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ソニー・ロリンズ『橋』

ソニー・ロリンズの アルバム『橋』は前作『コンテンポラリー・リーダーズ』に引き続きバンドにギターを加え全曲レコーディングした第2弾作品です。またピアノレスの取り組みが続いている1枚だったりします。

メンバーは
ソニー・ロリンズ(テナー・サックス)
ジム・ホール(ギター)
ボブ・クランショウ(ベース)
ベン・ライリーとH・T・ソーンダース(ドラム)です。ピアノはいません。

🔵ところで

モダンジャズの良いところはいろいろあります。いま聞くと古色蒼然とする歌謡曲や流行歌の曲の命を救い出し、これからも活かし続ける。これは結果として名演の条件だったりもしますが、モダンジャズの魅力です。

ビル・エヴァンスの「マイ・フィーリッシュ・ハート」の冒頭のピアノと続くドラムには、目的の無い予感の趣きを感じます。

原曲を聞きたいと思い聞き比べると、趣きがスパッとなくなって拍子抜けすることがあります。もちろん好みです。もうひとつが時代の音があり古さを感じます。これも個人的なことです。

🔵話しもどってアルバム『橋』

収録曲「ウィズアウト・ア・ソング」、「ホエア・アー・ユー」、「ユー・ドゥ・サムシング・トゥ・ミー」のスタンダード曲の演奏を聴くと、ロリンズによるモダンジャズ化の魅力を感じます。

「ウィズアウト・ア・ソング」

収録曲で異色なのはビリー・ホリディが愛唱した「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」です。ソニー・ロリンズ流に解釈された演奏は憂鬱が込められ、ジム・ホールが増幅します。
アルバムの収録順序で聞き進めると、いままでのロリンズの姿とはすこし違うという印象を確信させる一曲でもあります。

「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」25:26あたり

🔵ロリンズの変化?

ロリンズのオリジナルは「ジョンS」(12:40あたり)と「橋」(20:26あたり)の2曲収録されています。

音楽はロリンズの吹くメロディがつぎつぎにつながりあいます。ホールのギターはバッキングを支えるか、ロリンズがひと息入れて休むあいだに、合いの手のメロディを弾きます。
ホールのギターの音色はモゴモゴし、歯切れの良いオルガンのようにも聞こえます。そのためホールのギターはロリンズのテナーにフタをしたりリードをしません。

🔵フタをする、リードする?

ソニー・ロリンズのアルバム『ソニー・ロリンズNo.2』にはホレス・シルヴァー(ピアノ)、セロニアス・モンク(ピアノ)が参加しています。
この素晴らしい名盤の演奏世界では、シルヴァーはスウィンギーに前へ前へとピアノを弾きます。モンクはロリンズのメロディの周りを漂うではなく、かいくぐるようにモンクのサウンドを弾きます。

ホレス・シルヴァーが伴奏するプア・バタフライ


セロニアス・モンクが伴奏するリフレクションズ

そのためピアノの音が、ロリンズのテナー・サックスの演奏を引っ張るような、周りを取り囲みフタをしているかのように聞こえます。
けれどもアルバム『橋』は『ソニー・ロリンズNo.2』のようにサウンドは響きません。ピアノレスの取り組みが続いています。

🔵ロリンズのテナーが良く聞こえる
ピアノではなくギターのバッキング。ホールの伴奏はロリンズの音色をきわ出せます。
はっきり聞こえるロリンズのテナー・サックスは、堂々たる音色の流れではなく、翳りを感じます。豪快というよりも憂い。

本アルバムは第2回目の引退その後の復帰作第1弾です。であれば音色は復活のファンファーレを期待するところですが、どことなく何かはわからない悲しさを含んでいます。

ロリンズ流のモダンジャズのエッセンスがつまった、ギターを入れた編成の第2弾のアルバム、あたらしいロリンズの音色が聞けるのが『橋』です。


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