日本の国力 UP を目指して
こんにちは。さわかみ投信の澤上龍です。
先憂後楽とは読んで字のごとく、「将来のために今頑張る」という、まさに長期投資を表すような故事成語です。
今日の楽しさばかりを追いかけていると将来に大変なことが積み上がっていきますが、将来のために今日をちょっと頑張ろうと決めて行動することが大切です。
この「澤上龍の先憂後楽」では、長期投資の思想を軸に、私が日々感じることや考えを書かせていただきます。
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知人と面白い議論をした。テーマはズバリ「どうしたら日本の国力が上がるか?」だ。我が国は平成時代に国力のピークを迎え、以降、低下の一途を辿っている。復活の兆しはなく、残念ながら誰もそれを願っていない…筆者の目にはそう映る。国力低下を望む者はいない。しかし高めるための策を講ずる者もおらず、諦めの境地というか、どこか他人事のように振舞う。今を生きることに精一杯なのか、それとも未来への目を閉じてしまったのか。
国力をはかるには幾つかの指標がある。人口のような基本的要素もあれば、経済力や軍事力のような対外的な要素、更にはそれらを加算した総合的な力など。しかしここではその概念を正すことが目的ではない。純粋に日本の魅力、成長力が乏しいことを憂い、どうしたら日本の未来に希望が持てるかを考えたい。
日本の国力を高めるために必要なことは?
十中八九「教育が必要」と言う。本当にそうか? ほとんどの日本人は国が定めた教育を受けている。今さらどのような教育が必要なのだ。教育の質を変える? どうやって?昨今始まった金融教育にしても、それを学んだからといって裕福になれるとは思えない。無論、ある程度はお金について上手な生活を送れるようになる。しかしそれだけのことで、大多数が投資リターンを積み上げられないだろう。他方で詐欺や詐欺まがいの人たちは教育を受けた我々の圧倒的な上をいく。下手な知識をつけたところで太刀打ちできない。
教育が鍵なのは重々承知しているが、どのような教育を施せば日本の底上げにつながるのだろうか?
足りないのは売り込み力?
ものづくり企業の役員である別の知人と話した。人件費抑制を求めて生産拠点を海外に移す流れでも、彼の企業は国産にこだわり品質維持を貫く姿勢を見せた。その判断が運良く吉と出た。
海外生産を進めた企業は、中国からバングラディッシュ他アジアへ、それでも効かなくなり悲鳴とともにアフリカ進出を模索しているとのこと。足元の円安、長らく上昇を見ない日本の人件費によって、現在は国産の方が高効率(販売地が日本の場合)な状況にあること。しかも各地の工場設備投資を回収しきれておらず、泣く泣く稼働させるしかない。
しかしレアとなった国産、残存者メリットを生かせる立場のはずの彼が次のようなことを言った。「国内にとどまっていたせいか、ものづくりには自信はあるものの売り方に自信がない」。日本企業が海外で後れを取る分野、それが販売力、マーケティング力だ。
根本的に足りないのはアニマルスピリッツ
売ろう、稼ごう、上に立とうという野心、というかアニマルスピリッツこそが我が国に足りないと思う。出る杭が打たれる文化のある日本、何かあれば格差問題を引き出してくる。格差は本来あって当たり前だ。それが機会の平等、結果の不平等であれば。むしろ今、人々のアニマルスピリッツを刺激し、稼げる人から稼いでもらった方が良いのではないか。稼いだ人は必ず社会に分配を行う。それは自身が豊かな生活を送るためにも周囲の豊かさが必要だからだ。最初から分配ありきで、格差問題を気にして “ 皆平等 ”が前面に出ると、そもそも稼ぐ力を持つ人間が生まれない。先ほどの詐欺は悪い例えではあるが、彼らが一般人の上を行くのはまさにアニマルスピリッツだと思う。
余談だが、投資運用は全ての人に平等だ。収入、住居に限らずお金は平等に世界を飛び回ってくれる。金銭的不安は大いなる社会課題で、この解決一つとっても国力引き上げに繋がる。ただしボヤーっとした強さだが。
そのような想いから、今後、人々のアニマルスピリッツを刺激していこうと考えている。日本を力強く引っ張ってくれる次世代リーダーが生まれることを願って。
[2022.10.18記] 代表取締役社長 澤上 龍
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