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官能小説を一度も書いたことがない状態から累計売上870万円の同人作家になるまでにやってきた、全部
※この記事は途中まで無料で読むことができます。
同人小説家の小夜夏ロニ子(@sayayansayasaya)です。
2020年にうつ病で会社を退職し、藁にもすがる思いで作品を売り出してから5年間、創作で食べてきました。
最初の2年は専業で、そこからは半日の仕事をしながら作家を続けてきました。
「小説は書いているけどお金にならない」
「趣味のエロ小説がお金にならないか?」
「エロでもなんでも作家になりたい」
そういった過去の自分が思っていたことへのアンサーとして、この記事を書きました。
5年間でやってきたこと、考えてきたこと、なるべく全部書きました。
私のことを知らない方も多いと思うので、軽く実績を紹介します。
・小説同人誌 12冊
・音声作品(他サークル依頼含む) 29作品
・最高販売数 7374本
・pixiv 小説デイリーランキング オリジナル作品中1位
・フランス書院官能小説大賞 二次審査通過
・累計売上 870万円
よくいる同人作家として、細々とやっています。
同人作家になる前は、新卒から勤めた会社で働きながら、趣味で小説を書いていました。
もとは全年齢の小説を趣味で中学生くらいから書いていたのですが、会社員の頃当時ハマっていた性癖のエロ小説をpixivで読むようになり、思った感じのがなくて「もういい!俺が書く!」と勢いで初めての官能小説をpixivに投稿したのが2019年3月のこと。
そこから1年後には初めての作品を発売しました。
発売したのは会社をうつ病でやめた直後で、働こうにも当分は無理。
そんな当時唯一お金になりそうなものが、自分にはエロ小説しかなかったのです。
どうせもうまともに働くなんて無理なんだ、好きなことをしよう、と半ばヤケクソになり、作品を真剣に売り始めました。
2年目で年収が280万円ほどになり、「あれ?会社員くらいあるな……」とふと思いました。
「もしかして、いけるのでは?」
そう思ってしまってしまった私は、5年も作家をやっています。
そして実際に、それで食べていけています。
3年目からは、作品作りの元手を確保するためと、ちょっとは外で働いた方が気分転換になるという理由で、楽な仕事を見つけて半日だけ働いています。
5年の間に何度もスランプがありましたし、専業のプレッシャーや、このまま一生書き続けることができるのかという不安もありました。
それでもなんとか、5年間やって来れました。
そしてこれからも、やっていきます。
趣味でエロ小説を書いている人はたくさんいます。
私が投稿していたpixivでも、毎日大量のエロ小説が投稿されています。
その中でも、正直私より上手い作品、エロい作品を書く人はたくさんいます。
ですがほとんどのその人たちは、お金につながっていません。
絵でも小説でもそうですが、「上手い=売れる」ではありません。
作品を売るためには、ただ好きなものを書いてとりあえず売りに出してみるのではなく、しっかりと「考えて」売ることが必要です。
私より素晴らしい作品をつくる多くの人が、私より稼げていない。
その背景にあるのは「売る」ことを考えることへの忌避感です。
小説、絵、音楽、芸術をやる人は、芸術で食べていけたらと思っている人がこんなにも多いのに、「でも私の作品なんかどうせ売れないだろうし……」と「どうやったら売れるか」考えることを諦め、お金のことを考えることに対し苦手意識があります。
もちろん働きながら創作をやっている人にとっては、そんなにお金のことを考える必要はありません。
私は会社をやめてしばらく働けない、どうしてもお金を稼がなくてはならない追い詰められた状態だったから仕方なく「売ること」に向き合ったのです。
そんな私だからこそ、小説で食べていけたらな、と思う方に伝えられることがあります。
この記事では、小説を売る考え方、私が試したこと、戦略、実際に行動したこと、失敗したこと、なるべく5年間の全部を書きました。
ただ一心に小説を書いていれば誰かが見つけてくれてお金が舞い込んでくる、そんな風に考えていた過去の自分からどうやって変わったのか。
それは「考え方」を変えたからです。
仮に本業の仕事で十分稼げていても、ぜひ小説で稼ぐ最初の1円のうれしさを味わってみて欲しいです。
それは会社で我慢して言うことを聞いていたらなんか定期的に振り込まれる金ではなく、「自分が好きなことで、自分の実力が認められて、買ってくれた人がいることを証明する、まったく価値の違う1円」だからです。
この体験があれば、今後「小説で認められてない」という気持ちをくすぶらせずに済む、そのくらい「大好きな小説でお金を稼げた」という経験は人生を変えます。
