#SaveOurVoice - 三軒茶屋 GrapeFruitMoon(ライブハウス)
Speaker : 河邉健吾(GrapeFruitMoon)
Interview & Text : Nozomi Nobody
※このインタビューは2020年4月9日(木)に収録したものです。
現在のお店の運営
ーー元気ですか?大変ですよね。
そうだね。もう無職ですよ(笑)4月半ばくらいには営業できるかなと思ってたけど、そうもいかないから。
ーーうん、長引きそうですよね。箱には毎日行ってるんですか?
いや、昼間ちょっと行くくらいでもうほとんど閉めてる。
ーー疲れてないですか?
全然動いてないから体は大丈夫なんだけど、昨日決まってたことが次の日には変わるし、いろんな段取りが全部崩れていくから精神的には大変だよね。
|今後の営業に対する危惧|
ーーお店はいつ頃まで普通に営業してたんですか?
普通に営業してたのは2月27日まで。結構早い段階でライブはやらないって決めたから3月からはほぼやってなかったんだけど、俺としては4月の半ばとか遅くても下旬くらいからはやれると思ってたんだよね。これが(緊急事態宣言が解除される予定の)5月6日で済むんだったらまだしも、4月、5月もダメ、6月もダメってなったら店を閉めなくちゃいけないと感じてる。
通常だったら数ヶ月前からイベントはある程度ブッキングしてないといけないけど、現状それが出来ないから、ライブ出来る状況になったとしても何もイベントを組めてないっていう可能性もあるし。だから営業再開しても、最初の数ヶ月は売り上げは半分くらいしかないっていう状態になると思うんだよね、多分。
|レストランとしての営業|
ーー3月はどういう感じでした?レストラン営業してましたよね。
そうだね、ライブはやらないけど、昼と夜と、レストランとして営業して。幸いうちはフードのメニューもあるし、お店の造りもレストランに近いからそれができたんだけど、でもやっぱり売上としては厳しかった。そもそもずっとライブばっかりやってきて、いきなり「一般のお客さん来てください」って言っても立地的にも奥まってるし。アーティストとか友達とか、近所の方々とか、そういう仲間が気遣って来てくれて「これで3月はなんとか乗り切れた」って思ったら緊急事態宣言が出て4月も白紙になった。4月はライブ1本も無い状態。
|ライブ配信の難しさ|
ーー配信ライブはどうですか?入ってる?
配信も入ってないね。3月は4~5本やったけど、配信は配信で難しいところがあって。単純にスマホ一台でやるとか簡単なシステムだったらすぐ出来るんだけど、やっぱりなるべくライブに近い形で見てもらおうって考えると、カメラマンを何人か手配したりとか、どうしても経費が発生する。だから投げ銭にしてもチケット制にしても、それをペイする必要が出てくるよね。結局それは普段のライブでも同じなんだけど。お店のスタッフだけで配信やろうとするとそれはそれでカメラとか機材を揃えるのに少なくとも20~30万かかりそうで、そこに資本投下するのも無理だったから。できればやりたい気持ちはあるけど、4月に決まってた配信も、結局バンドメンバーとかカメラマンが集まったりとか「人が集まる作業は無しにしよう」ってことになって中止したんだ。
ーーそこも難しいですよね。結局電車乗って来なきゃいけなかったりするし。
そうだね。みんな気遣ってくれて、うちでMV撮影してくれるっていう話なんかもあったんだけど、やっぱり「今は人が集まる行動をやめよう」っていうことで中止して。今はそれが正しい判断ではあるんだけど、やっぱり少人数でも人が集まれないっていうのはすごい厳しいところではある。
|オンラインショップの開設|
ーーオンラインショップはどうですか?
