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『さよならのつづき』ネタバレありの感想文

世界一周旅行に出かける前、このドラマを一気見し、感想文を走り書きしてあったので、こちらをまずは投稿。


医療の役割には病を治す「治療」ともうひとつには寿命を延ばす「延命」がある。
命を延ばして本人や友人、家族とのしばしのお別れの時間を作ることだ。

①さえ子と雄介

2人の「お別れの時」はあまりにも突然すぎた。
プロポーズという2人の人生が交わった最高潮の瞬間に、突然の事故に巻き込まれて雄介は命を落とす。
それこそ何の覚悟もなく命を奪われた雄介(生田斗真)。

中町雄介(生田斗真)

生きている間はケセラセラと飄々と生きていた彼だから、自分が死んでしまった事実にも気づいていなかったのだろうか。
だから心臓に彼の魂が色濃く宿ってしまったのかもしれない。
   
恋人のさえ子(有村架純)は雄介の死を一旦は受け入れた。

菅原さえ子(有村架純)

それは雄介の心臓が誰かの中で生き続けていることが、レシピエント(臓器移植を受けた人)本人からのサンクスレターで知ったからではないか。
別の誰かの中で生き続ける雄介の心臓。
それは彼の器である肉体の死を意味し、そのことを受け入れることで、さえ子は新たに蘇った生命に希望を託したのだ。

②成瀬とミキ

このドラマで1番気の毒なのは成瀬の妻ミキ(中村ゆり)だと思う。

成瀬ミキ(中村ゆり)

生まれつき身体の弱かった成瀬(坂口健太郎)と結婚し、とうとう命尽きるかと言う時にも気丈に支え続け、心臓移植を待ち続けた。

成瀬和正(坂口健太郎)

運命的にドナーが見つかり移植は成功したが、成瀬の中に垣間見える別の人格に怯える。
それはただ単に気味が悪いということではなく、いつか成瀬の人生がドナーの人生に取って代わられるのではないかという、恐れだったのだろう。

彼女の予想は残念ながら少しずつ現実味を帯びてくる。

③さえ子と成瀬

臓器を提供する「ドナー」と移植を受ける「レシピエント」の個人情報が厳格に保護されているのは実に正しいことだ。
ドナーの家族に会ってはだめだな。この2人を見ていてつくづく思った。

お互いの存在がその後の人生の励みになることもあるかもしれないが、それはお互いの人生が交わらないことが必須条件だろう。
一旦知ってしまえば、平常心でいられる人間などいないと思う。
ましてやドナーの記憶や性格、趣味、嗜好の一部が移植を受けた者に移ってしまう「記憶転移」の現象がこうもはっきり目に見えて、明確に言葉の一言一句まで記憶に残っていることがあれば、それは少し恐ろしい。

突然引き裂かれた恋人の雄介が成瀬の中に生きていてくれたことで、しばしのお別れの時間が持てたことは、さえ子にとって神様からのサプライズプレゼントだったのだろうか。


④天寿を全うできなくても

結局は諸共に消えてしまった雄介と成瀬の命。

しかしながら心臓移植によって、
雄介は事故で突然命を落とすのではなく、
成瀬は気弱く命の炎を消し去るのではなく、
それぞれ最低限かもしれないが納得いく形できちんと人生を全うできた。
理不尽じゃない最後を迎えることができたことが、このドラマの美しさと救いなのではないだろうか。

(※画像はシネマトゥデイより)

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