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#SaveOurVoice - 京都 Live House nano(ライブハウス)「ライブハウスがエンタメの娯楽施設として認知してもらうための準備期間」

Speaker : mogura(京都 Live House nano)
Interview & Text : Nozomi Nobody

※このインタビューは2020年4月21日に収録したものです。

【新型コロナウイルスの影響】

ーー最初に自己紹介をお願いできますか?

京都ではじまったライブハウスnanoは今年の3月で丸16年、4月から17年目に突入しました。80人入ったらパンパンの小さなお店だけど、音の小さい弾き語りのアーティストからめちゃくちゃ音を鳴らすハードコアパンクのバンドまで出演するような、性別国籍ジャンル問わずいろんなミュージシャンが出てくれているノーボーダーなライブハウスです。

ーー新型コロナウイルスの影響を受けて営業に変化が出てきたのはいつ頃からですか?

2月の末までは規模の小さいイベントに関しては、消毒を徹底したりマスク着用を呼びかけたりして「すごく注意してやります」っていう姿勢だったんだけど、でも3月に入って大阪のライブハウスでクラスターが出て、お店にも「イベントを中止してくれませんか」っていう電話がかかってきたり、ライブハウスに対する偏ったイメージがどんどん広まってしまっているのを感じてて。もしここで無理やり営業を続けたら、近所の人たちとの関係性とか16年間築いて来たものがゼロになっちゃうなという気がして。3月は周年のイベントも入ってたから諦めたくない気持ちもあったけど、お店のオーナーも「ここは閉めるべきやと思うよ」っていう話をしてくれて、じゃあ閉めるかって。

それから少し落ち着いたタイミングで19日から営業を再開して、中止になったイベントももちろんあったけど、でも31日まではイベントをやった。

でもその時点で、大阪のpara-diceとFandangoが4月中は全部閉めるっていう発表をしてて、ありゃりゃと思って。感染拡大のきっかけになることをやってるのは事実やし、これをこのまま意地を張ってやるべきなのかどうなのかって思ってたときに京都の大学でクラスターが発生したっていうニュースが入ってきて。京都って小さい街にすごくたくさんの大学があるから、ライブハウスの客層の多くを大学生が占めてる。だからまた感染源になりかねないし、全国的にもどんどん感染が拡大していてオリンピック延期も発表されて、国全体としても感染拡大をどう防止するかっていう流れになってて、これはやっぱり閉めるべきやなぁって閉めて、今に至るって感じ。

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【現在の営業状況】

ーー今はオンラインでの通販と、ライブの配信がメインですか?

うん。色々考えたんやけど、ぱっと思いついたのがクラウドファンディングやって。だけど、それをする前に何かできることないかなって思ったんよね。もちろんそれをやってる人のことを否定はしないし、一気に金額が集まったのを見たりするとやっぱりみんなライブハウスのこと好きなんだなって嬉しくもなるんだけど、でも僕としてはクラウドファンディングは最後の手段やなって思ってて。不特定多数の人に「助けてくれ」って言うより先に、まずお店を知ってくれてる身近な人達に恥も外聞も捨てて「助けてくれ」って言おうと思った。

それで通販とライブ配信の投げ銭っていうのをまずやってみようって思って、デザインも出来るミュージシャン仲間に相談したらみんな「ぜひやらせてくれ」って協力してくれてすぐにグッズが揃ったのね。それで売り出してみたらけっこうみんな買ってくれた。配信も一緒で、予定してたイベントを配信ライブでやらせてくださいってお願いしたらみんな「ぜひ協力させてくれ」っていう感じやって。配信をやって投げ銭をしてくれはる、グッズを売って買ってくれはる。グッズも配信もこれからずっとクオリティーを上げ続けて、通常営業が再開したときに並行してできるようになってれば、nanoっていう小さなお店のビジネスの中でこんなに未来のある話はないっていうことを最初に思ったんやんか。

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nanoのオンラインショップで販売されているTシャツ。nanoに縁のあるアーティスト達がロゴデザインやイラストを手掛けている。

これがもし継続的に続けられればめっちゃでっかいチャンスやなって思って、nanoを知ってくれてる人の分母が増えたらその分母に対してnanoに出てくれてるミュージシャンの音楽を届けようとすることもできるわけで。今はやり始めやから結構忙しくて大変なんやけど、これを日常的にこなせるようになれば通常営業しながらも並行して(通販と配信を)続けることができるなと思って、だから今はそのための経験を必死で積んでるっていう感じかな。

ーーじゃぁ配信ライブも結構手応えがある?

