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おすすめの本「心理学に学ぶ鏡の傾聴」-メルマガ「ふだん使いのAI ×コーチング×心理学」#5

今回紹介する「心理学に学ぶ鏡の傾聴」は、2024年6月に出版された新刊書です。著者(岩松正史氏)は日本傾聴能力開発協会 代表理事で、傾聴に人生をかけて、というか、傾聴ブームに乗って出現した多くの「傾聴迷子(傾聴がうまくいかなくて困っている人たち)」を救うことに命をかけておられる方のようです。

本書は、私が傾聴に対して持っていたモヤモヤ感をかなり解消してくれました。傾聴については、25年前に受けた産業カウンセラーの養成講座と、15年前に受けたキャリアコンサルタント養成講座で専門的なトレーニングをし、傾聴の本もこれまでに10冊以上読んできましたが、私にとっては、この本の説明が、他の本と比べてみても、ずっとわかりやすかったです。

自分自身、コーチングやカウンセリングを長年、トレーニングしており、また、会議や打ち合わせなどで、発話者が、気が付くと私の方を見て話している、ということが多くあり、それなりに自分は傾聴がまあまあできていると思っていました。しかし、自分は大事なところがよくわかってなかったということが、この本を読んでよくわかり、目からウロコの連続でした。

この本の何が良かったかというと、これまでの25年以上にわたって、私自身が経験してきた、傾聴を取り巻く、様々なことを、すごく上手に言葉にして、「傾聴の全体像」を見せてもらえた感じがする、ということです。

ただ、これまで常識のように教えられていたことについて、逆説的な説明がなされており、実はそれが、ロジャーズなどの傾聴の専門家の真意なのだ、というところも多いです(その根拠資料や注が、逐一、下欄に丁寧につけられていて、便利です)。

どうも、私がこれまでの本やセミナーで傾聴のことが、わかったようで、よくわからなかったのは、これまでの傾聴の説明がもっぱら「聴き手側の説明」中心になっていたからだと思います。

それをこの本では、「聴き手側」と「話し手側」の双方で起きていることについて詳しく説明をし、また、両者のコミュニケーションのやりとりと、それぞれ、相手が「自分の鏡」になって、お互いに「自分側のセルフ傾聴」が促がされるものであること、そのやりとりがプロセス(流れ)として進行し、深まっていくこと、これらが「傾聴」の実態であり、本質であること、を説明しているように思えます。この辺りは、私の感想です。

以下、いくつかの感想を加えます。

ロジャーズの中核3条件の概念が腑に落ちた。

一つは、これまで、わかったようでわからなかった「自己一致」「受容(無条件の肯定的配慮)」「共感(共感的理解)」の概念が、自分のこれまでの経験と合わさって、「そういうことだったのか」とスッと入ってきたことです。

まず、「自己一致(congruence)」とは、「私が、私であることをそのまま認める」と書かれています。私なりに言い変えれば、「そんな自分なんだ」「これが自分なんだ」「自分はどうしようもなく、これが自分の姿なんだ」と、ありのままの自分を自己認識すること、かなと思います。

次に「受容(UmconditionalUmconditional Positive Regard)」です。これまでは「無条件の肯定的配慮」と訳されることが多かったのを、「あなたが、あなたらしくある様子を、そのまま眺めている」ことだとされています。「相手のあるがままの姿」を温かいまなざしで「そうなんや」と、無評価、無判断で、ただそのまま眺めている、というようなイメージとのことです。

そうすると、この「受容(Umconditional Positive Regard)」を自分に対して実践する「自己受容」とは、「自分が、自分らしくある様子を、そのまま眺めている」ことで、「自分のあるがままの姿」を温かいまなざしで「そうなんや」と、無評価、無判断で、ただそのまま眺めている、というようなイメージなのかなと思いました。

3つ目の「共感的理解(empathethic understanding)」は、「あなたと同じ感覚をもって、あなたをそのまま理解する」ことだとされています。「(相手の物事の受け止め方や感じ方を決めている『相手の準拠枠』としての)相手の価値観や感覚を通して、相手を理解すること」のようです。

そして、共感とは「あなたは~なのですね」と相手に伝える行為(doing
)をいうのではなくて、「相手の思考や感じ方までも理解して、そういう考え方や感じ方をする(準拠枠を持つ)あなたであれば、当然そのように受けとめますよね」と、聴き手が体の中で感じている状態や態度(being)のことをいう、とされています。

聴き手も話し手も、お互いが「自己一致、受容、共感している状態」で、お互いを「鏡」にしあって、セルフ傾聴(自己傾聴)する、というのが傾聴の目的(本質)である?

