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佐和島ゆら
2018年10月16日 13:01
メイドのマリアは古風な木造屋敷でバラの剪定をしていた。その表情は、苦虫をかみ切ったように歪んでいる。それを見て主人であり、恋人であるヨハネスは困ったように微笑んだ。「マリア、その顔じゃ写真映えしないよ……」「別に写真なんて映えなくて結構です。全く何を考えているのですか、ヨハネス様」「いやいや、マリアは可愛いよ。美人だと思うんだけど」「へぇ」「そんな憎々しげに言われてしまうと、こっち
2018年10月6日 22:28
二人の家の玄関脇にはボトルがある。その中身は春秋(はるあき)の同居人である頼政が漬けた梅酒だ。春秋と住むようになったばかりの頃に、急に思いたったように作り始めた。 大事に、まるで守り通すように作られた酒を試飲させてもらうと、フルーティさの中に水のような透き通った味がした。「もう、これ飲めるぞ」「いやいや、まだだよ」 ひっそりと頼政は笑う。その白い首筋はかみつきたくなるほどに綺麗だった