【NovelJam2018秋】(44 最終回)ぼくにとってノベルジャムとは何だったのか

NovelJam2018秋。参戦者の皆さま、主催・運営の皆さま、審査員の皆さま、お疲れ様でした。打ち上げ会でも、大変楽しい機会をありがとうございました。

ぼくらのチームは、合宿当日の審査員賞や、グランプリ贈賞式で発表された各種の賞、いずれも獲得となりませんでした。まさに無冠。

ご存知のとおり、NovelJamには多数の賞が存在します。こんなにホイホイ賞をくれる文芸イベントを、ぼくは他に知りません。

【合宿当日】※並びはBCCKSサイト上の順番と同一にしてある。
(1)最優秀賞
(2)優秀賞(今回は該当なし)
(3)特別賞(チーム)
(4)ピースオブケイク賞
(5)藤谷治賞
(6)花田菜々子賞
(7)内藤みか賞
(8)米光一成賞

【グランプリ】
(9)グランプリ
(10)藤井太洋賞
(11)鈴木みそ賞
(12)山田章博賞(デザイン)
(13)特別賞(チーム)
(14)特別賞(個人)

冷静に考えて、参加してるのは作家16名、都合8チームなわけですからね。「自分が賞を獲る」「チームが賞を獲る」だけでなく、「チームメイトが賞を獲る」まで考えて、1つもかすってないわけです。かすりもしてないわけです。スッカスカの空振り、大三振です。

でもこれは初日に薄々感じていたことでもあり、賞を狙おうという言葉とは裏腹に、まったく狙いにいっていなかった(=方策、技術の使い方、ともにそうあるべき方向に進もうとしていなかった)に尽きます。

どういうことかというと、グランプリの講評の中でも「3回目にして、NovelJamらしいもの、というのができてしまった」という内容の言及がありましたが、それにちゃんと向き合ったか、そこを追求したか、ということです。

実は初日のチーム編成直後、ぼくらの編集担当である天王丸さんは「一つでも賞を獲りたかったら、審査員の誰の賞をもらいたいかを決めて、狙い撃ちするしかない」と言って、でもそれ以上は(そしてその後の編集においても)ぼくらにそれを強要しませんでした。

もちろん、ぼくや森田さんがその方向性で御せる性質の作家ではないと感じたからだと思います。なんとしてでも賞を獲らせるぞ、という編集さんだったら、おそらく「ではまずその虎を屏風から出してください」ということからしなければならず、どうしようもない苦行となったと思うので……。

可能性としては、編集作業と時間をすべて森田さんのために使えれば、彼女だけ何らかの賞を獲ることはできたのでは? という感触はあります。天王丸さんは「このNovelJamで一番成長したのは森田さんだと思う」と言っていたし、ぼくが見ても、時間に比例して品質が上がる限度みたいなものについて、森田さんの『あなたは砂場でマルボロを』はそれを迎えていなかった。

NRFの最終日に(アーカイブ残ってるかわからないけれど)天王丸さんは「当日審査員の感情を動かすには、ギャグやコメディに振るしかない。喜怒哀楽のうち、くすりとさせてしまえば、その感情を否定することは誰にもできない筈なんで」と言っていました。前回のNovelJamで『バカとバカンス』をもって優秀賞・鈴木みそ賞を獲得した天王丸さんならではの視点で、ぼくはすぐに納得できました。それから一週間くらいそれについて反省しましたが。なぜなら、そのときぼくは「まあ、ぼくが書く以上、無理だなそれは」と即答したので。

では、このチームで「NovelJamらしいもの」を作れたら、よかったのだろうか? というところは、グランプリ贈賞式から一夜明けたところで答えは出ていません。

打ち上げ会の最後のほうで、鈴木みそ先生が、ぼくに「悪くはなかったよ」と声をかけてから帰っていきました。そう、「悪くはなかった」なのです。

さてここで、ぼくがNovelJam2018秋における一連の投稿の「一番最初」の記事を見てみましょう。合宿から10日も前の、自己紹介記事です。

◯ご自身のキャッチフレーズを20文字以内で書いてください。
 面白い を作るな、つまらなくない を作れ

ここに伏線が回収された、というわけです。

たぶん、鈴木みそ先生がおっしゃったように、悪くはないし、つまらなくもない。おおむねの皆さんの感想は、そのへんに集約されていくのだろうな、という感触があります。

何か一つ、読者にひっかかりを作れたのだろうか、エンターテインメントとして喜怒哀楽の心のひだを、強く、いじってやることはできたのだろうか。それへの試みについては弁解するまでもなく「外していた」ということです。

ただ、無冠であることによって、ぼくや森田さんの作風に一つの仮説が立てられたとも思っています。

料理人が集まり、限られた時間、限られた素材、限られた調理器具をもって一点突破の創作料理を振舞わなければならない場で、「チェーン店のハンバーガーとコーラ」を「お出し」してしまった可能性です。

合宿後の拡販戦略が、他のチームでは見られなかった「マス広告」と「作家のタレント性を推した個展イベント」であったことも、それを裏付けていると思います。(こじつけているとも思います)

ということで、NovelJam2018秋。色々なことを考える機会を与えていただいたと思っています。

作家世界にも興味を持つようになり、小説家が登壇するイベントに行ったことなど、記憶する限りでは20年以上前に武蔵野市民文化会館で志茂田景樹氏が講演をしたとき以来です。

職業作家の方との出会いも急激に増え、NovelJamで出会った坂東太郎氏だけでなく、自分の好きな作家である赤野工作氏や、最近デビューされた櫻木みわ氏に会って話す機会が得られました。前に書いたと思いますが、コミュ障なんですよ、ぼくは。

そういう世界を広げるきっかけとなったNovelJam2018秋、大収穫だったと思っています。

皆さま、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

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沢しおん
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