この記事に「書いてないこと」を初めに断っておきます。
・誰でも簡単に小説が書ける方法
・どんな小説でも売れる魔法の売り方
・効率よく楽して小説がうまくなる方法
そういうのを求めてこの記事に来た人はごめんなさい。他を当たってください。
この記事に書いてあるのは、泥臭い試行錯誤の中で、ほんの少しなんとかなった方法と、それを生んだ考え方です。
作家というのは、優しく、残酷な世界です。
誰でもpdfをつくってDL販売のサイトに登録すれば、作家の仲間入りです。優しい世界です。
誰もがトッププロの宮部みゆき、東野圭吾などと比べられます。読者は「初心者の同人作家だから」と手加減なんかしてくれません。そういった作家たちと、娯楽の時間を奪い合わなければいけません。エロ小説でも同じことです。残酷な世界です。
その世界で、ひたすら手を動かし、頭を悩まし、もがいてきたからこそ伝えられる、実践的なことばかりをこの記事では書きました。
ここまで聞いてもなお、小説でお金を稼ぎたいと思いますか。
大丈夫です。
思うから、ここまで読んだんですよね。
作家になることを諦めきれない、作家になったけどもっと稼ぎたい、そういう人の力になりたくてこの記事を書きました。
一緒にこの厳しい世界を作家として生き抜きましょう。
どうせ私たちは、一生書かずにはいられないのですから。
「いつか作家になりたい」をやめる
小説を書いたことがありますか。
あるなら、もう、あなたは作家です。
これには反論がいくらでもあるでしょう。
「作品を1作も売ったことがない」
「作品の売上だけで生活できていない」
「新人賞を取ったことがない」
どれも過去の私が思っていたことです。
その上で、今の私ははっきり断言できます。
「さっさと作家の自覚を持って、プロと戦う覚悟を持て」
作家じゃないから、売れなくても仕方ない。読まれなくても仕方ない。評価されなくても仕方ない。
そんな風に、「自分はまだ作家を名乗るなんてとてもとても……」という謙遜に見せかけた、言い訳をしていました。
その状態から、「このままなんとなく趣味で書き続けてたら、なんかお金がもらえるようにならないかなー」と思っていたのです。
こんなスタンスで食べていけるわけがありません。
まずはその考え方を変えました。
「自分はもう小説を書いているんだから、作家である(自認を改める)」
「売れていない作家である(現状を受け入れる)」
「作家なんだから、自分で売れるように考えなくてはならない(行動を決意する)」
と自己認識を改めたのです。
作品を売る前ですから、その時点の私は「ただpixivにエロ小説を投稿してたまにランキングに載る人」でしかありませんでした。
なのに、作家を自認することにしたのです。
これは自分を鼓舞するためでもあり、本気になるためでもありました。
「いつか作家になれたらなー」と「いつか宝くじが当たればなー」は、同じです。
そう思っていれば宝くじが当たるでしょうか。
なんなら宝くじを買ってもいないのに、そう思っていませんか。
作家とは「小説でお金を稼いでいる人」だとわかっているのに、そうなるための行動をしていなかった。
なので、もう自分は作家なんだとハラを決め、「作家ならこうする」を軸に考え、行動するように変えたのです。
そこからすべてが動き出しました。
「高い目標」と「現実的な目標」を両方立てる
私のなりたい姿は、「作家の収入で食べていける」状態でした。
今でこそ半日の仕事と兼業なので目標を下げましたが、最初は専業だったので、とりあえず「新卒の月収20万円なら年収240万円だから、これを目指そう」と思っていました。
小説が売れないことはなんとなくわかっていたので、これは私にとっては「高い目標」でした。
それとは別に、「現実的な目標」も設定しました。
まずはエロ小説を売る予定のダウンロード販売サイト「DLsite」で、そのとき売られているすべての小説(8400作品)の販売数を調べました。
その結果わかったのが以下のデータです。
・一番売れている作品で3600本
・販売数の中央値は23本
・1000本売れると上位1.6%
・100本達成してるのは1953作品。(上位23%)
・50本達成してるのは2944作品。(上位35%)
つまり小説は、「とりあえずこのくらい売れるだろう(中央値)」が23本という、まったく売れない世界だとわかりました。
その中で「高い目標」として、1000本売れることを目指すことにしました。
毎回1000本売れれば、トップ1.6%の作家です。
「現実的な目標」として立てたのは、「100本売る」という基準でした。
この二つの目標をもとに、単価を設定することにしました。
だんだんわかってきた、「1冊にかけていい制作費」
小説を何冊も出すうちに、だいたい100本売れることがわかりました。
