私が原因不明のめまいに悩まされ続けた話(その12)

私は30歳の頃から原因不明の目まいに悩まされ続けている。この記事を書いている時点でもう8年が経過しているが、症状は治まるどころか悪化の一途を辿っている。そろそろ過去の記憶も曖昧になってきているので、このタイミングで備忘録も兼ねて、同じ悩みを抱えている方の一助になればと思い、記事にすることにした。

年下の悪夢

たまにプライベートで姉御と会ったりしたが、仕事復帰から半年少々、仕事もプライベートも、本当に何も無かった。言い方によっては平和。めまいの状況は言うと、進展なし。良く言えば安定していたとも言える。

仕事中も部屋で姉御と二人きりになると、仕事以外の話になる事があるのだが、ある日、一歩踏み込んだ話をしてきた。

姉御「そういえば、私の友達の知り合いに、彼氏が欲しいって言ってる子がいるんだけど、よかったら会ってみない?」

そ「どんな子ですか?」

姉御「自衛隊で働いてる子。そうちゃんより年下みたいよ」

そ「う~ん、年下か~」

あまり年下を一括りで言うのもおかしいが、これまでの事もあり、正直もう年下はこりごりだった。でも姉御のメンツもあるだろうしなぁ…

姉御「嫌ならいいけど」

そ「いや、会ってみます」

結局、何の刺激もない生活に飽き飽きしていた事もあり、会ってみる事にした。

姉御から、その子(仮に夏子とする)のLINEを教えてもらい、連絡を取った。平日の夜に食事に誘った。最初は、直接店の前で待ち合わせするよう言ってみたが、店が分からないという事なので、隣接するショッピングモールで待ち合わせすることにした。

そして当日、待ち合わせ時間の5分前に到着。すると程なくして着信があった。

夏子「もしもし、いまどこですか?」

そ「今約束した場所で待ってるよ」

夏子「今お店の前で待ってるんですけど」

おう、そう来たか。やっぱ年下はこんな感じなのか。約束を守れない人は嫌いだ。いや、店が分かったなら前もって言ってくれればいいのに。もうこの時点で私のテンションはガクッと下がった。

そ「分かった、すぐ行くから待っててね」

そのお店は隣の敷地にあるので、車に乗って移動するのも面倒なくらい近い。通話が終わってから3分も経たずに店の前に到着した。

店の前には、私とほぼ同じくらいの背丈の女性が立っていた。髪は茶色に染めていて、パーマもかけている。おしゃれで服屋の店員みたいな感じだ。とても自衛隊員には見えない。

とりあえず店に入る。予約はしていない。平日の夜に、こんな田舎の飲食店が人で埋まるはずがない。彼女は定食を頼み、私は海鮮丼を頼んだ。

夏子「小食ですね」

そ「そうかな?」

会話が続かない。もう続けようという気が私には無かった。とりあえず、当たり障りなく乗り切ろうという事だけを考えていた。

そ「ところで、夏子ちゃんって自衛隊っぽく見えないんだけど」

夏「そうですか?」

そ「髪とか染めてもいいの?」

夏「私、事務なのでそこまで厳しくないんですよ」

そ「へぇー、そうなの?」

ああ、なるほどね。そういう部署もある訳か。この子より自衛隊の内部事情の方に興味が湧いてきた。

夏「私郵便物の仕分けとかしてるんですけど、部署とかたくさんあって結構大変なんですよ」

そ「大変そうだね」

ほうほう。そういう役割がある訳ね。

夏「でも単純な仕事なので、つまらないんです」

そ「うんうん、分かる」

そうだよね。単純作業って飽きちゃうよね。

しばらく彼女の仕事の愚痴話が続いて、私は聞き役に徹していた。もう自分から喋ろうとは思わなかった。

料理遅いな… もう10分経ってるぞ。他に2,3組くらいしか客いないのに。もうそろそろ来てもおかしくないはずだが。会話が終わってしまったので、私から切り出す。

そ「ところで夏子ちゃんは、どこの出身?」

夏「私、秋田出身です」

そ「へぇー、秋田から。遠くからはるばるようこそ。じゃあ、自衛隊受けていきなりここに配属になったの?」

夏「はい。元々自衛隊に入るつもりは無かったんですけど、通ってた専門学校に斡旋があって、軽い気持ちで入っちゃったらこんな所にw」

そ「秋田と比べて、この辺どう?」

夏「秋田と比べると、素朴な感じがしますね」

秋田よりも素朴かよ。てっきり同じくらいかと思ってた。そんなに田舎なのかこの辺は。

そ「故郷に帰りたいとは思わない?」

夏「それは無いですw 色んな場所に行ってみたいです」

そ「それなら自衛隊は好都合かもしれんねw」

・・・

しばしの沈黙が流れる。もう話題が浮かばない。すると、彼女の方から口を開いた。

夏「わたしぃ~、実は誰とでも楽しく喋れるっていう特技があってぇ~」

おいおい、いきなり喋り方が変わったぞ。大丈夫か?っていうか遠回しに、俺との会話がつまらないって言ってるのか?

夏「なんで、色んな人とお話したいんですよぉ~」

胸のあたりまで伸びている自分の髪をいじりながら喋る。もう、つまらないアピール全開である。

・・・

終わっちゃったw え、喋るんじゃなかったの?w

ここでようやく料理が到着。長い戦いだった。同時に二人の料理が運ばれてきたが、明らかに私の方が少ない。料理を持って来た店員が、間違えて反対に置こうとしてたくらいだ。

夏「それで足りますか?」

そ「定食にすればよかった…」

料理を食べ始める。普段より遅い時間なのでお腹が減っていた。目の前の海鮮丼は、あっという間に無くなってしまった。彼女はまだ半分を食べ終えた位だ。食べている最中にこちらから喋りかける訳にもいかず、彼女が食べ終えるのを、ただひたすら目でプレッシャーを掛けながら待っていた。

そ「食べたね~」

夏「食べましたね~」

そ「デザートとかいら…」

夏「すいません。そろそろ門限なので帰らないと」

そ「あっ、宿舎に住んでるの?」

夏「はい、門限だけは厳しくて」

そ「そうなんだ。じゃあ出ようか」

そういって席を立ち、伝票を会計に持っていく。

店員「お支払いは別々でよろしいですか?」

そ「えっ、あ、はい」

(゚Д゚)ハァ? おい店員!聞き方が違うだろ!(゚Д゚#)ゴルァ!!

一緒でって言えなかったじゃねえか!!

店員が雰囲気を察したのかな。彼女は困惑した表情をしていた。

その後は門限も迫っていたのか、一言二言だけ交わし、解散した。当然、二度と連絡を取る事はなかった。

もう年下はいいや。そう思わせる決定的な日となった。

それでも、年下との付き合いはこれで終わる事はなかった。

ー 次回へつづく ー

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