聖なる牛のふん
SNSで見かけた牛のふんにキノコが!
という写真。っていうか、それマジックマッシュルームでしょ。違ったっけ??
日本では、このキノコを所持又は利用すれば立派に犯罪。けれど2002年以前は麻薬原料として規制されていなかったのも驚きの現実。
雨季の多い土地で育ちやすいらしく、南国では冬にこのキノコ目当てでロングステイしていた人も当時は多かった。
何の取り締まりもされていない、見た目はただの牛のふんに生えるキノコだったから、スルーされてても当然。東京では、渋谷や下北沢の路上でマジックマッシュルームと書いた看板出して堂々と販売する人や、完全にビジネスにしていた人達が90年代末のアンダーグラウンドにはけっこういたものだ。
そして規制後、キノコの露店はサーっと何処かに消えていった。
ふんに生えるキノコがマジックマッシュルームだなんて、どんな人が最初に発見したのだろう。やっぱり最初にたべたのは、牛を神聖な生き物とする、ヒンドゥーの人だろうか?
キノコは条件が揃えば勝手に生えるそう。実はこの「牛のふん」は有効利用の道が沢山有るらしい。
堆肥などの有機肥料を作ることは一般的によく知られるが、
ヒンドゥー教徒が多くを占めるインドでは、ふんと藁を混ぜ合わせて乾燥させたものを火おこしの燃料とし、古来から料理等の際に活用するのは当たり前らしい。
そしてこの燃料で火をおこす方法はインドを始め、遊牧民の多い中央アジアでも行なわれている。
また現代のインドでは大量のふんからメタンガスを放出してバイオマス発電をさせている。
なんとも上手く資源を循環させているインドの着目点が「牛のふん」というのが、日本ではなかなかあり得ない事ではないかと思った。
日本では堆肥としての利用は需要があるものの、ふん、というだけで希望を持たせて貰えなさそうだ。ふん、という存在自体で、既にのし上がれる資格が与えられないのだ。。
近年牛のふんの利用法は、調べてみたらまだまだ有る。
日本人の女性が牛のふんからバニラを作る研究で世界的に注目されている。ふんの中にバニラと同様の成分が有るそうだ。ふんからバニラを抽出するなんて、香とは不思議なものだと改めて思う。素敵な良い香りというものは、厳密に分解していくと、嫌な香りと紙一重なのでしょうか。。
もうひとつ驚いたのはイタリアトスカーナ地方で、この牛のふんとトスカーナの土を混ぜた技術がテラコッタに生まれ変わり、いい感じのポットやタイル、花瓶、マグカップやボール等の食器類まで制作されていた。
そしてなんとセンスの良い、牛のふんの博物館まで作っている。名前も面白い。そのまんまだけど、shit museum シットミュージアム!
しかも牛のふんがちゃんと素敵なガラスビンに入れられて、種類分けされたラベルを付けてディスプレイされている。雰囲気も素敵で、中世ヨーロッパの片田舎な感じ。
この様なアグリカルチャープロジェクトでは、7つの生産ユニットが農場でチーズ用の牛乳を搾るために特別に選ばれた牛を3500頭飼育されている。
その牛から毎日約5万リットルの牛乳を搾り、15万キロのふんが生産されるそうだ。そしてこの量の排泄物が未来的な生態学、生産的な文化的プロジェクトに、この土地で生まれ変わったという事だ。
農場では1時間あたり最大3MWの電力を排泄物から発電出来、もちろん農場のオフィスや建物などはこれらの循環型エネルギーで発電され、その上ふんから素敵なプロダクトまで生産してしまう。
シットプロダクト shit products ! として販売され、クリエイティビティーとエコロジー、イノベーションまでをふんが手掛けている。
ヒンドゥー教徒が信じる様に、
聖なる牛から排泄されるものは、ふんでもやっぱり神聖なのだ。