マガジンのカバー画像

短編集②

25
運営しているクリエイター

#連載小説

亡霊居酒屋 やおよろず~許しの雨~後編

 その子も、その母親も、哀しい身の上といえば、それまでだったのです。その子の名前は私は出しません。
 私には彼の名前を出す資格はないんです。これを人は逃げと呼ぶでしょう。私も逃げていないと言い切る自信はありません。でも言いません。
 その子は少し知的に障害がある子でした。しかしその程度は決定的といえないもので、特殊学級でも、サポートさえあれば、普通学級でも、どちらでも行ける生徒でした。
 その子は

もっとみる