福知山音楽堂の主催公演を企画する際に考えていること
みなさんこんにちは。
福知山音楽堂プロデューサーの吉田佐和子です。
先日呟いたこちらのツイートに、沢山の反応をいただきました。
今回は福知山音楽堂の公演企画を決める際に考えていることをまとめてみたいと思います。
地方における有名な演奏家とは?
故郷である京都府北部・福知山市に音楽ホールを建てようとしている中で思うのは、日本のクラシック音楽界で有名な人でも、地方に行くと全然知らないという人も多いということです。
また、都会にいると色んな有名な演奏家がしょっちゅうやってきてコンサートを開催しているので「今度は○○さんがやってくるね」という話になるのですが、地方に住んでいるとまずそういう情報自体が入ってきません。
そのため「クラシック界で有名な○○さん」と言っても、それだけでは集客が出来なかったりするのです。
おそらく、地方の人たちが「この人は有名な人だ!」と思うのは、テレビ番組に出演しているような音楽家だったり、今だとYouTubeで多くの登録者のいる方になるように思います。
『集客力』のある演奏家と『企画力』のある演奏家
日本中どこのエリアでも集客が出来る演奏家は、既にかなりの人気がある人でしょう。そのレベルにいくのは並大抵のことではありません。
そして、日本には沢山の音楽ホールがありますが、多くの企画担当者が気にしていることは、集客できる演奏家か?また、SNSのフォロワー数やYouTubeの登録者は何人か?ということかもしれません。
それらは、数字で分かりやすく集客出来る可能性を感じることが出来ますし、企画担当者の安心材料にもなるからです。
ただ、お金があるホールの場合、お金を出して著名な演奏家を沢山呼ぶことが出来ますが、そこまでお金が潤沢にないホールも数多くあります。
そんな時に問われるのが『企画力』なのではないでしょうか。
もちろん集客できる演奏家は重宝されますが、今は企画力がある演奏家、お客様に需要のある企画を提案出来る演奏家も求められているように思います。
実際に、福知山音楽堂の開館プレイベントの企画を演奏家たちと進めていると、様々な経験をしてきた演奏家たちの企画提案力に驚くことが多々あり、その度に嬉しく感じます。
私1人では考えられなかったことを演奏家が提案してくれることで、福知山音楽堂が届けられる公演内容の幅もどんどん広がっていくと考えています。
集客は福知山や近隣地域のことを知っているこちらに任せていただき、より良い内容を届けることに集中してほしいと思いますし、集客をするためには公演のアピールポイントを理解して広報を行う必要があります。
広報と一口に言っても、チラシ制作や広報媒体、広告宣伝費をどの媒体にどれだけ使うか?など色々考えることはありますが、企画と広報の考えが一貫しているからこそよりダイレクトな訴求に繋がると考えています。
芸術文化に興味のある人を増やしていく運動の重要性
福知山で豊かな芸術文化が身近に感じられないという現状を変えるため、現在福知山音楽堂プロジェクトを進めていますが、私が目指すのは一部のクラシック音楽愛好家の方だけが楽しむ場をつくることではありません。
先日更新した下記の記事にも書きましたが、全くクラシックの公演に行ったことがない人にも来てほしいですし、音楽に限らず芸術文化に触れる人を増やしていきたいという思いがあります。
既に集客が出来る公演を買うだけでは、ホールスタッフの企画力が上がるわけではないですし、演奏家の知名度「だけ」で来てくださったお客様は、演奏家が別のホールで演奏するとそのホールに行くでしょう。
そういったお客様が一定層いらっしゃるのは当然ではあるのですが、なるべく福知山音楽堂が企画する公演を楽しみにしていただける方を増やしていきたいですし、そんな風にワクワクしていただける企画を考えていきたいと考えています。
お客様に身近に感じていただける場所を創りたい
福知山音楽堂は『公演がある時だけに行く特別な場所』ではなく、皆さんの暮らしの身近にある存在だと感じていただけるような場所にしたいと思っています。
そのために、カフェを併設する他、少人数での運営を行うにあたり、ホールスタッフの顔が見えるような運営をしていきたいと考えています。
例えば、チラシには毎回企画者の顔写真とコメントを掲載するようにしています。
今後、公演企画者が増えてきた際には『○○さんが企画してる公演なら行ってみようかな』と言っていただけるようになれば良いな、と思っています。
また、例えば福知山音楽堂で働いた後に別のホールに行ったとしても、どんな公演を手掛けたかがすぐに分かるので、履歴書代わりにもなるかもしれません。
また、インスタグラムで発信を行う際には、投稿を書いた人の名前を書くようにしています。
他にも、公演に関するメールを送るとき、公式LINEアカウントでの発信の際も名前を出します。
ちょっとしたことではありますが、音楽堂がやっている『コト』ではなく音楽堂で働いている『ヒト』に興味を持ってほしいと思っています。
終演後の演奏家とお客様を繋ぐ導線について
この人に演奏をお願いしたい!と思った人のことを色々ググった時に、SNSアカウントが全くない方もいらっしゃいます。
その時にちょっと考えてしまうのが、やはりお客様がどれだけ演奏家に興味を持ったとしても、公演終了後にSNSで検索しても何も情報が出てこないと、その先に繋がらないのではないか?ということです。
ホール側としては、まず企画や演奏家に興味を持っていただいてご来場していただけるようにチラシを作ったり、集客を頑張ります。
そして「福知山音楽堂で演奏してもらって終わり」にするのではなく、1人でも多くのお客様に演奏家自身の活動に興味を持っていただきたいと考えているので、SNSアカウント等もパンフレットに載せておきたいな、と思うわけです。
ただ、お名前で検索しても鍵アカウントになっていて、プライベートアカウントになっていると、フォローするのも躊躇ってしまいます。
実際に、テレビなどに出ていたりご活躍の方ほど、きちんとSNSを使っておられると感じていて、有名・無名に関わらず、自身の活動を1人でも多くの方に届けようとされているプロフェッショナルな姿勢を感じます。
鍵アカウントになっている=そこまで演奏家としては活動したくないのかな?とも思ってしまいますし、同じくらいの能力があり、自ら発信していない方と発信している方がいた場合、後者の方に演奏を頼みたいと思ってしまうのが正直なところです。
さいごに
少子高齢化の未来を考えると、人口の少ない地方になればなるほど、これからのホールの集客は難しくなりますし、そもそもホールに行くことが出来ないお年寄りの方も増えていくでしょう。
そうした時に、どのような音楽ホールが地域と共存していけるのか?
地域の方々に必要とされる場所になり得るのか?そんなことをよく考えます。
ただ場所をつくるだけではなく、人と人を結ぶ、地域になくてはならないコミュニケーションのハブとなれるような存在を目指し、これからも福知山音楽堂の事業を色々と考えていきたいと思います。