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#短編小説

「試し読み」雨と罪「小説」

 いきなり頭をさげられた。場所は普段近寄らない、ちょっとお高い喫茶店でだ。暗めの照明。香ばしいコーヒーの匂い、そして流れるクラシック……そこで俺は目の前の男に頭を下げられていた。
 困惑というか、なんでそんなことをされるのか分からない。俺は慌てて、声を出した。
「やめてくださいっ。何なんですか、いきなり」
 すると男は心底まいったような顔をした。眉間にしわを寄せ、唇を噛む。それからまた深々と頭を下

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