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グレイッシュカラー
もう雨季に入っている。
雲の多い日が続く。
湿度も高くて、もうぐったりした気分になってきて、今からこれじゃあ夏を乗りきれるのか、自分のことながら心許ない。
気分転換に電車に乗って街まで出掛け、大きな駅ビルの2階にある店で封筒と文庫本を2冊買って、1階にあるコーヒーチェーンの隅で早速読む。
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雨そのものはきらいじゃない。晴れた方が気持ちはいいけれど、雨や曇りの日だって楽しみはある。
アジサイはきれいだし緑の葉も艶やかだ。
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雨が降りそうな空一面のグレーの雲だって、よく見れば階調が複雑に組み合わさる。
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夕暮れどきなど、その雲が薄くなったところに、太陽の光の加減なのか、ほのかにグレイッシュなピンク色やオレンジ色が覗いていたりすると、それを見つけては得をした気分になる。
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そうでない時も、分厚い雲から青空が透けて見えているのとは異なる、やはりグレイッシュなブルーが見えたりすることもある。
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気のせいなのかなと自分を疑ってみたり、あまりに蒸し暑い日が続くせいで気分が塞いで、脳が勝手に変換して、ぼくにそう見せているだけなのかもしれない。
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でも自分で思うだけならタダだ。迷惑もかけないし。
タダで楽しめるのなら得な能力だ。
でもやっぱり気持ちよく晴れた空が恋しくなったりもする。
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