『喫茶おじさん』の聖地巡礼:上野の「アメ横ダンケ」でバターブレンドコーヒー体験
以前から気になっていた喫茶店を訪れました。
東京都上野にある「アメ横ダンケ」さんです。
原田ひ香さんの小説『喫茶おじさん』という本を読んで以来、ずっと行ってみたいと思っていました。
気になっていたのは、「バターブレンドコーヒー」という飲み物。
いったいどんな味がするんだろう?
そんな思いを胸に、たまたま上野に行く機会を得たので、意気揚々と出かけていきました。
Googleマップを片手に店を探しながら歩いていると、「本当にここで合ってるのか?」と心配になる場所に到着。
おそるおそる近づくと、確かにそこには「ダンケ」と書かれたお店がありました。
1分ほどそわそわと周りをうろつき、思い切ってドアを開けると、ラッキーなことに空席がありました。
マスターに案内された席に座ります。
店内はこじんまりとしていて、カウンター席が5つのみ。
喫茶店というよりも、オーセンティックバーのような静かで落ち着いた雰囲気が漂っています。
マスターに手を消毒してもらってから、商品の説明を受けました。
ホットコーヒーを頼む場合、コーヒーカップは自分で選べるとのこと。
目線を上げれば、正面の棚には綺麗なコーヒーカップとお皿が並んでいて、美術館の展示のようです。
とはいえ私は緊張していたので、あまり考えず目の前にあった黄色いバラのカップを選びました。
お冷が入っていたグラスも切子グラスのように装飾が入ってとても綺麗でしたし、食器1つひとつにこだわりを感じました。
注文したのは、もちろん「バターブレンドコーヒー」。
それに加えて、レアチーズケーキと、「ケーゼクーヘン」という初めて聞く名前のデザートも頼んでみました。
注文を終えると、席で黙って大人しく待ちながら、マスターが準備をする様子をそっと眺めていました。
店内は静かで、賑やかにおしゃべりするような雰囲気ではありません。
私はうっかりTシャツとスニーカーというラフな格好で来てしまったため、少々場違いに感じ、席でちんまりと座っていました。
マスターが一人ですべてをこなしているので時間はかかりますが、コーヒーを待つのもこの店の醍醐味といえましょう。
お湯の沸き具合を確かめ、ケーキを切り、コーヒーをゆっくりと落とすマスターの所作はひとつひとつがじっくりと丁寧で、どこか魔法使いっぽさも感じました。
思ったのは、ここは喫茶店というより「茶室」だということです。
「茶道」ならぬ「珈琲道」の格式を感じます。
しばらく待ち、運ばれてきたのはバターブレンドコーヒー。
バターの香りは正直よくわかりませんでしたが、苦味や酸味のバランスが私にはちょうどよくて、飲みやすかったです。
続いて出てきたのが、レアチーズケーキとケーゼクーヘン。
3つの食器が並んだ光景は、まさに圧巻です。
レアチーズケーキはねっとりと濃厚なのにしつこくなく、とってもおいしいです。
すぐに食べ切るのがもったいなくて、フォークでじわじわと切りながら少しずつ食べました。
お皿にはハーゲンダッツのイチゴ味も添えられていて、いいアクセントでした。
もう1つのケーゼクーヘンは、温かくてふわふわした食感で、優しい味。
後で調べたところ、ケーゼクーヘンとはドイツ語で「チーズケーキ」という意味なんですね。
どおりでチーズの風味がしたわけです。
ケーキ自体は甘さ控えめで、もったりとした濃厚な生クリームといっしょに食べると口の中が幸せいっぱいでした。
デザート2つは多かったかなと思いましたが、気づけば両方ともあっさりと完食しました。ごちそうさま。ダイエットとは。
隠れ家的なこの喫茶店は、みんなでワイワイ賑やかに過ごすというよりも、たとえるなら瞑想するように、一人でじっくりとコーヒーと向き合うための場所でした。
次はきっちりめの服装をして、また訪れたいなと思います。