16回目 税務調査の在り方について 14 

「税務調査の在り方 7 納税者はどうあるべきか」
 
 正直に税金を納めている人がいるのは間違いない。だが、命の次に大事な金に係わる税金である。納める税金は、できるだけ少ない方がいいというのが人情なのだろうか。
 家族連れがレストランの会計の際に、レシートが発行されるにもかかわらず領収証を求める場面に何度も出くわした。家計簿などに記録するためであれば、レシートで足りる。これは、必要経費に落とすためではないか。レシートだとオーダーの内容で家族の食事が疑われてしまうので、領収証を求めるのである。このような生活費はもとより、設備投資等の事業資金、借金の返済、子供の教育費、遊興費等々の出費があるからという理由で、安易に過少申告する納税者がいるのだ。
 納税者であるあなたは、どの様な税務申告をしようとしているのだろうか。税理士には、何を期待しているのだろうか。できる限りの制度を利用して節税したいと多くの納税者は考えていることだろう。これは問題ない。脱税は極端だと思うが、皆がやっているのだから私も少しくらいはいいだろうと考えている納税者もいる。税理士には、小さなことには目を瞑ってもらい、税務調査の際には味方になってもらい、できる限り税金(追徴税)を少なくしてもらいたいと考えている納税者も少なくない。そして一線を越えてしまうのだ。そうなってしまったら、子供や家族や社会に対してものが言えるのだろうか。
 納税者であれば、憲法にうたわれている「納税の義務」を負っていることを肝に銘じてもらいたい。それは、平等の負担であり、担税力に応じた負担である。権利の主張と義務の履行のバランスを取る必要があるのではないだろうか。
 申告納税制度の下、納税者は自ら納めるべき税金を計算し、申告し、納税しなければならない。そして、税金を完納して納税義務は完結するのである。
 税務調査は、国税通則法に規定されている質問検査権の行使であり、罰則から導かれる間接的な強制を伴う任意調査であることを認識してもらいたい。適法に行われている調査には、応じる義務(受忍義務)があるのである。
 故意に不正をして過少申告(脱漏)をした場合、査察調査の対象になる可能性があることも認識してもらいたい。査察調査によって、故意に脱漏した所得金額が一定の基準額以上になると、所得税法違反(脱税)で告発されることになる。不正申告の方法が悪質なものは、それに満たなくても告発される場合がある。脱税は論外なのである。『因果応報』このことを肝に銘じてもらいたい。
 この書を読んで心当たりのある人は、是非、自主的に修正申告を行ってもらいたい。もし、税務調査で過少申告の指摘を受けたら、潔く認めて修正申告を行ってもらいたい。義務をきちんと履行して、子供や家族や社会に対して堂々とものが言えるように。

<続く> 次回は、「8 税理士はどうあるべきか」になります。


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