そうやね。「うわーすご!」みたいな感じではないけど、でも例えば平日の夜に弾き語りのミュージシャンが配信でライブをやったら60~70人が見てくれる。それでちゃんといいものが届けられたらお客さんもしっかりお金を払ってくれはるので「こんなにレスポンスあるんだ」って。「やっても意味ないな、しんどいだけやなー」っていうのは一切なかった。だからこれはちょっと頑張って続けるべきやなと思ったね。配信に関しては。

2020年5月9日にnanoのYouTubeチャンネルで配信されたライブ映像

ーーそっかそっか。4月入ってからは本数もけっこうやってます?

何本かなぁ。まだ7~8本くらいじゃない?

ーーいいペースですね。

そうやね。体制整ってちゃんとできるようになってからって言うてる場合じゃないぞって思って。「とりあえず要るもん全部買うてまえー!」って必要な機材買い揃えて、けっこうお金使ったけど、でもそれを回収するためにめっちゃ頑張ろうと思えばモチベーションも下がることなかったし。なんかね、今“待ってる”のは絶対あかんと思って。俺って実は失敗するのが怖くって、思いついたアイデアのデメリットを先に考えてしまう人やって。でももうそれを捨てようって思って。みんなが新しいことをやって行動しようとしてるから「今失敗しても誰もなんも言わん」って思って。思い付いたアイデアはとにかくまず行動に移そう、そういうスピード感が勝負やなっていうことを確信した。通販も配信もいろいろ試しながら決めていって、そうしたらどっちもいい感じにレスポンスがあったから、これをどうブラッシュアップしてどう続けていくのかっていうところかな。

でもこれから「ライブハウスにお金を落とそうぜ」っていうムードも落ち着いてくると思うから、そうなったときにそれでもショップとしてちゃんと人が出入りできるような商品をいかに出すか。例えばみんな家の中で過ごすことが多いから家で使えるグッズ出したほうがいいんじゃないかとか、でもやっぱり家で過ごしてるだけでも好きな洋服を着て少しでも気分を上げようってする人もいるやろうし。そもそも俺がけっこう洋服が好きだから、そういう趣味が高じた感じもあるかも。通販屋やんね、完全に(笑)

ーーうん、お店ですよね(笑)じゃぁ当面はその感じで?

そうやね。ブッキングも7月、8月も一応普通に組んでて、でも「配信ライブになる可能性が高い」っていうことは伝えてて、「もし配信ライブになってもちゃんと満足できる環境を整えておくので、それでもいい人はぜひ出演を決めておいて下さい」って。

ーー配信をしている中で難しいこととか課題みたいなものってありますか?

やっぱり届ける音と映像のクオリティはもちろんやねんけど、一番意識してるのはタイムテーブルと入り時間の組み方。どうすれば人と人が会わずに済むかっていうことをめちゃくちゃ考えてる。もちろん換気・消毒は引き続き徹底してやるんだけど、人が集まってしまうと意味がないので「セッティング開始15分以前の入り厳禁」「ライブ終了後30分以上の滞在厳禁」「挨拶もいらないです」っていうことにして。そうしたらみんなそれに対してめっちゃ感謝してくれて。みんな今の状況の中でライブハウスでライブが出来ることを喜んでくれるし、感染の拡大防止と音楽を演奏してもらって届けることをちゃんと並行してやろうとしてるっていう、一番大事にしていることがちゃんと伝わって。だからこっちもやって良かったって思うな。

ーー京都の周りの箱は状況どうですか?

