夜に融ける
こんばんは。さわひろ子です。
今夜は、ライブのときに
MCがわりに挟んでいたおはなしを。
街じゅうのひとびとが
もしも夜に、とけてしまったら。
「夜に融ける」
あれ。
さっきの道、どっちに曲がったっけ。
家に帰るときって、こんな景色だったっけ。
数を数えるんだっけ。どうして、今?
わからないけど、十数えなくちゃ。
そう、数えて、そしたら、
何が始まるんだっけ。
【かぞえうた】
数え終わって目をあけると、
そこは夜でした。
人はみんな夜に融けてしまって、
町はがらんとしています。
始まったのはどうやら、
あてのないかくれんぼみたいです。
【かくれんぼ】
息を切らして、人を探します。
誰か、いませんか。
まだ夜に融けていない人は、
残っていませんか。
わたしはどうして融けなかったんだろう?
静まり返った町にぽつんとひとり、
焦りと寂しさが、
化け物になって襲いかかります。
【dragon】
ついにあたりは闇に満たされました。
電灯もコンビニもなく、家の灯りもついていない町で、わたしはたまらず、しゃがみこみました。
ふと、白い閃光が横切りました。
光のほうに目をやると、あれは、ミラーボール、じゃない。流れ星だ。
【真夜中】
流れ星は雨のように降り続け、
人びとは光に形どられて輪郭を
取り戻してゆきます。
たしか水瓶座の流星群が美しく降るのだと、
昨日のニュースで言っていました。
夜は今度は光に満ちて、
わたしは夜明けまで、
光のプールを泳ぐことにしました。
【トロイメライ】
at
2019.5.6
「ヨルニトケル」
北参道ストロボカフェ
pf.伊藤詩織
ちょうど去年のいまごろの
おはなしでした。
水瓶座流星群の日だったのですね。
北参道ストロボカフェさんの
ライブタイトルはいつも
ロマンチックで素敵なのですが、
この「ヨルニトケル」という題の
イベントにお呼びいただくことが
多くて、「夜にとけるはなし」が
確か、あと二つ三つあります。
それらも、また別の機会に。