前売り券完売!福知山音楽堂の開館プレイベント2公演を終えて
みなさんこんにちは、福知山音楽堂プロデューサーの吉田佐和子です。
10月に福知山音楽堂の開館プレイベントが2公演終了しました。
内容は、本格的なクラシックの公演と、未就学児から入場可能な親子向けの公演です。
結果的に、両公演とも前売り券が完売。
キャンセル待ちのお問合せをいただくような状況でした。
今回の記事では、この結果に繋げるための行動や思考についてまとめてみました。
前売り券完売の秘密
今回行った公演は本格的なクラシック公演と親子向け公演。それぞれの公演の客層も違います。
そのこともあり、完売するまでには様々な試行錯誤がありました。
ちなみに前売り券として販売していたのは、トリオ・セレナーデは80席、アートであそぼうは94席でした。
なお、現在2024年のオープンを目指して準備を進めている福知山音楽堂は80〜90席ほどの音楽ホールになる予定です。
250通の案内を送るも全く動かなかったチケット
まず、もともと私がクラリネット奏者として福知山で活動してきたこともあり、私から約250通の公演案内を送りました。
しかし、そのご案内では全くチケットが動きませんでした。
ここで私は『私の考えた企画に興味を持ってくださるお客様がいるはず。福知山音楽堂の開館プレイベントを応援したいと思ってくださるお客様は来てくださるはず』と考えていた自分の甘さを痛感しました。
福知山音楽堂プロジェクトを応援したいと思っている人でも、公演内容に興味がない場合、来場していただくことは難しいでしょう。
私は、私の考えた企画で多くの人に喜んでいただきたいという思いの方が大きいので、福知山音楽堂で行う公演に毎回出演する予定はありません。
そのため「吉田さんが出るなら行こう」と思ってくださるお客様だけでなく、「この企画面白そうだから行きたい」と思ってくださる方を増やしていく必要があるのだという当たり前のことを実感することが出来ました。
本格的なクラシック公演の場合
記念すべき開館プレイベント第1回目として行ったのは、フランス国立管弦楽団の首席フルート奏者、シルヴィア・カレッドゥ、同楽団の首席クラリネット奏者、パトリック・メッシーナ、パリを中心にヨーロッパで活躍するピアニスト広瀬悦子さんによるトリオ。
本格的なクラシックの公演で、曲間にトークもありません。
この公演にご来場いただいたお客様のうち、半数は市内の吹奏楽部で活動している子どもたちでしたが、福知山市内にある吹奏楽部に案内を送ったところ、まとまった数のチケットが動きました。
また、地元紙のチケットプレゼント企画で扱っていただき、一面のかなり目立つ位置で告知することが出来ました。
宣伝と集客につながるので、広告を出すよりも効果的な方法かもしれません。
その他には、本格的なクラシック公演を聴きに来たいと思われるアマチュアの音楽家さんにもお声がけしました。
ちなみに、実は私は主催公演で本格的なクラシック公演の回数を多く実施しようとは考えていませんでした。
もちろん時期が来ればそれも可能だと思っていましたが、今はまだその時期ではないと考えていたのです。
しかし、今回トリオ・セレナーデ公演を行なったことで、本格的なクラシック公演を期待する人々はきちんといること。
「本物」を地方の子どもたちに届けたいという自分の中の強い想いに改めて気付きました。
親子向け公演の場合
また、親子向けのイベントはインスタグラムで広告を出しました。
広告を出す地域、世代、興味がある内容、予算、期間などを選んで広告を出しました。
え、それだけ??と思われるかもしれませんが、それだけです。
そこでどのような内容を選ぶか?また、投稿を見て興味を持っていただいた方がすぐにチケット購入にたどり着けるような導線作りが大事です。
ちなみに、ツイッターもインスタグラムも広告を出すことが出来ますが、京都府北部で子育てをしている方はツイッターよりもインスタグラムを利用していることから、インスタグラムだけで広告を出しました。
開館プレイベントを行って感じたこと
