海外RTAイベントにおける『司会』、そしてなぜ日本に『司会』はいないのか
こちらは「RTA Advent Calendar 2024」の10日目用に執筆した記事です。
はじめまして、アメリカ在住アメリカ人のさわよしと申します。
なぜこんな序盤でこれを言ったかといいますと、今回の記事は海外圏のRTAイベントに関するトピックを扱うからです。
それで、英語圏、日本語圏両方でイベントに携わった経験のある身として、海外圏のRTAについて独自の視点で解説しようと思いました。
さて、今回の話題はRTAイベントにおける『司会』の話です。
日本のRTAイベントしか見ていないかたには聞き慣れない役職かもしれないので、まずは軽く解説を入れてから本題に入ります。
そして、なぜ日本のRTAイベントに『司会』がいないのか、少しだけ推測してみます。
RTAイベントにおける『司会』とは
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画面左にいるQuacksilver氏がこの番組のHost、司会だ。
まず最初に、『司会』はどんなことをするのか?
自分も運営として参加しているIndiethonのHostの役職説明を見ていきましょう。簡単な翻訳も載せておきます。
Host - Be the face of the marathon! Introduce runners, read donations, and entertain viewers during downtime.
司会 - イベントの顔になろう!走者を紹介し、寄付を読み上げ、ランとランの間で視聴者を楽しませる。
イベントの顔となって盛り上げる役に見えますね。これだけ見ると日本のイベントにあってもおかしくなさそうな役職ですが…
大事なのは2つ目の項目ーー寄付の読み上げ。
英語圏のRTAイベントのほとんどは走者のためでなく、チャリティーファーストで企画されています。慈善団体の支援のためにRTAイベントを開いています。
ここで欠かせないのが寄付。この寄付がないと支援にならない!そしてそれを呼びかけるのが司会の役割、ということですね。
役割の小さな一部分に見えますが、じつはこれが司会の7割がたの仕事。司会がいるといないでは寄付の集まりは目に見えて変わるでしょう。
読み上げる内容も寄付コメント、寄付額投票の内容、プライズの紹介などと、寄付やチャリティーに関することが大半。チャリティー性が少し薄めの国内RTAイベントだとこの役職があったところで…と思ってしまいますね。
実際に応募してみた経験談
少し余談ですが、自分は来年1月開催のAmazing Games Done Quickに司会として応募していました。
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やっぱり作り込みが段違いだな…
その際のプロセスを少しだけ紹介します。細部は省きますが、司会が海外のRTAイベントからどれほど重要視されているのかがわかるかと思います。
オーディション制!?
まず、Games Done Quickは世界でも圧倒的最大規模のRTAイベントです。配信は毎回世界で何万人も観ていて、動画も5、6桁の再生数が当たり前。雇用スタッフだけでも少なくとも20人、ボランティアは余裕で300人超え。クオリティを追求していることがよくわかりますね。
もちろん、その追求は司会にも及びます。GDQの司会はただの抽選ではなく、そのために作られた審査委員会が採点する、完全オーディション制です。
クオリティ-を追求するとそうなるのはわかるのですが…それでもやはりびっくりしてしまいました。
実際のオーディション内容
オーディション内容もなかなか凝っていて、本番のイベントをうまく再現しているように見えました。しゃべるときのほとんどは休憩画面中なので、そこを重点的に審査している印象がありました。
次のランやその先のスケジュールの情報、寄付でラン内容を影響できるインセンティブの紹介、協賛の紹介、そしてドネーション班から流れてくる大量の寄付コメントの選択、読み上げ…次に何が来るかプロデューサーからのメッセージを読みながらこれらすべてをこなそうとすると、やはり相当疲れるものです。
本走中も油断禁物
休憩時間が終わって走者に任せられる!と思っていても、油断してはいけません。なぜなら、走者からの突然のフリに対応しないといけないからです。
いつでもしゃべれるように読み上げたい寄付コメントをメモしておいて、同時に走りを見て走者とやり取りが起こり得るところは一言入れる。
プロデューサーから「インセンティブをもっと押して!」などの要望もあり得るのでそれに対応する等々、本当に休む暇がありません。
とりあえずこんなところですかね。さすがに1回目でやるには難しく、自分は審査落ち。しょうがない。
では、日本において、この役職は必要なのか、そもそも現実的なのかを考えていきましょう。
なぜ日本に『司会』はいないのか
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司会のかたが走者インタビューを行っています。
なんとなく察しはついているかたが多いかと思いますが、司会の仕事は第一にチャリティーへの寄付を促すことです。
海外のRTAイベントにおいては、チャリティー活動=存在意義というところも多いので欠かせない役割です。
では、日本だとどうなのでしょうか?
自分の知っている範囲だと、表向きにチャリティーへの寄付を促しているイベントはRTA in Japanしか観測できていません。それでもGDQやほかの海外イベントほど強く押している印象はなく、準備時間の短さなどから走者ファーストの精神が見られます。
なら、寄付を促す司会はいなくてもいいという結論になりますね。実際のところ、日本のRTAイベントだとほとんど見かけません。
しかし、寄付を促さない司会もいてもいいのかもしれません。
冒頭で紹介したIndiethonの役職説明をもう一度読みましょう。
Host - Be the face of the marathon! Introduce runners, read donations, and entertain viewers during downtime.
司会 - イベントの顔になろう!走者を紹介し、寄付を読み上げ、ランとランの間で視聴者を楽しませる。
寄付の読み上げが業務の大部分なのは明瞭です。しかし、残された役割はまだいくつかあります。イベントの顔になり、走者を紹介し、ランとランの間で視聴者を楽しませる。
実際、この全てをひっくるめた『司会』は、日本のイベントで何度か見たことがあります。代表的なものだと「JAWS PLAYERS」、そして以前とろちゃん氏が個人開催されていた「俺の推しを見てくれRTA」も司会がいました。
どちらも直接寄付を題材にしたイベントではなく、司会は走者の紹介、イベントの紹介などを主業務としていました。
(海外のRTAイベントを日本語で再配信する「Japanese Restream」でも司会は見かけますが、こちらは海外イベントの日本語音声つき再配信なので、上記の司会からはまあまあ逸脱します。)
このような役割なら、国内イベントでも『司会』がいておかしくないのかもしれません。ただ、そのイベントのことを知っているかたがいなければ成立しない『司会』でもあります。
公募も人が集まるか不安、そもそも司会としてイベントに悪影響を与えないか不安…不安要素が勝ってしまうのもわからなくはないです。
ただ、もしかしたら、司会がいればイベントはさらに盛り上がるかもしれないですよ。
イベントの主催者は一度、RTAイベントの司会について考えてみてはいかがでしょうか?
※こちらは「RTA Advent Calendar 2024」の10日目用に執筆した記事です。
1日分丸々遅れてしまい申し訳ありませんでした…!