そして、私にとっての一番大きな目ウロコは、聴き手の目的は、「聴き手自身が自己一致、受容、共感しているという状態」と、聴き手自身がセルフ傾聴できていることである、という点でした。

この本の筆者が言いたいことは、
聴き手が自分の傾聴に対して、他者からの批判や自己批判により、厳しい態度をとると、それは自分の傾聴に関して「自己一致、受容、共感している」ことにならず、傾聴が苦しくなる。そうではなく、自分の傾聴に対して、安全な環境で、安心した「自己一致、受容、共感している」状態でいられると、「いい傾聴は、聴く人(聴き手)を楽にする」ということが実現し、他者を傾聴することも楽になる。そうなれば「傾聴迷子」を抜け出せる、
というようなことだと思います。

聴き手がそのような「自己一致、受容、共感している」状態でいられると、「話し手自身も安心と安全の中で、自己一致、自己受容、自己共感ができる」(この辺りは私なりの表現です)。そして、話し手は、聴き手を「自分をうつす鏡」として、セルフ傾聴を始め、自分の内面の感情や気持ち、感じを深堀りでき、しっくりと理解していける。

つまり、聴き手が中核3条件を実現できていて、聴き手が自分に対してセルフ傾聴ができているとき、「話し手側も、中核3条件を自分で実現できて、話し手自身もセルフ傾聴できる」という状態が実現する。それが、「傾聴の本質」であると主張されているように思います。

「傾聴力は自分への傾聴力と他者への傾聴力の掛け算で決まる」

上記と重複しますが、「自分への傾聴力」の前提には、「自己一致、自己受容、自己共感」があります。聴き手が中核3条件を満たせているとき、聴き手は自分を肯定し、自分を信頼するという状態が実現できています。だから、自分の傾聴力を否定したり、自己批判することなく、楽に安心して、他者を傾聴できます。

これまでの傾聴の学習では、「他者に対する傾聴力」に焦点を当てられていたところ、聴き手の自己傾聴(著者の言葉で「セルフ傾聴」)、自己理解、自己肯定、自己信頼が大事なんだ、そして、これらは、傾聴において重要なことはもちろん、聴き手本人が成長し、人生をよく生きるためにもすごく重要なんだ、ということを強調されているようです。

実は、自分も「傾聴迷子」だったのかもしれない

これまで、私は、自分のコーチングやカウンセリングが質問型のものであり、傾聴を、コーチングの前提として考え、それほどしんどいと思ったことがなく、まあまあできているのかなと思っていたのですが、本書を読み、これまでとは全然別の視点から、自分の傾聴を見直すことができました。

結果としては、自分がやってきたことは、間違いでもなく、悪いことでもなく、まあまあ他者の傾聴ができていた、ように思えます。あくまで自己評価ですが。

ただ、この本を読むまで、「セルフ傾聴」「他者傾聴の際の聴き手の自己傾聴」という概念が自分にはありませんでした。コーチングの際に、そういうような体験をしている自分がいたのですが、「それでいいのかな」「もっぱらクライアントに意識を集中すべきではないか」と思って、自信がなかったところ、「あなたのその経験がすごく大事なのです」と肩を押してもらったようで、ある意味「傾聴迷子」だった自分を、これで脱することができるのではないかと思えました。

ぜひ、傾聴に関心がある方は、本書を読まれたら、これまでになかった変化球がいくつも飛んできて、得られるところが多いと思います。おすすめです。

今回は以上です。

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