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12分で歩いていけると示された道が山だった

今日は遠くのほうまで出かけた。ヘアサロンに髪を切ってもらいに行った。この目的を果たした時点で、満足して帰ればよかったのだ。なのに私は、せっかく外出したのだから、ついでにどこかに寄れないだろうかと、考えてしまったのだ。そうだ、県立図書館に予約した本を取りに行きたいんだった。行けないだろうか?Google Mapsでいろいろ検索してみたところ、以下のようなルートを発見した。

徒歩12分

おお、横に移動するだけではないか。行ける!私はこの出発地点付近のバス停で降りて、スマホを片手に指示通りの道を歩き始めた。しかし。どうも行き止まりのような気がする。だがGoogle Mapsさんは道があると示している。どうしたことだ。Google Mapsさんが嘘などつくだろうか。そう思い、よく見ると、奥のほうに細い道がある。しかしその細道は、どう見ても山に向かっているのだ。

よく見ると細い道

怯んだ。人が1人通れるくらいの細い山道を行かねばならないのか?ここでやめておけばよかったのだ。だが「まあ細いとはいえ道だ」と、私は進むことを選択してしまったのだ。

傾斜があるのでちょっと疲れる。でもゆっくりいけば大丈夫だろう。そう思っていた私の前に、それは出現した。

階段だ。しかも相当に急だ。そしてあくまでも簡易的に作られた階段で、踏み台は鉄板、手すりは鉄パイプである。これはどうしたことだろうか、ねえGoogle Mapsさん。改めて私は地図を確認する。

ちゃんと書いてあった

徒歩経路は実際の状況を反映していない場合が、と、Google Mapsさんはきちんと逃げ道を用意、いや、利用者に注意を促していた。ここに気付かなかった私が悪い。しかし、何だその上にある「ほぼ平坦」の文字は。この急傾斜が「ほぼ」ならちょっとした山はみんな「平坦」じゃないか。そう悪態をつきたくもなる気持ちを、おわかりいただけるだろうか。

ここでやめておけばよかったのだ。まだ引き返せた。だが、私は見つけてしまったのだ。階段の上から降りてこようとしている人を。階段の幅は狭く、1人しか通れない。私は上の人の動向を見守った。急階段をその人はゆっくり降りてきた。私より年輩であろうその人は、降りきる時にこう言った。
「すみませんね。本当、恐怖の階段よね」
「本当に!」
上ったことはないが、それが安全とはいえない代物であることくらいはわかる。だが、現にその階段を利用している人を目撃してしまった。私の中に妙なプライドが生まれていた。

上るしか、ない。私は足を踏み出した。

鉄板を踏みしめる。一歩一歩、確実に足を運ぶ。手すりを両手で掴んで。ここで足を滑らせようものなら、間違いなく怪我をする。真面目に私は、身の危険を感じた。階段は恐怖であると同時に、急なので上るだけでも異常に疲れる。息が上がってしまっている。だが、途中で止まると危険度が増す。荒い息を吐きながら私は、ただその階段を必死で上った。それは予想以上に長い。改めて思う。さっきの降りてきた人、実はすごいな?

なんとか登り切って、平坦な場所まで移動し、息を整える。その近くは工事現場になっており、作業員の方が作業をしていたが、人の視線など気にできる状態ではない。しばらくその場で休んだ。スマホで現場写真を抑えておく余裕などなかった。本当に、恐怖の階段だった。横に移動するだけで簡単そうに見える道に、縦の難関が存在しているとは思わなかった。二次元情報のみで物事を判断してはならない。現実は、三次元なのだ。

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大場さやか
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