ここからは、開館プレイベントを2公演行って感じたことをまとめていきたいと思います。
実際に、開館プレイベントでは毎回様々な試行錯誤を行っています。
また、開館プレイベントをやる前と後では、様々な視点がかわり、実務を想定した内容を検討することが出来ています。
例えば、子ども向けイベントを開催するにあたり増えた備品を見て、備品庫の拡張を行いました。
音楽ホールがつくられる時は、どうしても使い手の目線が反映されないことも多々あるのが現状です。
しかし、このように音楽ホールを建てる会社と運営する会社が一緒だと、実際に運営していく人の声が反映されるんですよね。
チケットの購入方法について
チケットを購入してもらう際に、どのような方法がいいのか?色々と試行錯誤しています。
まず、福知山音楽堂のコンセプトの1つに『小投資・少人数運営』があるのですが、お客様がチケットを購入する際に全てを電話対応で受けているとその対応時間にどうしても時間がかかります。
現在ですと、3公演のチケット販売を行っていますが、複数公演の受付を全て電話で対応するのは実質的に無理です。
そこで、現在下記の3つの方法で販売を行っています。
①チケット委託場所で購入
②オンラインフォームで予約→当日現金払い
③teketでオンラインチケットを購入
まず、チケット委託場所での購入は、年齢層が高めの方々を対象にした公演の場合、やはり一定層『紙のチケットを購入したい』という方がいることから、欠かせないと思っています。
また、オンラインフォームで予約していただき、当日現金払いしていただく方法ですと、親子向けのコンサートの場合、当日お子さんの体調が悪くなった時にはキャンセルがしやすいというお客様へのメリットがあります。
一方で、一定数のキャンセルがあることを見込んで集客しておかないと、キャンセル待ちをされて諦めた方もいる場合は、本来来場出来るはずだった方が来場できないことになります。
teketでの購入については、事前にお金をお支払いいただくことで収入を担保できるメリットがある一方で、teketの利用手数料がかかることが最大のデメリットでしょうか。
ただ、今後ますますチケットレスの方向性に進んでいくはすですし、福知山音楽堂が少人数運営で行うという方針を変えるつもりはありません。
そのため、これからもより良い方法を模索しながら、2024年のオープンまでには答えを出したいと考えています。
また、第1回目のアートであそぼうでは、15名の方の当日キャンセルがあったことから、親子向けのクリスマスコンサートはteketでチケットを販売し、事前にお金をいただくことにしました。
ちなみに、電話対応はIvryというサービスを使っています。
複数人で管理出来るほか、対応出来ない時間には自動音声ガイダンスを流すことが出来ます。
また、LINEやSlcakなどとも連携出来るのでとても便利です。
公演で起こることが想像出来るようなチラシにする
子ども向け公演のチラシを作っている時に、色んな公演チラシを改めて見て『どんな内容なのかイマイチ分からないチラシが多いな・・』と思いました。
その場所に行って一体どんな体験が出来るのかが想像出来ないと、足を運んでもらうのはなかなか難しいはずです。
例えばディズニーランドやUSJ、そして話題の美術展や話題のカフェなどの存在を知る際に、SNSが情報源になっていることが多いですよね。
それは写真が撮れる=記録に残せてシェア出来る仕組みがあり、それを見て興味を持つ人が増えるわけです。
また、基本的にクラシックコンサートにはいつでも写真を撮っても良いという仕組みがありません。
最近はカーテンコールの際の撮影が可能な音楽ホールも出てきましたが、そもそも公演に出かけた際に写真に残せるものが少ないのです。
そのため、なるべくチラシは公演に行った際に起こることが分かるようにしたいと考え、下記のチラシでは「一緒に歌おう」「手拍子で参加」「見て楽しめる」などの説明を入れています。
また、お客様からのリクエストにあった「対象年齢を明記してほしい」というご意見にお答えして明記するようにしています。
