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僕はこの町を待ってた

あれはある昼下がりの、夕方の日差し迫る、いい風の吹く頃の事でした。

いつものように崖を登って空を眺めていると、何処からか列車が通り過ぎてゆく音が聞こえてきました。

当然、周りに線路など無いし、空耳にしてはちょっと長いし鮮明に聴こえたので、これはこれは不思議に思って、ぼおっと、悪戯に時を浪費し黄昏ておりました。

時刻は午後5時過ぎ。

暫くすると夕焼け小焼けのチャイムがじわりと遠くから聞こえてきました。

音の在処を探す旅はそれから数日続きましたが、残念なことに私がそれを見つけることは叶いませんでした。

あれから数十年が経って、いつの間にか山にはトンネルが空き、崖の上から一直線に果てまで続く参道は、立派な列車が通る線路になっておりました。

こうして親族の墓参りにこの町へ帰ってくる度に、私は小さい頃の日記に書いたあの不思議な出来事を想い返して、忘れ物を取りに出かけるように、音の在処を探す旅に出るのです。

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