「NFTは規制される」を言いたくなる胡散臭さとそうではない未来
規制に関する思い出話
10年前の事件なのですが、ソシャゲのアイテム課金(ガチャ)に規制が入るというまことしやかな話がバズったことがありました。
結局、この流れでは何か規制が入ったことは無かったわけです。パッケージ販売が主流だったメーカー側からのポジショントークであった、ということで本件は落ち着きました。
けれど当時の流行は、モバマス、ドラコレ、怪盗ロワイヤル。覚えてますか? そしてドリランドでDUPEされたカードデータが「ヤフオク!」に溢れます。
「それはただの絵だ」だが、5万円。
価格高騰の理由を求め我々探検隊はアマゾンの奥地に旅立っ……たら、コンプガチャが見つかり無事読売新聞にスッパ抜かれて消費者庁が問題を確認。
JASGAという即席ソーシャルゲーム業界団体が設置されるも、啓蒙ゲーム「じゃすがんの冒険」と、啓蒙するには怖すぎるホラーっぽくてチュートリアルが全部ムービーで出来ててめちゃめちゃストレージ容量を食うノベルゲーム(タイトル忘れた)をリリースした以外は、さして目立った社会貢献は無く、結局「儲かってる会社は文句を言われながらも何もコストをかけないことが最適解になるんだな! ガイドライン作ってるこっちの身にもなれ!」と傍流から呪詛を吐いていたら、JASGAは歴史的役割を歴史的瞬速で終えてCESAに吸収された、という激動の時代でした。東京ゲームショウにクッソデカい船のオブジェとか浮かんでいた頃が懐かしいです。
さてブロックチェーン技術の登場から10年経って、時は2021年。ビットコイン→ICO→NFT……と「ブロックチェーン儲け話」が転々と来て今や百花繚乱といえる状況。
あからさまに儲けようとしている人が大嫌い。それは好悪の問題ですからそういう人がたくさんいても良いと思います。
ですがここ最近、NFT肯定派も批判派も印象派もキュビズムもポップアートもミニマルアートも、何が何だかわからないものを皆で指さして、カネを投げつけたりクソを投げつけたりしている状況となっております。尊皇派? 攘夷派?(インターネット古参につき申し訳ない)
かく言うぼくも2019年に『ブロックチェーン・ゲーム 平成最後のIT事件簿』という小説でデビューしてしまい、2週間くらいAmazonのジャンル別ランキングで1位に居座り続けていたのですが、2年半経った今読んでも面白いですねこれ。完全に今の状況を言い当てています。Kindle Unlimitedユーザーなら無料で読めますが、電子書籍版が丁度セール中ですね、どうぞ。
今、ブロックチェーン・ゲームで『Axie Infinity』っていうのが海外では流行ってるんですけれど、ベトナムの会社が作ってるんですね。で、さっきの小説、ゲームアイテムがブロックチェーン化されて取引されるようになり、VTuberが売り煽りしたのを真に受けて高値で掴まされたクソオタクが逆恨みしたりするシーンもあるんですが、作中のゲームもベトナム製なんすよね……。まあ、そんなの、業界動向とか追ってればどこの国からどんなゲームが出るかくらい予想できますが……。
胡散臭さとロックっぽさ
直近のNFTのニュースと言えば、よくわからないデジタルアートが何千万円だの、何億円だのと羽振りの良いものが目立ちます。ですが、毎日何億も飛び交っているわけではなさそうです。
何度も何度も過去の高額取引の話題を擦っていて、そろそろ擦り切れそうな感じもします。もう聞き飽きたよ。こんなに擦られててもジャック・ドーシー、未だに誰だか知らねぇよ。そういう御仁も多かろうと思います。
かたや「NFT体験記」も巷に溢れてきて、Axie InfinityだのCryptoPunkだの、手慰みに描いたドット絵が一攫千金だのというブログ記事を見かけるようになりました。
「それはただの絵だ(本日2回目)」だが、ン百万円。
こういうブログ記事たちは挙って暗号資産取引所の口座開設アフィリエイトリンク付きなので、みなさん夢見て口座開設しても良いんじゃないかと思います。夢を見るのはタダじゃねぇんだけどな!
