恐怖心を超えた美しい青い世界
こんにちは。ヨガインストラクターの吉田紗弥です。最近ではお祭りもいろんなところで行われているようですが皆様は行かれましたか?
今日もヨガ哲学のお話から入ってまいります。
今から約2000年前に成立されたとされるヨガの根本経典「バガバットギーター」には私たちの生活をより良くしていく賢者の教えが記されております。
その中か一説ご紹介いたします。
「私のこのような恐ろしい姿を見ても慄いてはいけない。心を乱してはいけない。恐怖を離れ、心から喜んで。」
このバガバットギーターという書物ですが、日本人はあまり知られていませんが聖書やコーランの次に世界中で読まれている叙事詩となっており、戦士であるアルジュナと神様であるクリシュナの二つの会話形式のお話となっております。
そしてこの叙事詩の最大のテーマは「ダルマの遂行」というのがテーマになっており、ダルマとは日本語で「義務」と訳されます。私たちがやるべきこと、使命などと意味付けされ、戦士であるアルジュナは自分の使命に苦悩しますが、神様であるクリシュナが苦悩するアルジュナを励ましていくお話です。
ヨガではそのダルマの遂行、つまり「経験を積む」ことが大事にされており、目の前の対象と波長を合わせていく作業を繰り返し行い、経験を増やし世界とのつながりを作っていくことが自分自身の可能性を広げていくことになると教えてくれています。
しかし私たちはアルジュナのように目の前にいざ自分の苦手なことや、やったことないような不安なことなどが目の前に差し出されるとそれを避けようとしてしまいがちです。
歳を重ね、大人になると過去の自分の経験や様々な情報、そして噂などから「これは楽だ」「これは大変だ」と自分の中で判断し、自分にとって不都合なことに対しては踏み出せないようになってしまいます。
けれどもクリシュナが言うように、一見どんな恐ろしくみえることでも、心を乱すことなく、恐怖心を払拭し、思い切って大胆に行動することで私たちは今まで知ることのなかった、ワクワクした、そして美しい世界を見ることができるはずなのです。
例えばいつも行っているお店、行きつけのレストランや美容室などは、勝手がわかっており、雰囲気も安心して過ごせるかと思いますが、時に思い切って行ったことのない別のお店に行ってみるとお料理が美味しかったり、サービスが最高だったりして自分の行きつけのお店がまたひとつ増え、自分の行動範囲が広がることもあるかと思います。
目の前の未知なるものに対する不安や恐怖心などを断ち切り、新たな経験を増やしていくことで私たちはさらに目の前の世界とつながり、人生の大きな可能性を広げていくことができるはずなのです。
私のお話になるのですが、最近旦那さんと一緒に静岡の下田に行ってきました。
その旅行は気温は高いのですが、天気は最高で夏をエンジョイするにはもってこいの日でした。2泊で行ってきたのですが、夏を楽しみたいと思い、下田のスキューバダイビングを予約しやってみることになったのです。
実は私は泳げないのですが、以前行っていたジムのプールで一回だけスキューバダイビングの体験レッスンをやったことがあり、その時はプールだったので今度は実際に海に潜ってみたいと思い今回やってみることにしたのです。
ライセンスを取るには時間が限られていたので、今回は体験ということで旦那さんと一緒にスキューバダイビングが行われる場所まで行ってきました。
そして最初はちょっとした講習があり、海に潜るときの注意やハンドシグナルといって水中でダイバーさんたちとコミュニケーションを取るための方法を学んだりしました。水圧に合わせて耳抜きをしたり体験なので詳しくは学ばないけれど大事な講習です。
そしてその後ダイバーさんと一緒にワゴンでビーチへ向かうのですが、車から見える海の色は真っ青、そして天気も最高に良く、波も穏やかだろうととのことでテンションが次第に上がって来ました。
またダイバーさんが言うには、子供からシニアまで誰でも行うことができるマリンスポーツらしく、挑戦してできなかったという人はその人の恐怖心からなかなか海に潜れないということなのです。
私は泳げない、とはいうもののプールでの体験もあり、海もきれい、天気も最高、そしてそんな恐怖心など全く感じることなく準備に取り掛かります。
ワクワクしながら隣の旦那さんをみると初めてのダイビングで若干顔がこわばっており、その顔をみるとクスっと笑ってしまい、私自身は泳げないくせに
「怖くないよ!大丈夫だからー」と変な励ましを送っていました。
そして酸素ボンベを背負って、足にフィンをつけ、ゴーグルに曇り止めを塗りたくり、浅瀬でまず水の中で呼吸に慣れるための練習をします。その呼吸も口呼吸を続けていればなんてことなく、むしろ早く潜りたいと気持ちが高鳴るばかり。