みんな同じようにドネーションのグッズを売ったりとか配信のライブを始めたりとかしてるけど、やっぱり家賃のことで管理会社から随分厳しいことを言われたっていう話も聞くし、みんなどこもどうにもなってない感じではあるとは思う。でもライブハウスの人ってやっぱりみんな元気だし、おもろいことを常に考えてて、それをどうやって実現するかっていうことを考えてるんやなーって、会って話したりするとめちゃくちゃ元気もらえたりはするね。でもみんな本当に大変やと思う。具体的なお金の話はさすがにせんけど、でもみんながそれぞれ地に足つけてなんとか生き残ろうとしてる意思みたいなのはすごく感じるから心強いよ。

【今後に向けて】

|ライブハウスをオープンな場にしていくための通販と配信|

ーー今後考えてるアイディアとかありますか?

配信に関しては、カメラの台数や機材を増やしてクオリティーを上げることと、通販に関してはSNS広告の使い方かな。SNS広告出すことで、自分と直接繋がりがない人にまでその広告が届くよね。そうするとショップとしての認知度が高くなっていくので、本当にいいものであればnanoを知らなくても洋服が好きな人が買ってくれることが増えていくから、その分母を増やすために何をするか。

通販においては、ライブハウスであるということをどうアピールしていくかっていうのが大切かなって思ってて、アパレルとして成立しうるとても良いもので、かつミュージシャンとのコラボレーションのグッズが出せたらとても良いのかもしれないなーと思ってて。きのうSupremeとMy Bloody Valentineのコラボの洋服が発売されてて。自分の中ではファッションと音楽って並行してあるべきやって思ってるところがあるから、ストリートカルチャーの代表的なブランドと激オルタナティブなバンドが一緒にやるっていうのがすごい理想的で、それを自分なりに実現させる方法を見つけて“音楽と洋服が好きな人間がやっているショップ”っていう個性が出せたら面白いなって思ってる。

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nanoのオンラインショップで販売されているグッズ。nanoに縁のあるアーティスト達がロゴデザインやイラストを手掛けている。

ーーそうですね。今クラウドファンディングにしても物販にしても、箱を知ってる人が応援したいっていう気持ちでお金を払っていることが多いと思うんですけど、それだけだと循環していかないというか、長い目で見たらどうしても厳しいなと思ってて。じゃあどうするかっていうことを考えたときに、そういう風に間口を広げていくためのアイディアはきっとすごく大事ですよね。

そうやんね。だから今はむしろそれを広げるチャンスなのかもしれないなと思ったりはするな。今回のことがあってライブハウスがいかにオープンな場所じゃなかったのかってことがわかってん。これまで頑張って発信してきたつもりだけど、ライブハウスの業務自体が全然伝わってなかったんだなって。実際、子供の先生に「お父さんの職種ってライブハウスって書いてありましたけどこれはなんですか。カラオケですか?」って聞かれたこととかもあるし。

ーーえーーーー、そうなんだ…!

それぐらいやっぱりみんなライブハウスっていう場所のことを知らなくて。だからオープンな場所として一般の人にライブハウスっていう存在を知ってもらうために、YouTubeっていうキャッチーなメディアを使って配信して見せていくとか、いろんな人が買いやすいグッズを作って売っていくっていうのはすごく大事やと思うし、むしろライブハウスっていうものが居酒屋とかカラオケとかに並べるエンタメの娯楽施設として認知してもらうための試練というか準備期間なんじゃないかなって、未来を見据えたものすごく前向きな考え方をするようにはしてるな。

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|営業再開に向けて|

全てが落ち着いたときっていうのがいつになるかわかんないし、もしかしたらこのままコロナウイルスと人間は付き合っていかないといけないものになるかもしれないし、でもとにかく、みんなの気持ちも不安も落ち着いて営業再開できてまた音楽を鳴らせる日のために生き残ってみせます。っていうところかな、今は。

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