周走やグランド外のランニングがあまり得意ではなく、苦戦した。
最初に設定されたタイムが切れず、数本走る羽目になっていた。
この日は1周走で最初の1本目でタイムを切ることが出来ずに、計5本走った。最初の1本目を切れないとそれ以降余力が残っておらず、いくら設定タイムが少しずつ長くなっていっても切ることは難しかった。そして最後、このタイムで切れない場合はもう明日から来なくてもよいと少し甘めにタイムが設定され、辛うじて切れた。
そのタイムでも切れない者もおり、ラグビー部主務の言葉の通り、その時点で脱落となった。
ラグビー部主務は一切表情を崩すことなく、睨みつける様な威圧的な表情で僕らを見据えていた。その威圧感に押され、より新人練習の厳しさを増長させていた。
続く…
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