さらには、熱を増していくこの風潮に冷や水を浴びせようと、次々と反骨精神の反論記事が立ち上がります。ロックですね、アートですね。
以前コンビニで、アイスコーヒーを淹れてもらうための氷の入ったカップを買った外国人が「♪レリゴ~、レリゴ~」とアニメ映画の著名ソングを歌いながら、持参したウィスキーを淹れてコーヒー淹れずに店を出て行ったのを見たことがあるのですが、あれこそロックですね。
ダブルミーニングじゃんって思ってたらあの映画アニメ、舞台が氷山じゃん! ちゃんと口ずさむ歌にまで文脈を載せてくるエンターテイナーっぷり、学びたいものです。
それくらいの勢いのある文章が、先週辺りからバン!バン!と公開されたていたので、まず刮目して読んでください。
どちらも「庶民は悪意をもってカネを吸い上げようとする仕組み・人物・企業から距離を置くべきだ」「アーティストは表現の道具となる技術を理解し、倫理に照らすべきだ」という話です。
まったく異論はありません。
Aさんの作品をBさんがン百万円で落札し、Bさんの裏アカの作品をAさんの裏アカがン百万円で落札したら、行って来いで、互いに損するのはGas代くらいなものです。
そして「何百万円でAのやつが売れた!」「今日もBのやつが売れた!」というバズだけがメディアを駆け巡り、何度も擦られる。結局ジャック・ドーシーってどこの誰なの?
わからないまま煽られた庶民が、「俺達は雰囲気でNFTをやっている」とばかりに、アフィリエイトリンク付きのブログ記事から暗号資産取引所の口座開設をし、なけなしの小遣いを突っ込んで、さすがに何百万円の作品は無理だからと、よくわからないCryptoPunkのドット絵を買う。
……もしそんな構図だったら目も当てられませんね。
ちょっと冷静になるために、オークションで何かが落札されたというニュースを目にしたとき、アートかどうかは関係なく、そもそも「オークション」という仕組みがなぜ人の心を惹くのか、というところを考えると良いと思います。
映画やドラマで見るような、あるいはバンクシー報道で絵がシュレッダーされたときの動画のような、ああいうのを思い浮かべたとき、すでに庶民にとってはあの光景がすでに「価値」に見えてしまい「価格も高くて当然のものなのだなぁ」と納得してしまうロジックでマジックでトリックです。まるっとお見通しだ!
でもおまえがヤフオクに不要品を出すときは0円スタートだよな。
そんなところをお見通しするな。
ということは、高額であることが話題になるオークションなんてそもそもフィールドが違うということですよね。ルールも物の見方も違う。生き方すら違う。お金は道具。
「それはただの絵だ(本日3回目)」だが、ン億円。
庶民には計り知れない世界があるということは、事実なのだからしょうがない。では、タダでは夢を見られないとして、どういう覗き方だったら火傷をしないのか、アンサーソングがアップされていました。
すばらしい返歌ですね。
ひとつの会社が管理するデータベースが破損したら利用者の努力や権利が水の泡になりやすいサービスと、会社等の組織に依存せずにデータが残り続ける可能性が高い技術では、それぞれ相性がいいジャンルがあるはずです。
引用元:上記ブログ
『ひとつの会社が管理するデータベースが破損したら利用者の努力や権利が水の泡になりやすいサービス』
若干オンラインゲームがDisられてなくなくない……!?
気を取り直して。本文ではきちんと「所有権ではない(日本国内法では有体物ではないものには所有という概念を用いない)」ことを説明しており、しかも「著作権」についての誤解も解こうとしています。一つ一つ元記事の感情的な部分を潰していく形で、むしろ批判されている側が冷静になっている良い例だと思います。
一点、ぼくはどちらの記事にも言いたいことがありまして、「~には手を出すな!」「~には手をだしてもいい」は、漫画・アニメ・実写ドラマ・映画で有名な『映像研には手を出すな!』をオマージュしているのだと思いますが、実写版に出演していた乃木坂46の面々のファンであるぼくからするともうちょっと寄せてほしくて『所有権には手を出すな!』とか「研」と「権」で踏めるような、そういう工夫が欲しい感じがしました。(もうNFT関係ないだろ、それ)
さらに、真打ち登場。(「しんうち」で前段の乃木坂の話題からちょっぴり繋げているとお考えください)
文面の端々から顔を真っ赤にして反論しているのだろうなというところが想像できる点でも、かなり研ぎ澄まされた様式美かなと思います。すなわちアートです。
この記事の中で、法整備について語られていますが、ここでタイトルに出てきた「規制」の登場です。
すでに規制され、アップデートされている業界
まず「こんだけ胡散臭ければ規制止むなしなのでは?」とお考えの方、その心の中から「自分から見て胡散臭いものは全て規制されてほしい」という内なる願望を捨て去ってください……ピュアな心でいられますか? ぼくはこの世知辛い社会で相当イノセントです。
法整備が望まれるのもわかりますが、考えてもみてください。日本の資金決済法が暗号資産(仮想通貨)に対応するのは世界的に見ても早かったのです。
技術の進歩を見越して改正もされており、金融庁によって許認可された暗号資産取引所でKYC(本人確認)が正しく行われ、反社会的存在がこれらを利用することはあり得ません。国民は正しい暗号資産取引所を通じなければ暗号資産から日本円への入出金はできず、かつ怪しい野良コインはどこで手に入れようが正しい取引所では換金できない。
日本円への入出金を適法に押さえてある盤石の安定感。まず国家としての務めは果たされていると感じます。その上で、まっとうな商売があるのかどうか。
先日NHKのクローズアップ現代で「投げ銭」が取り上げられた際、「オンラインゲーム業界は業界団体でガイドラインを作成し、未成年が高額支払をしないよう上限金額など定めて運用している。投げ銭業界もそれに倣っていくのがよいのではないか」というニュアンスのコメントがありました。正しくは下記からNHK+のアーカイブで見てください!
