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一度は読んでおきたい!株価急落時の心構え

「株価は近々急落します!」
 こんなタイトルのついたニュースや本に目が留まります。人は恐怖や驚きに強く反応し、ドラマとしても興味を惹きやすい性質を持っているようです。私自身も書店で「株大暴落!!」と危機を謳った本と「株はこの10年でジワジワと3%上がる」なんて平穏なタイトルの本が並んでいたら、やっぱり前者を先に手に取ってしまうと思います。では「急落」は本を売るための文句であり、このまま来ないのかというと、そうともいかなそうだというのが実感です。

 全ての事象がいつまでもスムーズに流れるのは理想的ですが、例えば地球活動のマグマやプレートのように動きがあるところには必然的に歪みが生まれ、そこではストレスが時間とともに溜まっていきます。こと世界の経済活動においても、リーマン・ショック以降コロナ禍も経て、世界で景気対策としてバラまかれたお金の流れが、いろいろなところでマネーゲームをつくり出している状況です。例えばそれは、米国を代表するテクノロジー企業の株価のみならず、金やウィスキー、腕時計、さらにはポケモンカードに至るまで凄い勢いで価格が上がっていることで、普通の生活の中でも実感できるほどになっています。このような既に手に届くところに来ている違和感から、経験を積んできた賢者の警告が、決してただ怖がらせるために書かれたものではないと理解できます。

 それでは私たちはこの先達の警告を自分事としてどのように活かせばよいでしょうか。まず前提として「急落」はいつ、どの程度の震度で、どのくらいの期間続くのかは誰も正確には予想できません。むしろここに注目してしまうと、必要以上の心配が生まれてしまうため「来るかもね」程度に留めておくのがよいでしょう。

 次に、具体的にどのような影響が出そうかまで落とし込んで考えてみましょう。まずは生活者としてこれが不景気まで繋がってしまうことを想定しておかなくてはいけません。はじけるバブルが大きいほど単なる資産価額の下落にとどまらず実体経済に影響を及ぼし、それが生活者の消費マインドを冷え込ませてしまうとその回復には長い時間を必要とします

 例えば2008年に米国発で起こったサブプライムローン問題~リーマン・ショックに起因した金融危機による経済の混乱が正常化するには、2015年(諸説あり)までの7年の歳月を要しました。この時は毀損するような資産を持っていない人にとっても「関係ない」では済まされず、勤め先の業績が不振になったり給与に影響が出ました。

 もしその時にあなたが投資家であれば、持っている資産の価額が直接影響を受けることになります。例えば先述の時期に米国の株価指数(S&P500)は期間中直近高値から一時▲57%と半分以下になり、同じく影響を受けた日本の株価指数(TPX)も一時▲61%と影響を受けました(筆者調べ)。この時、仮に1,000万円の株式投資をしていれば、一時的にその価額が390万円になってしまうと想像すると気が気ではなくなりそうです。そしてこちらも元の水準に戻るまでにそれぞれ約6年・10年近い期間が掛かりました
 なかなかインパクトのある数字ですね・・・

 この後のどこかで訪れるであろう市場の「急落」という調整局面を、私たちがどのような立場や年齢で迎えるかで受ける影響の大きさは異なってきますが、何にせよできることはそのような状態になっても着実に動けるようにしておくという以外にありません。それは例えば、生活者としては前向きに資格試験の勉強をするような余力を残しておいたり、投資家としては投資をあきらめるのではなく追加で投資する余力を残しておいたりすることです。間違えても経済のうねりによって退場させられてしまってはいけませんので、それまでに身の丈以上の借入や投資は控えておくことも前提として大切になります。

 そしてもしこのような苦しい時期が訪れた場合には、やはりマインドも重要です。どれくらいの期間になるかはわかりませんが、そう簡単には終わらないと思うと気持ちの浮き沈みも十分予想されます。ここでネガティブなマインドに引きずり込まれないこと! そういった意味では、「暴落来るかもね」と思っておくことは気持ちの準備としてとても大切なのではないでしょうか。

 さらに加えるとこの時に最も重要なのは、混乱の最中に生まれる希望を見逃さないことです。なにも経済に限らずこれまでも災害などの苦難の後には人々は生活をさらに良いものにするよう再起してきました。金融経済の上に膨らんだバブルはいずれ破裂するかもしれませんが、実体経済(私たちの生活)は不滅ですし、豊かになりたいという人間の希望はそういった混乱の中でも力強く続いてきました。そして自分や他者への期待(楽観力)があるほど、経済が正常化したときに、生活者として暴落前を超える力強い自分へと変わることができます

 事実として私がさわかみファンドのセミナーで各地にお邪魔した際、そういった筋金入りの生活者(兼投資家)の皆さまほど「なかなか急落こないね~♪」などとおっしゃいます。よくよくお伺いしてみれば、私たちがファンドの成績でご心配を掛けている時期でも「(ファンドの中身を見て)この投資先企業なら安心だよね」と追加投資をすることで、ファンドの成績をはるかに上回るリターンを得られていました。いつ起こるかわからない「急落」ですが、このぐらい寛容に構えることができれば、実体経済という大地に発芽した価値に、むしろバーゲンセールの状態で投資ができる大チャンスに見えるのかと思います

 今回は「株価急落時の心構え」のタイトルでのコラムでした。私自身まだまだお客さまから学ぶことも多い長期投資家道ですが、単なる金融商品ではなく、どんな時でも信頼いただけるファンドであり続けなければと、身を引き締めつつこの辺りで筆を置かせていただきます。

私の人生を豊かにしてくれるのは、世の中への当事者意識と感謝です。
運用調査部 斉藤 真 Makoto Saito
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