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ハレとケ


昨日大阪のイベントに出店していたのが夢のようでフワフワしている。確かに朝から在来線と新幹線と地下鉄を乗り継いで現地まで行ったし設営してその後お客さんが目の前をゾロゾロと歩いていたし何冊か買ってもらえたから現実だったんだろうけど、あまりにも普段の生活とは切り離されている空間のような気がしている。昨年は客として行った。その時から来年は出店してみたいと思って一年を過ごしてきた。出す側として見る景色は客として見る景色とはかけ離れていた。そこが夢のように思えるところだと思う。その景色を見られてよかった。本も何冊か買ってもらえたしポストカードと栞も買ってもらえた。ポストカードと栞はオマケにしている出品者も多い中で、お金を払ってもらえたのはありがたいし嬉しい。

日常に戻ると疲れがどっとでるところもあれが夢のように思える理由なのかもしれない。ぼくみたいなレベルでは売れる売れないよりは、イベントそのものを楽しむという側面が強いのだと思う。もっとたくさん買ってもらえたら本当はもっと嬉しかったと思うが、昨年の今決めた目標はとりあえず実行した。

新大阪でキャリーケースのキャスターが一つ壊れて、そのために腕に伝わる振動がひどくて、今両腕が筋肉痛である。

夢で筋肉痛にはならないだろう。

日常に戻ると、空は広いしアサガオも咲いて、萎む。そんな日常が愛おしい。そんな日常の積み重ねの向こうに非日常がある。

昨日、中盤の時間帯に、一直線でぼくのブースに来て、これください!と新作のZINEを指した女性がいた。

ありがとうございます!と椅子から立ち上がったけれど、あまりに唐突だったので、見本誌を見られました?と聞いてみた。本会場とは別に見本だけを並べた部屋があって、そこを利用して買う本を決める人も多い。

そうです、とその方はいいながら、ブースに置いてあるサンプルを手に取り、目次を開いて、『抗不安薬』というタイトルを指した。

私も抗不安薬を服用していて、だからすごく良くて、と教えてくれた。今もこの会場人がたくさんいてドキドキしています、と笑顔。

わかります、ぼくもこんなに人が行き交うのを見ていてドキドキしています。

それでも彼女がこのイベントに来てくれたのは、やはり本が好きなのだからだろう。本に救われたこともあるのかもしれない。

その女性が、ぼくの本を最後まで通して読んでどういう感想を持ってくれるかは分からない。それでも一時、その会話ができたことがぼく自身嬉しい。彼女の日常は、ぼくと一緒で、抗不安薬と過ごすことなのだ。

会場には他にもバッグにヘルプマークを提げている人を何人か見かけた。外見だけでは分からない生き辛さ、パニック障害とかを持っているのかもしれない。日常は人それぞれ異なる。その日常がほんのいっとき交差する。

本を通してそれを経験できたこと、ありがとうございました。

次はどんな本を作ろうか。


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