投げ銭業界というのがあるかどうかはわかりませんが、YouTubeのスパチャか? SHOWROOMか? 資金移動業か? 前払い式支払手段なら資金決済法に基づく供託金を預けたり銀行で保全契約結でるか? 歯磨いたか? 風呂入ったか? 頭洗ったか?
確かにそんなに企業数が思い浮かばないジャンルでは、やりたい放題というところもあるかと思います。ですが、有象無象のNFTサービスがプレスリリースされる毎日でありつつ、「業界団体」は加盟事業者が多くなればなるほど機能します。
おや、冒頭のオンラインゲーム思い出話の中にも「業界団体」「ガイドライン」の話が出てきましたね!? そうです。「自主規制」です。これも立派な「規制」です。みだりに思い出話をしていたわけじゃぁないッ! きちんと構成に気を配って掴みからここまで記載してきたのだと思っていただきたいッ!
そして、すでにあるんです。例えば下記。
罰のある法律を求めている人には「こんなの何の役に立つのか」という意見が出るかもしれませんが、ガイドラインというのは運用するところにポイントがあります。業界団体というのは「世間話をする寄り合い」ではないので……って書いて、冒頭のJASGAのこと思い出させちゃった。ゴメン。
業界団体が機能していても「加盟しないで抜け駆けする業者」というのはどの時代にもどんなジャンルにも存在します。ですので、今後ひとつの目安となるのは、NFTを販売したりオークション等の方式は別として流通させようという企業などが、こういった業界団体に参加しているかどうかというところかなと思います。
……業界団体いくつも作んなし! という悩みはある感じがしますが、とくにどの団体が良いとか悪いとかは無いので、信義誠実の原則に従って運用されていると思っていただいて大丈夫かと思います……って書いて、また冒頭のJASGAのこと思い出させちゃった。マジでゴメン。
怪しくないアートなNFTを教えてやる!
ところでさきほどの「~には手を出すな!」記事(←前半を略すな!)に出ていた「アートにはステートメントがある」という話。
ぼくが4月に公開した、日本初のNFT小説ですが、充分ステートメントがあるのでアートですよね?
https://opensea.io/collection/sawasion-japanese-nft-novels
よくわからない人のためにステートメントを書きますね。こういうのって芸術批評家とかが書いてくれるんじゃないの? 下記、自分で書いてて恥ずかしかったんだけど。
おれにだって羞恥心くらいは……ある!