そしていよいよ2人1人組と1人のダイバーさん3人のチームで入ることになりました。最初にダイバーさん、私、旦那さんが入ります。
そして1メートルだったか、2メートルだったか潜ってきたところでなんだか鼻に違和感を感じ始め、ゴーグルの中に水が入ってきたのかと思い、そこからめちゃくちゃ怖くなり息が荒くなってきました。そしてその焦りでパニックになりダイバーさんにハンドシグナルを送らず勝手に上がってきてしまったのです。
上がってきたところでダイバーさんが「どうかしましたか?」と聞かれると「鼻に水が入ってきたかと思い」と言ったものの「入っていませんよー」と言われ確かにゴーグルには何も入っておらず、ただ単に自分でパニックになり呼吸が乱れているだけで安全に潜れていることは確かなようです。むしろハンドシグナルを送らず水面まで上がってきてしまう方が危険なようでした。
「大丈夫ですよ」とダイバーさんに言われ、また潜りつつ呼吸を整えようとするのですが、陸での呼吸、そして普段ヨガをしている時の呼吸とは全く異なり、口での呼吸は違和感しかなく、耳も詰まったような感じがして耳抜きをするのですが全然慣れず、喉は乾カラカラ、そしてそんな気持ちも持っていながらも、ダイバーさんは海の奥へ奥へと進んでいきます。
小さな魚たちが泳いでいてダイバーさんは「みてみて」と手でサインをおくってくれるのですが、まだ恐怖心が取れず平常心を保つのが精一杯で周りの海の景色を楽しめる余裕もなく、悪い方、悪い方ばかり考えるようになります。
最近見た世界仰天ニュースの水難事故やテレビニュースで報道されていた川での水難事故などがこのタイミングで思いだされゾッとし、「このまま呼吸を止めてしまったら絶対溺れ死んでしまう」と恐怖心でいっぱいになっていました。
そして恐怖心を完全に払拭することができずにあっという間に一回目のダイビングが終わってしまいました。
陸に上がって、潜るまではあんなにワクワクしていた気持ちと裏腹に余裕が持てなかった自分に気落ちし、ビクビクしてた旦那さんを鼻で笑っていた自分が恥ずかしくなってきたのです。一方旦那さんは「ダイビング楽しいねー」と既に慣れたような感じで二回目のダイビングに既にワクワクしておりなんだか悔しさも込み上げてきたのです。
そして少し休憩した後、もう一度海に潜り始めました。
今度こそ私も楽しみたい!と自分を奮い立たせ、ダイバーさんについて行きました。また鼻に違和感を感じ、水が入ってきているような感触があり、でもこれはさっきと同じで陸と海での呼吸は違うのだと自分に言い聞かせ、呼吸に意識しすぎることなくひたすら目の前の景色に集中することにしたのです。
そして周りを見渡し気づけば海の底にきており、真っ白な砂と、たくさんの魚の群れ、鮮やかな熱帯魚のような魚、ふわふわと揺れる海藻などがあり、そして上を見上げると太陽の光が水面から照らし出され青い天井がふわふわと揺れているのをみるとまるで自分が人魚になったかのような気持ちよさと至福感に包まれるような気持ちになったのです。
一つ一つの波が海の中に潜ると波ではなく一つのエネルギー一体でこの上ない自然の美しさを生まれた初めて見ることができたのです。
そしてゆらゆらと海の中を移動していると小さな小さなタツノオトシゴを発見したのです。
1センチもないような小さく細いタツノオトシゴは近づいて手を添えようとしても怖がることなく、気持ちよく海の中をふわふわ浮いているのです。
水族館で見ることはあってもこの小さな不思議な生命を間近で見ることができたのはとってもラッキーでした。
そしてそのタツノオトシゴだけでなく、海の生き物たちは私たちをそこまで怖がることなく自由に気持ちよく生活しているようでした。
そしてあっという間に時間が過ぎてゆき体験ダイバーが終了してしまったのです。
最初、自分の中にあった恐怖心でいっぱいになっていたけれどその恐れを拭うように、自ら海の世界を楽しもうとした時、目の前の世界が言葉通り開けていき、海を楽しむ余裕ができたのです。恐怖心の先には自分が見たことのない、景色が広がり、陸では出会うことのない生物にも会え、スキューバダイビングの素晴らしさを実感することのできた体験となりました。
私たちは時として、やったことないことややるべき課題の大きさに自分の中で恐怖心を抱いてしまい、進むことができずにまだ先にある世界の美しさを知らずに過ごしてしまうことがあります。
けれども一旦その恐れから離れ、心から喜びながら進んでいく時、私たちは自分が思った以上に世界は美しいという事に気づくことができるはずです。
まるで上空からダイブし大空を舞い、挑戦と冒険、自由を手にするスカイダイバーのように、私たちも自分の中にある恐れや不安を断ち切り思い切って人生の扉を開いていく事にしましょう!
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