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「絵を描く」のもスモールステップ

さやか星小学校 教務主任・第1学年担任 島岡次郎

先生 「今日は、『先生に伝えたい出来事』の絵を描きます。自由に描いて良いですよ。」
Aさん(え〜、どうしよう。何を描けば良いんだろう。何なら描けるんだろう・・・。)
先生 「あれ、Aさん、どうして描かないの?何でも良いんですよ。描きたいことが何もないの?」
Aさん(そうじゃなくて・・・自分でもどんなことを描けば良いか分からないんだよなあ・・・)
先生 「ほら、黙っていても絵は描けないでしょ。自由に描いてごらん。」

 小学校の図工の時間に、こんな光景が何度繰り返されてきたでしょう。「自由に描きなさい」と言われると、何を描けば良いか分からなくて困ってしまうお子さんは、実はけっこうたくさんいます。そういうお子さんは、絵を描く授業のたびに苦しい思いをし続けるので、いつの頃からか絵を描くのが嫌になってしまいます。本校にも、「自由に描いてと言われると、固まってしまう。」「友達に絵を批評されて描くのが嫌になってしまった。」と、絵を描く学習に対しての心配をご相談くださる保護者の方が複数いらっしゃいました。そんな時は、やはりスモールステップの出番です。

 絵を描くテーマは、「先生に伝えたい出来事」に設定します。これは、毎日宿題で日記を書いているので、既に題材が蓄積されていたからです。ここから、絵を描き上げるまでの行動を課題分析します。

(1) 自分が絵に描きたい出来事をたくさん書き出す。この時点では、実際に描けるかどうかは考えない。
(2) 書き出した出来事の中から、より絵に描きたくて、かつ自分が描けそうな題材を選ぶ。
(3) 題材を選んだら、そこに描くものをワークシートに書き出す。例えば、「自分」「お母さん」「ベンチ」「太陽」のように、具体的に書き出していく。
(4) 絵に描くものが決まったら、どこに何を描くか構図を決める。
(5) 構図を決めたら、下描きをする。下描きは、色鉛筆で色を塗る。
(6) 下書きに沿って清書をする。清書は、絵の具で色を塗る。

 全ての段階で、やることが明確に示されたワークシートを用意しました。これだけのステップを踏み、各課題で達成感と称賛のダブル強化が発生すれば、「何を描けば良いか分からない」状態にはならないだろうと考えました。結果は、大成功でした。全員が途中で引っ掛かることなく、課題に即した絵を描き上げることができました。この学習で特に重要だったのは、「題材を決める」、「何を描くか決める」、「どこに描くかを決める」という行動を子ども任せにせず、方法を教えなければいけない重要な下位スキルと捉えて指導したことです。この手順をすっ飛ばして「自由に描いてごらん」と言われたら、何をすれば良いか分からず、混乱する児童が続出すること必至です。

自分が決めた絵に描くものを、どこに配置するかを決めていきます。絵を描くものは、優先順位も決めてあるので、その順番で絵の構成を決めます。この段階で、描くものを削ったお子さんもいます。
色鉛筆で下書きすると、完成イメージが明確になります。絵の具と色鉛筆で、表現の違いも学ぶことができました。

 これは、ちょっと考えれば分かることなのに、改善がなされず「自由に描いてごらん」という指導が続いています。その理由は、「自由に描いてごらん」で描けてしまうお子さんが一定数いるからだと思います。そうなると、描けないお子さんに問題があるように捉えられてしまい、教師の授業の改善につながりません。さやか星小学校が授業において最も重要視している理念は、「学び手は常に正しい」です。標的とする行動が生起しなかった時、子どもに原因を求めるのではなく、課題や教示の仕方、学習方法に改善の余地があると考えます。だからこそ、このような授業が展開できるのだと考えています。


下書きを見ながら色を塗れるように、机の向きを工夫しました。
パレットを上手に持って色を塗ることができています。
この集中した表情!

 ちなみに、授業を行う前に、担任団は子どもが行う予定の活動に取り組みました。そして、ワークシートが標的行動を適切に引き出すことができるか、課題の難易度や課題分析の細かさは妥当かなどを検討しました。そして、細かい修正を行いました。さらに、指導内容検討委員会で職員の皆様からご意見をいただき、改善を加えて授業に臨みました。手間と時間はかかりましたが、その成果は既にご紹介したとおりです。このフォーマットは、今後「絵を描く」という全ての学習で使うことができるので、長い目で見れば教材研究の時間は大幅に短縮できると思われます。今は膨大な時間をかけて一つひとつの教材を作っていますが、これらの蓄積が、さやか星小学校の大きな財産となっていくと感じています。

担任団が教材研究で描いた絵です。自分で描くと、アドバイスも的確になることを実感しました。

2025年度入学・転入 第3回入学検定の願書受付を開始しました。

さやか星小学校2025年度 第3回入学検定の願書受付を開始します。
募集要項をお読みいただき、ご応募ください。
なお、9月16日に開催したさやか星小学校の入学説明会の見逃し配信も、公開しています。
視聴希望の方は、こちらからお申込ください。

入学検定および日程
1) 願書提出手続き
入学願書をダウンロードし、必要事項を記入のうえ、郵送にて提出してください。
入学願書 (ExcelとPDFの内容は同じです。)
Excelファイル(表面・裏面あります)
PDF

〇提出先:〒384-0621 ⻑野県佐久市入澤 152-1 
学校法人⻄軽井沢学園 さやか星小学校 入学検定受付係
〇受付期間:2024 年11月18日(月)〜12月9日(月) 郵送必着
・願書を受け付けましたら、入学検定料の納入依頼書をメールにてお送りしますので、期日までに検定料30,000 円をお振り込みください。
・当日の検定内容は、保護者への作文課題と面接(応募人数により集団面接の場合あり)、お子さまの行動観察です。

2) 入学検定日程と合格発表
〇第3回 入学検定日程
2024 年12月15日(日) 午後2時〜5時
検定会場
サムエル幼稚園(⻑野県北佐久郡御代田町塩野 3180-558)
合格発表
入学検定を実施した日より1週間を目安に結果を郵送いたします。