文芸という時点ですでに堂々としたアートたるジャンル。
掌篇10本全てNFTやブロックチェーンへの思索から生まれ、題材としたもの。
この作品をNFTとしてリリースした人物は、デビュー小説『ブロックチェーン・ゲーム 平成最後のIT事件簿』が2年半経っても面白く読めちゃう近未来予知能力を持った作家。一歩間違っていたら、芥川賞『ニムロッド』と並んで何らかの賞を獲っていたに違いない。(間違ったのは主に人生のほう)
わかってますよと言わんばかりに「著作権は移転されません」「所有したという状態が得られる」というふわふわした説明書き。
「NFTつったってただの画像じゃん」を皮肉るために、文字列をQRコード画像に変換してからNFT化。
この形式でのNFT小説は日本初。半年言い続けて誰からも文句がきていないので、日本初ということはほぼ間違いない。
QRコード化された文字列は、復号するまで文字列ではない。果たして購入者が得たのは「QRコード画像」に紐付くトークンか、「文字列」に紐付くトークンか、はたまた「物語」のトークンか。
当初ダッチオークション(値段が下がっていく形式のお得なオークション)で売りに出すも、サクラを用意しなかったため誰からもオファーがなく、一度取り下げて固定価格にしたという反オークションの先鋒的存在。
これだけ文脈があって、たったの5ETHなのに誰も買わないんだから、やっぱり他のNFT売買の前例ってサクラがいるんじゃないの? という疑問に答えている感じが伝わってくる凜とした佇まい。
どうですぅ、この文脈に溢れた作品~!(ジャパネットたかたっぽく)
NFTに目が利いて鼻が利いてしょうがない投機家諸氏がこれに気づかずに半年以上放置していたとしたら、よっぽどアンテナが低いか、探し物が億劫か、頭が悪いか、実は吝嗇か、他人が買った物を追っかけで買うだけの能なしか、やっぱ売れてるやつはサクラか、とにかく何かレベルの低いやつですよね。罵られたくなかったら買ってください。まさか定価でなんか買わないですよね?
せーの。NFT、さいこ~!
宴もたけなわとなりましたので、最近出た、実直で理解の進む本を紹介したいと思います。『NFTの教科書(朝日新聞出版)』がそれです。第一章は各ジャンルの利害関係者の話。第二章が法的な課題や区別して考えるべきことを解説した弁護士の話。第三章が未来の話です。
とにかく第二章を読むべきです。
最近はメディアにおけるNFTの理解も進み、迂闊に「所有権が手に入る」「永久の資産」「コピーできない」等は書かれなくなりましたが、古い情報はいくらでもネットに残っているので、テレビなどで芸人が面白おかしく言ったのを聞いてそこから「NFT」で検索した人が間違ってしまうおそれがあります。↓面白おかしく紹介していた番組
そういう際に、きちんとした理解や、わからないものはわからないので警戒すべき、と姿勢を示す。わからないというのは無知なのではなく、現行法では判例が無いためギリギリを攻めたらどうなってしまうかわからないものなどがあるわけですから、悪いことではないのです。
火への恐れが、火をコントロールする術を人間に学ばせた。
心して読みましょう。
未来へ向かってN・F・T!
ところで、NFTは一切関係ないですが、IT起業において、スマホゲーム1タイトルが貢献して営業益208%増だそうです。
画像引用元:上記記事
……何ですかこのグラフは! こういう実例、夢のある話が世に出ることで、これらをめざし、奮起してITの世界へ進出し、NFTなどを手がけなくともIT分野で素晴らしい功績を残して社会の礎となる若者はたくさん出現すると思います。いい夢は見せるべきです。
我々は酸いも甘いも噛み分けてきたわけですから、そういった若者のガムシャラさを搾取し、フリーライドし、チューチュー吸って、導いて、「悪意をもってカネを吸い上げようとする仕組み・人物・企業から距離を置く」ことを伝えていかなければなりません。
跳ねる機会を窺うにしても、先駆者となる者はあれやこれや謂われながらも、適法に、地道に、地均ししながらやっていき、来たるべき時期を待つというのは大切なことです。それは比較的新しい技術であるブロックチェーンも同じです。
20年かけてウマ娘でYonY3.1倍。さっきのグラフを見てしまうと、地道な起業もどんだけギャンブルだよ、とは思いますが……。
ブロックチェーン技術はたまたま、最初に、最適で、刺激的で、カネになる「暗号資産(仮想通貨)」という概念に出遭ってしまっただけなのです。
未来のある画期的な技術を、直近の話題作りや目先のあぶく銭のためにカジュアルに消費してしまうのは勿体ない。暇つぶしの小遣い稼ぎを煽るだけでは勿体ない。
現状のNFTの過熱ぶりに関しては、そんな感想を抱きます。
最後に、レジェンドの名セリフをもじって、締めたいと思います。
「NFTのことは嫌いでも、ブロックチェーン技術のことは嫌いにならないでください!」
今日のところは以上です。
※「投げ銭」の話題を途中に挟み込んだのですが、軽率に投げ銭してくれる文化が醸成されると嬉しいな~と思っております。確定申告ちゃんとやってますしね。国益!国益!
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