一番売れたものは1000本行きましたが、毎回そうはいきません。
そこで問題となったのが、単価でした。
小説同人誌をつくるには、小説を書くだけでなく、諸経費がかかります。
表紙イラスト、タイトルロゴデザインなどです。
やってみた感じ、挿絵を増やせば売れるというものでもなく、「1冊つくるのにいくらまでかけていいか」を100本の売上から考えることにしました。
私の小説はやや高めで売ると決めており、すべて880円なのですが、DLsiteだと自分の手元に495円入ってきます。
100本売れれば約5万円です。
なので100本は売れるだろうと見込み、制作費用を5万円を基準につくることにしました。
・表紙(カラー) 2〜3万円 1枚
・挿絵(モノクロ) 1〜2万円 1枚
・タイトルロゴ 1万円
このくらいでなら現実的につくることができます。
もちろん人気のイラストレーターさんに頼むと1枚10万円という場合もありますし、そこは予算を提示して受けていただける方にお願いするしかないのですが、私はだいたいこの価格感で受けてもらえています。
ただし、これは業界でも底値に近いと思っています。
たくさん売れたら追加で支払いということもしています。
目標は「作家になる」ではなく「作家として暮らす」
金額や販売数についての数値目標とは別に、「自分のしたい生活はなんだろう?」という将来の目標も一度しっかり考えました。
そこで気づいたのは、「作家の収入で食べていける」は微妙に違うな、と思ったのです。
私にとって一番大事なのは、「小説を書けること」です。
小説を書くこと自体が楽しく、喜びがあるから作家になりたいのです。
なので重要だったのは、「作家の収入で食べていける」という状態ではなく、「生活のほとんどを小説(好きなこと)をしている時間にする」という状態を実現させることでした。
これは似ているようで大きく異なります。
「小説ですべてのお金を稼がなきゃ」ではなく、「小説以外でも収入を得て、結果的に小説を書いている時間が長ければそれでいい」という考えにシフトしたのです。
作家になることにこだわる人は、邪道だと思うでしょう。
ですが、私にこだわっている余裕はありませんでした。
その結果として今の「作家」としての生活があります。
何本売れれば金額目標に達するかを計算して単価を決める
100本売れれば大成功、1000本売れればトップ作家。
では目標の「月20万円」を稼ぐには、毎月何本売れればいいのでしょうか。
私の場合、小説の単価はこういう考えの流れで決めました。
文庫本よりは高く、単行本よりは安い
↓
このボリュームで1000円は無理がある
↓
990円はほぼ1000円なのでやめる
↓
可能な限り高単価にするなら880円が限界
880円で売って約500円入ってくるので、単純計算で
20万円 ÷ 500円 = 400本
となります。
つまり毎月400本売れれば目標達成となります。
もちろん、そんなに売れません。
売れても1000本ですから、3ヶ月しか続きません。
では3ヶ月に1作出せるかというと、できなくはないのですが、毎回1000本ヒットする保証もありません。
ですが、20万円の稼ぎ方はなにも「500円×400本」だけではありません。
例えば単価20万円の仕事を1回受けるだけでも20万円の収入になります。
大事なのは、いろんな単価での稼ぎ方の設計をしておくことです。
小説で1回20万円の事業をするのは難しいでしょう。
ですが例えば、「小説の完成まで原稿を見てサポートします」というコンサルに近いサービスで単価2万円というのはありです。
これなら毎月10人に売ればいいことになります。
だいぶ違いますよね。
このように、いろんな単価の設定をしてみて、その単価でできるサービスや事業、製品を考えることで、最終的にはそれの組み合わせでトータルを稼ぐことができます。
私がまず目をつけたのは、「音声作品」と「note」でした。
避けては通れない音声作品というジャンル
アダルトテキストの仕事の2大巨頭は、「音声作品の台本」と「エロゲのシナリオ」だと思います。
エロゲのシナリオは商業作品のライターなのでハードルが高いですし、同人で自分でゲームをつくるのもまた違った専門知識がいります。
音声作品なら、台本を書いて声優さんに依頼し、イラストをつけて売るだけです。
もちろん台本の書き方は小説とは異なるので勉強がいりますが、もともと音声作品をよく聞いていた私にとっては身近な存在でした。
小説は売れない、というのは前提としてわかっていました。
なのでまず最初に、今後の元手となる資金を作る意味でも、音声作品を売ることにしました。
私の立てた戦略はこうでした。
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