Q3:休憩時間にスタッフが発注作業!その時間の給料支払いを求められたら払わなければならないのでしょうか?
A:性質により判断されることになるため、客観的なルールを定めておくことをお勧めします。
<解説>
ある日の店舗。レジで発注作業をしていたスタッフが休憩時間になり「休憩開始を打刻」、その後発注端末を持ってバックルームへ移動。そのまま事務所の机に座り、ご飯を頬張りながら発注作業を続ける…という光景を目にしたことはありませんか?
発注は、いいか悪いかは別として、バックルームでもできる作業の一つです。
私も店舗勤務時には発注をしていましたし、今でも支援をしている店舗では休憩中に発注を行っているスタッフを見かけます。なぜ休憩時間に発注作業を行うのか、というと、理由はいくつか考えられます。例えば、「休憩時間中も行わないと自分のシフトの中で終わらないと判断した」という場合、他には「レジなど、お客さまや他のスタッフの影響を受けず、完全に自分のペースで進められる」という場合など、です。
では、休憩時間に発注作業、つまり仕事をした場合、給料は発生するのでしょうか。また、休憩時間に発注していたスタッフが、「自分は休憩時間も使って発注をしていた。給料を払って欲しい」と言ってきたら、給料を支払う義務が生じるのでしょうか。
それに回答するためには、まず、労働時間と休憩時間の定義から紐解いてみましょう。労働時間は、ある裁判がきっかけで「労働者が使用者の指揮命令(監督)下に置かれている時間」という通達が出されました。また、休憩時間とは「労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保障された時間」です。これにより、休憩時間の発注がどういう性質のものであるかによって、労働時間となるかどうかが判断されることとなります。
まず、わかりやすい例で言うと、オーナー・店長がスタッフに対し「休憩時間を削ってでも全部発注して帰ってくれ」なんて言ってしまったら、仮にシフト表で休憩時間が明記されていても、労働時間、すなわち「使用者の指揮命令下におかれている時間」として判断されてしまう可能性が高くなります。これは、完全にスタッフへ指示をしていますよね。
ただ、直接的な指示をしなかったとしても労働時間と判断されてしまうケースも考えられます。それは例えば、スタッフが担当している発注の箇所が多く、かつ終業時間までに担当箇所を全て終えなければならない、という暗黙のルールが出来上がっている場合です。この状態を「黙示の指示」といい、休憩時間を削ってでも発注をしないと終業時間に間に合わない、ということが誰の目から見ても明らかで、かつ、オーナー・店長がそれを把握しているとき、たとえスタッフに対し何も言わなかったとしても、休憩中にスタッフが行った発注時間は労働時間となる場合があります。こうなったら、給料の支払いが義務として発生します。しかも、もしその時間が残業時間(正式には「時間外労働」と言います)に該当するのであれば、時間外割増賃金を払わなければならないのです。
逆に、業務量も特に多くなく、じゅうぶん労働時間内で発注を終えられるのに、スタッフが「レジ接客をしながらだと気が散って発注に集中できない、だから休憩時間にやってしまおう」と自ら考え休憩中に発注を行った場合は、スタッフが給料を要求してきても、直ちに支払う必要はないでしょう。
ただ、現実的にはそう簡単には判断できません。というのも、日によってお客さまが変わりますし、急に店舗が混雑することもあるからです。そのため、客観的判断が行いやすくなるよう、就業規則などで明記しておくことをお勧めします。労働時間と休憩時間の意味をハッキリとさせておき、かつ休憩時間やシフト外の時間で勤務が必要になる場合には、事前にオーナー・店長(所属長)の許可を得なければならない、などと取り決めます。もちろん、これらの規則を作ったら、必ず誰もが見られる場所におくなどして周知をはかりましょう。現実的には実態に即して判断されるため、規則に定めたから何でも有効になる、とはいきませんが、客観的判断の助けにはなります。
ちなみに休憩時間は、1日の勤務時間が6時間を超えたら45分、8時間を超えたら60分、少なくともスタッフへ与えなければなりません。そのため、休憩時間を削って行った発注業務が労働時間になる場合は、本来その日の別のタイミングで削った時間分を休憩として与えなければならないので注意が必要です。
責任感の強いスタッフほど、悪気なく自分の身を削ってでも任務を遂行しようとします。だからと言って「あのスタッフは真面目だから休憩時間を削って頑張ってくれている」と安心してはいけません。小さなことからトラブルに発展させないためにも、「あってないような休憩時間」が常態化している場合は、就業規則やシフト表に明記し、休憩時間はしっかりと体を休めるよう、スタッフに伝えておきたいものです。
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