ひな人形を飾って
ひな人形はもう少し早く飾るものかもしれない。しかし家では大体2月の末に飾り、3月3日を過ぎたらすぐしまうということができない。ここで「ひな人形をしまうのが遅くなると婚期が遅くなる」などという迷信を口にされる方はさすがにもうおられないとは思う。しかし、この言葉を当たり前のように聞かされてきた世代、かつ、結婚していない身としては、申し訳ない気持ちになってしまうのが事実である。
本当はこのひな人形は、7段飾りなのである。なのにいつからか、内裏雛だけを出すようになってしまっている。この点でも申し訳ない気持ちになるのだ。他の人形や道具は無事だろうか。一度箱から出してみたほうがいいと思う。
この二つの理由によって申し訳ない気持ちになりながら、箱から人形を出して床の間に飾るのが、毎年の私の仕事である。
親や親族が現在の私のことをどう思っているかはわからないが、このひな人形が家にあるということは、生まれた私の健やかな成長が願われていたということなのだろうと思う。穿って考えてみて、世間的に女子が生まれたらひな人形を買うのが当然だったのでそうしただけだったとしても、人形を購入する時には、私の存在が頭に浮かんでいたはずだ。
自分の記憶にないところで、でもきっと自分は誰かに思われていたのだ。それが幸福でなくて何だというのだ。
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