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大菩薩・土室川山口沢
2023年3月、待ちに待った沢シーズンが始まった。
今年1発目として選んだのは大菩薩にある土室川山口沢。もともと丹沢を予定していたが、3月の気温が高くヒルが出ることが予想されたため、土室川水系でまだ行ったことのない山口沢を選んだ(うちの塾長が書いた「新版 東京起点 沢登りルート100」で紹介されています)。ルート100で紹介された中では同じ土室川水系のシンケイタキ沢が人気を集め、多くの沢ヤが入るようになったが、この水系には他にも面白い沢がたくさんある。おすすめはテクニカルな滝が続くカリバ沢の右俣だ(ルート100には載ってない。2級くらい。)。話がそれたが、山口沢、記録では滝が多くナメが続く秀渓との評価が多く、とても楽しみだ。そしてルート100で遡行をやめた10m滝も、塾長からは「濡れるけど登れるよ」と言われているので、10m滝の登攀も裏テーマとして山行に臨んだ。
前泊は道の駅こすげ。翌朝は皆5:30に起床し、6:20にはこすげの駐車場を出発し、松姫峠に向かう。そして出発して10分。早速、山行中止のピンチが訪れる。
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通行止め・・・ゲートが締まっている。いや、山梨県や大月市の交通規制は調べたんですけど!A井さんが地元の人に話を聞いてみると、地域の人が管理しているらしく、いつ開けるかは地域の人が決めるらしい。小菅村に確認を取らなかった私のミスだ。転進も検討したが、議論の結果、小菅の湯から登山道で牛ノ寝通りへ向かうこととした。というわけで、小菅の湯に戻って沢支度を整え7:22出発。
登山道は作業用林道に沿ってつけられているので、斜度も緩くとても歩きやすい。9:15牛ノ寝通りの大ダワに到着、9:22山口尾根下降点に到着し、アイゼンを履く。当初の予定からは1時間遅れだがまずまずだ。
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山口尾根の下降は2年ぶりだが、落ち口がだいぶ崩れていたので、少し西寄りの樹林帯から林道へ降りる。相変わらず下流は大きく崩壊している。
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堰堤を右から巻くと、土室川特有のナメと小滝の連続する渓相が見えてきた。
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たま~にホールドの細かい滝があるが基本的には簡単な小滝が延々と連続する。みんな沢始めなので、まだフェルト底でヌメりを歩く感覚が戻っていない。一歩一歩、慎重に足を運ぶ。
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ちょっと残念だったのは、記録で見ていたよりも倒木が多いことだ。仕方ない、渓相は常に変化する。
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ワサビ田跡の規模がかなり大きい。かつてこんな山奥に人の営みがあったということに驚かされる。
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遅めのお昼ごはんを食べて、再び滝を登り続けると、例の丸太の架かる10m滝が見えてきた。遠目には大きく見えて「やめとこうかな・・」と少しヒヨるが、とりあえず近づいてオブザベしてみる。
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K井さんは左のラインが良さそうだと言う。たしかにホールドが多そうだ。ただ、上部をうまく処理するイメージが持てなかった。右はどうか・・・下から見ると、自分なりにラインが見えたのと、ランニングポイントがいくつかあったので、右から登ることにした。
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下部をぺたぺた登って、まず右の小さい丸太上部にテープを巻いてランニングを取る。それだけで心理的負担が一気に下がる。フットホールドもすべてヌメるので、重心をぶらさないようにつま先の置き方に緊張する。その上は大量の枯葉をどけて、足場を作りながら右上する。良さそうなホールドはどれもあっさり剥がれる。この沢は岩が脆くすぐに剥がれる。次は左の大きい丸太に向かい左上する。途中、クラックにカムを決めて2つ目のランニングを取る。ヌメり、剥がれが連続する中、細かいホールドを拾い、大きい丸太の上部に立つ。グラグラ動くブッシュにスリングをかけ3つ目のランニング、というよりただの"おまじない"をかける。上部は水流の中のホールドも拾いながら、慎重に足場を選び、落ち口を抜ける。緊張が解け、中年のくせに叫んでしまう。「ッシャーーー!!!」
ちなみに滝上はビレイ支点が取れないので肩絡みで後続を上げる。
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この滝、巻きは右岸だけどそっちもかなり悪いようなので、どうせロープを出すなら登った方が楽しいと思う。しょっぱいので自己責任ですが。
これを越えた先も小滝、ナメ滝が延々続く。10m直後に出てくる2mが地味に悪いけど、ロープを出すような難しい箇所はない。
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水が枯れてきて、詰めの様相となる。大量の落ち葉をラッセルしながら一歩一歩詰めあがる。久々の詰め、息が上がる。そして本流を忠実に詰め上がると最後は岩壁に囲まれる。A井さんが「あれも登る?」と言うが、この期に及んで登攀する元気など一切無かったので、素直に右岸の枝尾根に上がって息を切らしながら尾根を詰める。詰めの女王・K井さんがいつものように私を抜き去ってその背中がどんどん遠くなっていくが、疲れていてとても追いつけない。追いつく気すら起きない。
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15:06、牛ノ寝通り到着。ふ~~~、ハプニングもあったけど無事に良い時間に登山道まで来ることができて一安心。みんな、口から「つかれた~」以外の言葉が出てこない。往路と同じ登山道を使って下山、16:36小菅の湯に到着。お風呂に入った後は、最近お気に入りの中華屋さん・青梅「渓竜」で炒飯と餃子を食べる。まんぞく、まんぞく。
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狙っていた10m丸太滝の登攀もでき、山口沢遡行は非常に充実した山行となった。また、ヌメりも剥がれもある沢だったので、沢登りの感覚を取り戻すのにも良い沢だった。
今年最初の沢が友の会の自主山行だったが、連携もだいぶ成熟してきた(気がする・・・気だけ・・)。今年も友の会の皆で只見、会越、毛猛、和賀・・・と多くの山行をこなして、沢ヤとして地道に成長していきたい。
拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
山行実施日:2023年3月21日(火)くもり
メンバー:S木(L、記)、A井、K井、W辺
山域:大菩薩連嶺
山行形態:沢登り
コースタイム:
道の駅こすげ(7:22)-牛ノ寝通り・大ダワ(9:15)-山口尾根下降点(9:22)-林道(10:47)-入渓点(10:59)-Co1070昼食(12:47-13:12)-10m丸太滝(13:36-14:10)-牛ノ寝通り(15:06)-道の駅こすげ(16:36)