本物の治療家が向き合う必要があるエゴ
治療家がクライアントのエゴと向き合うことの重要性は、これらの記事でお伝えしましたが
シカゴ・メッドのシーズン3、9話の中に良い例があったのでシェアします。
以下ネタバレありです。
駆け出し精神科医のリースと、彼女の指導医であるベテラン精神科医のチャールズ
以前、チャールズが精神疾患の疑いのある患者に撃たれたことがキッカケで、リースは患者に対して恐怖を感じるようになました。
セキュリティーが不十分ゆえに病院で勤務する事は安全ではない。
自分で自分の身を守らねば、と考えるようになり
精神科医として患者に向き合う事にすら恐怖を感じるようになります。
チャールズは自分から患者に壁を作ったら、相手はもっと頑なになる、という考えがあるため
チャールズの考え、リースの思いがかみ合わずギクシャクするように。
リースは自分の中にある恐怖の存在を認め、その恐怖に意図的に向き合うために
チャールズの男性の刑務所での囚人の診察に同行することを決めます。
刑務所でリースが担当した最初の患者はラミレスという大柄で全身タトゥーでいっぱいの、見た目から「怖そう」な人物でした。
そしてラミレスは吠えながらリースを強く威嚇するのでした。
リースはそんなラミレスの態度に怯んでしまい、チャールズはいったん休憩をはさむことに決めました。
そのあとのリースとチャールズのやり取りです。
リース 私にはああいう患者を扱う資格はありません。
彼を助けるのは無理
自分自身さえ
チャールズ まったく皮肉だ
あの男のほうがずっと君を怖がってる
リ 信じません
チャ ああいう奴が精神科医を歓迎するわけがない
精神科医に何か暴かれて それと向き合うのが怖くて、刑務所方式で(君を)迎えたんだ
リ どういう意味です?
チャ 囚人は相手を威嚇して優位に立つことで生き残る。あの世界で。
リ 上手く操られた
チャ 連中は相手の弱点を見つけるプロだ
ラミレスは君の弱点に付け込んだ
リ 私の反応は彼が思うツボだった
(刑務所に)戻ります。
戻ったリースは、ラミレスの診察を再開します。
ラミレスは相変わらずリースをジッと睨みつけては吠える事で威嚇します
そんな様子に動じることなく質問を続けるリースに、ラミレスは次第におとなしくなり
回りの様子をジッと確認した後に
「時々ムカムカして吐きたくなる」と抱えている不調を言葉にします。
ドラマの内容・終了
* *
チャールズとのやり取りの後、リースは何かを決めたように「戻ります」とチャールズに伝えます。
彼女の中でラミレスの威嚇に屈することは、ラミレスのためにならないこと
彼にとって敵わない相手として存在することが、彼にとって大切なこと
そして、彼は怖くて仕方ないから彼女を威嚇していること十分を理解した。
彼の威嚇の理由と原因が分かったので、彼女は怖くなくなった。
だから、リースは相変わらず自分に対して威嚇するラミレスに、毅然とした態度を取ることが出来たのです。
彼が恐怖を軸に彼女に立ち向かっても、リースにとっては無意味であることを示し
ラミレスを恐怖で行動させるのではなく、ラミレスとして行動させるようにした。
その結果、ラミレス本人の言葉をリースは引き出したのです。
* *
これがまさに治療家が向き合うべきクライアントのエゴです。
そしてエゴは自分を守るために、徹底的に相手を制圧しようとします。
特に自分(エゴ)の正体を知っていて、その奥に誰にも見られたくない「自分」の存在にまで気付いている相手に対しては
徹底的に相手に攻撃的になり、相手を制圧しようとします。
ここで治療家が出来ることは、そのエゴに対して負けないこと。
絶対に屈しないこと。
そのエゴの奥で震えてなんていない、このエゴの壁を打ち破り、自分らしく生きたいと願っているその人自身の手を掴み続けるだけ。
この時、治療家は特別な言葉をクライアントにかける必要はありません。
ただ、クライアントのエゴを理解し、その奥にいる「本当のその人」の手を掴み続ければOKです。
* *
余談ですが
エゴが強い人の特徴として「話を盛る」傾向があります。
嘘をつくのではなく「盛る」のです。
ラミレスの態度も、それの延長のようなものです。
エゴが強い人は、周囲が見ているとけっこう分かりやすいです。
でも、このように普段の態度に現れている状態は
エゴが爆発寸前なので、自分の弱さ、偽りたかった自分を認め
エゴで隠した感情にしっかり向き合う事が大切ですね。