私が原因不明のめまいに悩まされ続けた話(その11)
私は30歳の頃から原因不明の目まいに悩まされ続けている。この記事を書いている時点でもう8年が経過しているが、症状は治まるどころか悪化の一途を辿っている。そろそろ過去の記憶も曖昧になってきているので、このタイミングで備忘録も兼ねて、同じ悩みを抱えている方の一助になればと思い、記事にすることにした。
恐怖の棚卸
相変わらず薬を飲みながらも容体は安定。プライベートでも特にこれといった出来事が無く、単調な日々が続いた。
家に帰っても特にやる事が無く、会社に遅くまで残りがちになった。別にもっと早く帰れたのだけれど、当時は時間外手当が付く役職だったので、それをいい事に、やる事があればその日のうちに片付けるようにしていた。
ただし、月に一度だけどうしても遅くまで残られければならない日があった。月末の棚卸の日だ。
簡単に言うと、棚卸とは、実地在庫を取り、理論在庫の数を合わせる事を言う。
棚卸に関わった事の無い方にとっては、これだけ言っても、頭に”?”が並んでいる状態だと思うので、もう少し噛み砕いて説明する。
実地在庫とは、実際の商品や製品や原材料などの在庫の事を言う。私の勤務先では、毎月末、これらを全て数える。理論在庫とは、在庫表上の数字の事だ。これは、業務システムやPCのエクセルで作成されている事が多いと思う。本来であれば、この2つの在庫数が当然同じでなければならない。
その2つが本当に合っているか、確認しましょうというのが棚卸である。いや、合ってて当たり前でしょ?別に大した仕事じゃないよね?そう思われるかもしれない。だが、これが中々合わないのだ。
私も7年棚卸をしてきたが、一発で合ったのは10回も無い。これは、単に実地在庫の数え間違いであったり、在庫表管理のミスであったりする。どこに間違いがあるか探し出し、数を合わす。これが終わるまで絶対に帰れない。
棚卸の日は、帰るのが大体21時とか22時くらいだった。ところが、棚卸というのは、その日の製造が終わらないと、実地在庫が数えられない。製造が遅くまであると、当然棚卸に取り掛かるのが遅くなり、結果、帰るのが遅くなる。一番遅い時には、日付を跨いだ時もあった。
会社で夜食
もう棚卸の日は遅くなることが分かっているので、あらかじめ夜食を用意していった。大体パンを買って持って行っていた。大体19時位を目安に、キリが良い所で食べ始めるのだが、いつぞや姉御も残っていて、声を掛けてきた。
姉御「晩御飯それだけ?」
そ「はい」
姉御「えー、それじゃお腹減るよ?」
そ「でも、弁当とか食べてる時間が惜しいし、これくらいが丁度いいです」
姉御「えー、じゃあ次何か作ってくるわ」
何でそうなる。いや、ありがたいけど。実は姉御、料理が上手い。これまでも何度か、自家製スイーツを会社に持って来てみんなに振舞っていた。マジで店出せるレベル。
そして、翌月の棚卸の日、本当に料理を作ってきてくれた。カレーライスだった。もう皿に盛った状態で持って来てあったので、食べる時にレンジでチンして食べた。おいしかった。皿は水に着けておいておいてくれたら明日洗うよと言われていたが、もちろん洗っておいた。まあ、翌日怒られたが。
その後も、毎回ではないが、たまに料理を作ってきてくれた。姉御だけではないが、こうした周囲の助けがあったからこそ、この時期を乗り越えてこれたのだと思う。そして私も、後任者に引継ぎした時は、夜食にパンやおにぎりを差し入れした。人にされた事は、同じ事を人にしたいと思う。
いい人いないの?
そんな面倒見の良い姉御とは、プライベートでの付き合いも徐々に増えていった。
今までは、2人の高校生の息子はサッカーをしていて、週末になると遠征だの試合だので、自分の時間が殆ど無かったらしい。初めの頃は、息子のサッカー関係で、パソコンで管理作業や資料作成などがあったらしく、パソコン関係でトラブルが発生すると、その対応で家にお邪魔したりしていた。
ところが、上の子が卒業し、下の子が卒業すると、週末自分の時間ができるようになった。この頃から、あそこにランチを食べに行きたいとか、友達と飲み会をするとかいった話題が増えてきた。
姉御「ねえ、この前話してたあの店、今度一緒に行かない?」
そ「えっ、なんで俺なんすか?」
姉御「息子は付き合ってくれないし、友達も中々都合が合わなくて」
そ「2人でいる所見られたら、変な噂が立ちませんかね」
姉御「立つわけないでしょw」
まあ、私も休日暇だし、断る理由も無かったからランチを食べに行った。当日は車で姉御を拾った。この日行ったのは、山の麓にある地元の特産物とかの直売所だった。そこの施設の中に、今回行った飲食店が入っていた。そこの店は、地元の和牛を使った料理が名物らしい。焼肉定食とかそんな感じな物を食べたと思う。
姉御「おいしい。やっぱいい肉使ってるって感じ」
そ「こんな肉普段食べれないよね」
みたいな他愛もない話をしていたが、話はやがて恋愛話になっていく。
姉御「ところで、そうちゃん(下の名前でこういう感じで呼ばれている)って、最後別れてどの位経つんだっけ?」
そ「半年くらい経つかな」
姉御「ふ~ん、今はいい人いないの?」
そ「いないね~。もう合コンも行ってないし。やっぱり性に合わん」
姉御「もったいないな~。仕事ばっかじゃ楽しみも無いでしょ?」
そ「まあねw」
この日はそこで話が終わった。特にそれ以上広がらなかった。料理も食べ終わり、席を立つ。
姉御「今日は私が払うわ」
そ「いや!俺が払う!」
姉御「いいよ、誘ったの私だし、車も出してもらってるし」
そう言うと、サッと伝票を持って会計まで行ってしまった。今日はお言葉に甘えよう。
そ「ごちそうさまでした」
姉御「いいえ」
ランチが終わると、直売所の中を回ってみた。品物を見る姉御の目が、主婦の目になる。でも、特に何も買わなかった。直売所の中にアイスクリーム売り場があった。
姉御「あ、そうちゃんアイス食べたい。買って~」
そ「はいはい、じゃあ今度は俺が払うわ」
ソフトクリームを2つ買って、ベンチに腰掛けて食べた。ふと、他人から見たら、私たちはどういう関係に見えるのだろう?って思った。私は実年齢より若く見られるが、流石に親子には見えないし、だからといって夫婦やカップルにも見えない。そう考えると、一回りって絶妙な年齢差なんだな~って思った。
姉御「じゃあそろそろ帰る?」
そ「おう」
アイスを食べ終えて、そのまま車に乗り、姉御を家まで送り届けた。今日は… 何だったんだろう。デート?半分正解で、半分違う。途中、仕事の時と違う私を、何だか品定めでもされているような感覚を覚えた。
ー 次回へつづく ー
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