他にも、終演予定時間を明記することで、前後の予定を立てやすいようにしています。
運営スタッフについて
現在企画・制作は基本的に私が1人で行っていて、公演当日はステージマネージャー1人、受付2人の3人体制で行なっています。
受付は仕切れる人を1人置き、もう1人はボランティアでやっていただいています。
ボランティアで来ていただく方には、無料で受付業務をお手伝いいただく代わりに、公演を鑑賞していただくことが出来ます。
なお、福知山音楽堂がオープンした際には、知識と経験のあるスタッフが常駐し、気軽に企画の相談なども行えるようにしたいと考えています。
福知山音楽堂は、福知山の近隣地域にも影響を与える
未就学児から入場可能な「アートであそぼう」は福知山市だけでなく、舞鶴市、綾部市、朝来市、豊岡市など近隣の市町村から多くの方々が来られました。
私は、福知山音楽堂を建てること=福知山の方々にのみ寄与することだとは考えていません。
実際にさまざまな地域からご来場いただいているお客様がいらっしゃることでもそれは明らかですが、福知山音楽堂で公演を行うことは、京都府福知山市に住んでいる人たちだけでなく、近隣の市町村に住む方にも影響があることだと考えています。
これは、福知山と近隣地域のアクセスが良いことと、今開催した公演に類似したものがないためです。
ただ、これは他にも同じような公演が増えるとそこに需要を取られる可能性があるのですが、それを防ぐためには、やはり「公演に行く」という「体験」を他の体験と比べたときに選んでもらえるような、特別にする必要があると考えています。
その特別な体験が出来る場所にするためには、下記の要素が大切だと考えていますが、全ての条件を兼ね備えた既存の場所は福知山にはありません。
お客様が快適に公演に集中出来るような音響、ライティング、空調
お客様が良い時間を過ごせるようなお出迎え、ホール内での対応
客席からは見えない裏の動線
音楽ホールをつくると決めてから、あらゆるホールを周り、客席や舞台から様々な現状を見てきました。
ただ、今回のように設計・運営・企画を全て一括で行なった上で地域に拓けた形で公演を行う事例は極めて稀です。
もちろん私設ホールはそれらを全て行っていますが、そもそも地域に拓けた存在ではなく、クラシック愛好家に向けた公演を行なっていることが多いです。
地域の文化振興という概念を起点に公演を継続して行っていくことの大変さを改めて痛感していますが、それでもやはり人生をかけて取り組みたい大切にしたいものであると実感しています。
魅力ある企画で作られる音楽ホールのブランディング
福知山音楽堂では貸し館事業も行う予定ですが、オープンしてしばらくは主催事業のみ行う予定です。
主催事業はブランディングに関わる大切な部分。
開館プレイベントでは様々な試行錯誤をしながら、地域や社会に必要とされる公演を作っていきたいと思います。
私はホールを創るにあたり『上質な音楽を気軽に聴いていただける機会をつくりたい』という思いよりも『芸術文化に親しむ人を増やしたい』という気持ちが強いです。
また、年々高齢化していると言われているクラシック音楽ファン層を変えていくには、若い方々に足を運んでいただく必要があると考えています。
ただ、若い人と言ってもある程度自由にお金を使える年齢になる頃には音楽の好みもはっきりしてくるんですよね。
なので、その頃までにクラシックの公演に足を運んでもらえるような体験をしていないと、いくら「音楽ホールに足を運んでほしい」と思っても、難しいと思っています。
先日、未就学児入場OKの『アートであそぼう!』シリーズ「第2回はじめてのグランドピアノ」の予約が始まりましたが、第1回目に来てくださった方の申し込みがあり、とても嬉しく感じています。
これは1回目の公演を楽しんでいただけたからこその行動だと思うからです。
ちなみに、福知山音楽堂では特に親子向けの公演を大切にしたいと考えています。
皆さんが小さい頃に読んでもらった本を、大人になった時に子ども達に読み聞かせしたりしますよね?
