『逃げ上手の若君』第8巻での目から鱗「妙な鉄球」と「松本奔り」~11月の逃げ若を撫でる会より~
11月4日の『逃げ上手の若君』コミックス第8巻の発売を受けて開催いたしました『逃げ若を撫でる会』(通称『撫で若』)ですが、雰囲気はとても和やかながら、作品やキャラクターへの愛は深く、作品内にちりばめられた史実や小ネタへの指摘が毎回鋭い……。
そこで、会だけでクローズにしてしまうのはもったいない!と個人的に思われた内容を、こちらでシェアしたいと思いました。
『逃げ上手の若君』の魅力の再発見、そして、やはり松井優征先生はスゴイという思いを新たにしていただくことができればと思います。
また、けっこう真面目で面白そうなオンラインイベントなんだなと思われた方は、ぜひとも次回以降ご参加くださいね(単行本発売月に開催しています)。
1、玄蕃が天狗に使用した「妙な鉄球」
「京の市で買った妙な鉄球をちょいちょいと改造してな」
〝そうなんだ~、ゲンバお手柄〟って済ませてしまえばそれまでのこの風間玄蕃のセリフをしっかり拾っていらした参加者の方がいらっしゃいました。
〝これって、元寇で使われた「てつはう」ですよね〟
ピンときました。この鉄球、第78話(「武器1335」)の伏線になってたんだ!と。
「武器拾って売るべ」と、真ん中のコマの男が話しています。このようにして、九州から京の市へと並べられたものだったのでしょう。
指摘くださった方は、〝諏訪には持ち込まれず、京だから手に入ったんですね〟ともおっしゃっていました。ーー本当に鋭いご指摘でした。
2、謎の戦術「松本奔《ばし》り」
「直進と見せた敵前急右折 貞宗流騎射術 松本奔り!!」
てつはうのご指摘と同じ方が教えてくださったのですが、最初は小笠原流の戦法のひとつなのかとか、いろいろ考えたり調べたりしたそうです(私も、なぜここで「松本」の地名が出てくるのかは気になりましたが、わかりませんでした)。
するとそのご参加者のご家族の方が、〝特定の地方の車の走らせ方のことじゃないのか?〟とお答えになったというのでネットで検索したら、確かに「松本走り」というワードが出てきたそうです。
Wikipedeiaをはじめ、自動車やドライブの専門サイト、果ては長野県のNHKのニュース番組(動画に加えて科学的分析まであります!)でも取り上げられています。
松本走りって何のこと?危険なご当地ルールも紹介 | カーナリズム (response.jp)
「松本走り」の疑問、お答えします。 - イブニング信州 - NHK
私は少し前に諏訪を訪れていたのですが、諏訪ではドライバーが歩行者のためにすぐに止まってくれました。
一緒にいらした長野ご出身(諏訪と伊那)のお二人が〝諏訪はとてもマナーがいいよね〟とお話していたのですが、〝長野は全体に車の運転は穏やかだけど、松本だけは違うね〟〝そうそう、右折の割り込みがすごい〟みたいなことを言って笑っていらしたのを思い出しました。
そこで、『逃げ上手の若君』の連載が始まる数年前、初めて仕事で松本を訪れた際、何となくこれまで行ったことのある長野のほかの地域と違ってギラギラしている印象だったのを思い出しました。松本城には武将隊もいましたし、お城と小笠原氏の解説を読んで、なかなかバイタリティのある殿様のいた所なんだなとぼんやり考えたりしました(笑)。
名古屋などの他の地域のご当地ルールも、車の運転ができない歩行者の私には恐怖ですが、「いずれも城下町だった都市でみられている運転である」(Wikipedeia)とあります。松本は道幅が狭く、また、右折矢印の信号が少なくて、後続車が詰まってしまうという事情があるようです。
松井先生は「松本走り」のネタをどこから仕入れたのかな、8巻で書いてあった諏訪出身のアシスタントさんからかな、などと思いをめぐらせてみましたが、作品中で戦術に使ってしまうなんて……8巻に限らず、見落としている史実や小ネタがたくさんある気がしました。
定期的にコミックスを読み返してみたいですし、「逃げ若を撫でる会」で今後もご参加者にいろいろと教えていただけたらいいなという思いを新たにしました。