ドラマ「推定有罪」
ドラマ「推定有罪」を観ました。
5話で構成されているとは思えない、想像以上に重厚な作りで
一話一話のメッセージが深く、一気に見るのは難しいほどでした。
原作のサイトより・以下転記
冤罪を生み出した男、冤罪から救い出す女、無実の罪で収監された男、無実の人間を逮捕した男。
12年前に起こった幼児殺害事件の犯人として服役していた男は、冤罪だった――。
筆禍を起こしたジャーナリスト、警察のずさんな捜査を非難する弁護人、無実の罪によって長い年月を失った男、その男を刑務所に送り込んでしまった刑事、殺された少女の姉、この冤罪事件ですべてを失った男の娘、そして、12年前の真実を知る男。
それぞれが傷を抱えながらも、その事実と真摯に向かい合う姿を描いた衝撃のヒューマンサスペンス。
転記終わり
* *
ここから私の感想ですが、ネタバレ、アリです
このドラマを見て、一番に思ったのは「真実を知った時から、その人の本当の人生は始まる」って事でした。
このドラマの中の軸には冤罪があるため、いろんな感情も渦巻きます
怒り、絶望、悲しみ、嘆き、憎しみ、自分に対しての呪い・・・
真実が明らかになるまで、その感情はずっと同じ状態で存在し続けます。
でも、真実が明らかになり、その真実を受け入れた人から自分を縛り付けていた苦しみから一歩踏み出している。
その真実が自分にとってどれだけ辛くても、
どれだけ不本意な内容でも
それに向き合う勇気が無くても
知った後に自分の内側で何が起こるか、と考えると怖くても
それでも人は真実に触れるからこそ、やっと自分の内側の整理が始まる。
その真実に対しての昇華の方法は人それぞれだけど、ちゃんと自分なりに向き合える、ということ。
その結果、自分の本心に気づき、そこから新しい人生を歩み出せるんだと思いました。
被害者の父親は娘の死後、引きこもり状態になってしまいます。
妻と娘以外と会う事もなく、激高するわけでも、悲嘆に暮れるのでもなく
ただ犯人をじっくり憎むことで生きている父親。
その父を支えながら、毎日を何とか生きている母親
その二人を見守り続ける姉。
事件の真相が明らかになるにつれて、娘と母親は「父にいつ真実を話すか」と考えます。
今の状況でもギリギリの精神状態の父が、真相を知ったらおかしくなってしまうんじゃないか、と心配したからでしょう。
しかし、父親は真相が書かれた雑誌を目にすることから、現実に向き合い始めます。
真実の全てが明らかになり、その真実を受け止めた父親は前向きに生きはじめ
母親は長年、内に秘めていた感情や思いが爆発する。
姉もやるべきことに気づいて一歩をみ出す。
それまで何年経とうとも「あの時のまま」だったのに、あの時が過去になりつつある。
真実によって、やっと娘の死を受け入れられた、とも言えるかもしれません。
どれだけこれが真実だ、これが事実だ!と誰かが言っても
本当の真実が明らかになると、人は否応なしに動き出し
何かは終わるし、何かは始まるんだな、と。
冤罪の被害者とその家族、被害者とその家族
真犯人とその家族
冤罪に関わった様々な人達
全員が全員、とても苦しんでいたこともよく分かりました。
ネタバレになりますが、真犯人ですら「自分が裁かれない」こと
「真実を葬られたこと」に苦しんでいたのが意外でした。
最後に冤罪事件のキッカケとなった記事を書いた加山が、書いた記事の一部です。
↓
12年前、私は篠塚さんを犯人だと信じて疑わなかった。
徹底的に取材をし、自信を持って記事を書いた。
しかし、その取材は果たして徹底したものだったのか
今振り返ってみると、徹底したつもりだったとしか言いようがない
その思い込みと過剰な自信、そして中途半端な正義感こそが誤報の原因であり、また冤罪を引き起こす原因でもある。
事件の真相は明らかになった
しかし、篠塚さんの失われた12年間は返ってくることはない
冤罪事件に終わりはないのだ。
それは被害者遺族にとっても同様である。
心の傷は消して癒されることは無い。
* * * *
この言葉を聞いて、どんな場面でも、どんな立場であっても
自分の思い込みと過剰な自信が気付くべき真実から目を背けさせ
その結果、自分だけではなく関係者の人生の全てを狂わすんだな、と思いました。
また、自分の間違いを認めた人の強さですね。
プロのジャーナリストの加川が自分の間違いを認め
検証記事を書くために奔走する。
そして、検証記事を書くために奔走した結果、真実にたどり着く。
そして彼の検証記事を書くまでの過程の中でも、癒される人が出てくる。
間違いを認め、真実に向き合う事。
その過程はとんでもなく苦しいけれど、深い癒しもそこにありますね。
自分は間違っていた、そこを認めることが自分への許しの第一歩なのかもしれません。
冤罪という出来事が、登場人物一人一人の視点で描かれていて
その全てが重なり合い一つのドラマとして成立しています。
とても見ごたえがあるドラマでした。
ぜひ時間を取ってじっくり見られることをおすすめします。
* *
「前科者」も見ています。
この「推定有罪」とは真逆な立場のドラマです。
出所してから更生しようとする人、その人を支えようとする人を見ていると
どんな過去があろうとも人は更生できる、と思いたい自分がいます。
でも、「推定有罪」を見ると、被害者遺族にとって加害者の更生を受け入れることは難しいことなんだろう、と思ったりします。
そして、どちらのドラマを見ていてもやはり思うのが「結果には原因がある」ということ。
犯罪をするのも、犯罪に関係するのも、彼らを利用しようとするのも、寄り添おうとするのも、何かしら原因がある。
個人的には、犯罪をなくすには啓蒙活動ではなく
一人一人が「魂からの幸せ」を感じられたら、犯罪は無くなると思っています。
自分の魂が幸せを感じる生き方を選択するのは、このような悲しい冤罪や更生に苦しむ人を減らすうえでも、重要なことなのだと思います。
簡単な話ではありませんが。
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