そんな風に、子どもの頃にコンサートに行くという体験が日常になれば、それは循環していくはず。
また、公演に頻度が高いほど、行くこと事態のハードルが下がると思うからです。
例えば、パリに住んでいた時、私はルーブル美術館に毎月1回無料で入れる日があることに驚きました。
家庭の経済格差に関わらず、無料で鑑賞出来るのです。
もちろん、無料で入場出来るのは日頃の入場者数やルーブル美術館の運営を支えている人々の存在があるからですが、美術や音楽といった芸術に触れる機会を、もっと日常にしたいと考えています。
最適な主催者で公演を行う
福知山音楽堂は、建設は一般社団法人で行い、運営は株式会社で行う予定です。
そして、福知山音楽堂開館プレイベントの主催者を見ていただくと、株式会社Locatell、一般社団法人福知山芸術文化振興会、吉田音楽企画の3団体があることが分かるかと思います。
まず、それらの代表は全て私なのですが、下記のように団体の性質が違います。
株式会社Locatell:営利法人
一般社団法人福知山芸術文化振興会:非営利法人
吉田音楽企画:任意団体
文化系の補助金、助成金は営利法人よりも非営利法人に応募資格があることも多いことから、一般社団法人で申請するようにしています。
また、昨年始まった文化庁の助成金AFFには昨年の採択実績もあることから、任意団体で主催している事業があります。(今後は株式会社と社団法人に集約予定)
アンケートの実施、お客様のお声を聞く
ちなみに、開館プレイベントではアンケートを実施しており、ホームページではお客様からいただいたお声をご覧いただけるようになっています。
未就学児入場可能な「アートであそぼう」シリーズには下記のようなお声をいただきました。
開館プレイベントのアンケートを全て読みたい方はこちらからどうぞ。
お客様のお声を大切にしながら、これからもここでしか出来ない体験を生み出せるような公演をおこなっていきます。
公演レポートの重要性
福知山音楽堂では、公演レポートも毎回作成する予定です。
公演レポート=後パブ(事後広報)には、主に下記の意味があると考えています。
今回ご来場出来なかったが、公演の様子が気になるお客様への訴求
「アートであそぼう」はシリーズものなので、途中から興味を持ったお客様への訴求
福知山音楽堂で行われる公演内容のPR
特に、これから福知山音楽堂の建設費用としてご寄付を集めていくにあたり、また、さまざまな方々から支援をいただくにあたり、公演の様子を発信していくことはとても大切だと考えています。
そもそも、支援した団体がどのような活動をしているのか、社会においてどのような影響を生み出しているのかは、皆さん知りたいはずです。
公式写真をアップして使用可能に
福知山音楽堂の公演で撮影したクレジットつきの写真は、お客様が自由に使用できるようになっています。
この試みは、小劇場演劇の制作者を支援するサイト「fringe」の更新情報が発信されているアカウントのこちらの投稿を見て共感して実施しました。
これを実施するためには、終演後撮った写真を速やかに編集し、速やかに演奏者のチェックを受ける必要がありますね。
まだ利用してくださっている方を見つけたことはないのですが、今後活用してくださる方がいたら嬉しいなと思っています。
さいごに
こうしてまとめてみると、本当に公演開催には様々な要素が必要だなと改めて感じます。
もうすぐ2022年も終わろうとしていますが、2024年に福知山音楽堂がオープンすると思うと本当に時間がない!苦笑
福知山音楽堂プロジェクトを始めてから、かれこれ2年半が経とうとしてますが、まだ先だと思ってたタイミングがすぐそこまで来てるんだなとしみじみ感じています。
建設予定地である吉田家の敷地も、最後の稲刈りを終えました。
なお、今後予定している開館プレイベントはホームページでご確認ください。
さいごに。
公演を聴くためには、移動時間と公演時間が必要になりますよね。
お家から会場までの移動時間が30分としても、行き帰りで1時間。
公演時間が1時間半くらいだとすると、全てを合わせると公演を鑑賞するのに最低2時間半はかかることになります。
お客様に公演に来ていただけない理由は色々とあると思うのですが、他の予定や何らかの体験と天秤にかけられた際に、選んでもらえないと公演に足を運んでいただくことは出来ません。
あらゆる選択肢がある中で、福知山音楽堂の公演に行きたい!と思ってくださる方をどれくらい増やせるのかが鍵になると思っています。
開館プレイベントを行いながら、グランドピアノを選びに色んなメーカーを回ったり、音響に関する動きがあったり・・
本当にやることだらけですが、時間をかけて自分自身が大切にしたいものが見つかって、同じように想う人が協力してくださっていると感じます。
こうやって、1つ1つ納得して進められていることに感謝しながら、引き続き頑張っていきたいと思います。