そもそもこのコロナ事情がなくてもこの春にはお店のオンラインショップはやりたいと思って準備してて、サイトとかTシャツのデザインとか大体考えてあったから、早いタイミングで公開出来たんだよね。4月入ってからのお店の売り上げは正直もう0円だから、3月にオンラインショップを始められたのは本当に良かったなと思う。その皆さんからのご支援で本当に助けられた。
GrapeFruitMoonではオンラインショップをオープンし、Tシャツやドリンク・フードチケットなどを販売している。
そういう意味で今はオンラインの物販頼りになってはいて、アーティストさん達も拡散して宣伝してくれてるから本当に助かってる。それで従業員の給料だけでも確保出来ればスタッフを離散させなくて済むから。もしそれも出来なくなってスタッフにも辞めてもらわなきゃいけなくなったら、結局営業再開したとしても何も出来ないし、店舗の契約とスタッフだけは絶対確保しないと。
GrapeFruitMoonが行なっている「Sing for the Moon プロジェクト」。お店の名前の由来にもなっているTom Waitsの「Grapefruit Moon」のカバー動画をハッシュタグと共にアップしてもらい、オンラインショップの宣伝・拡散をしてもらうという試み。
|クラウドファンディングと動画配信|
お店のオンラインショップだけじゃなくて、いわゆるクラウドファンディングサイトにも今、掲載の準備をしてる。クラウドファンディングサイトに載せればより沢山の人にも店の状況を知ってもらえる可能性があるし、やれるだけやろうと思ってて。
あとはもう少し落ち着いたらお店でライブMVを撮って、それをデジタルコンテンツとして販売して、その収益をカメラマンとかPA、RECエンジニアとかアーティストに分配、還元するプロジェクトを考えてる。今、僕らが売れるのはドリンクチケットとかTシャツとか音楽じゃないものが多いけど、その形だったらちゃんと「音楽を売る」っていう形に出来るし。デジタルならフィジカルほどコストもかからないから、アーティストやエンジニアとかみんなにとってちゃんと収益になればいいなって思ってて。それをこれから着手しようと思ってる。
4月18日より、CAMPFIREにて「三軒茶屋グレープフルーツムーン 緊急支援クラウドファンディング」がスタート。
資金繰りについて
ーー資金繰り大変ですよね。
緊急事態宣言が出ても、休業に対する国からの補償は正直望めない状態だと思う。だから期待してもしょうがないと思ってて。流石にスタッフももうお店には来させられないから仕事は全部バラしてて、今はランチとかレストランバーの営業も一切してないんだけど、でももう本当にギリギリなんで、来週週明けくらいからランチとUber Eatsだけでも動かそうと思ってる。売り上げ0円ていうのを避けないとやばいなと思ってて。補償がないから、何かしらやるしかないよね。
※このインタビューを収録した翌4月10日に、東京都は感染拡大防止協力金の創設を発表。4月15日に内容の詳細が発表され、4月22日から受付を開始し5月上旬から支給開始予定(4月20日現在)(参考:東京都産業労働局「感染拡大防止協力金」について)
ーースタッフはどうしてるんですか。自宅待機?
スタッフはテレワーク。自宅でも出来るような仕事をスタッフに頼んで、俺は人に会わないと出来ないような仕事とか、あとは店以外の仕事もあるからそれをやったりしてる。うちのスタッフでも小さい子供がいる家もあって、やっぱ外に出るの怖いって言ってて。俺個人はもちろん(ウイルスに)かかったら嫌だけど、正直コロナにかかって死ぬ確率よりもお店が出来なくなって社会人として死んでしまうっていう確率の方が高いから。やらざるをえないし動かざるを得ないよね、やっぱり。
ーー切実ですよね。
少しでも自分で体動かしてお金になるものをやっていかないと。例えば公庫(日本政策金融公庫)やセーフティネットの融資受けるにしても、ずっと融資を受け続けるわけにもいかないよね。それは借りるお金なんで、額が大きくなっていけば営業再開した後も実益がないことをずっとやり続けることになっちゃうから。このまま借金増やしてお店やるくらいなら「もうやめた方がいいんじゃないか」っていう人は出てくると思う。特に俺みたいな個人でやってる小さいライブハウスとかライブバーみたいなところは。
|日本政策金融公庫からの融資|
現状だと公庫の融資をかけてるところで、3月の半ばに申請したんだけど、ずっと連絡来なくて、確か3月24日にやっと電話が繋がって「何とかして下さい」って頼んでようやく4月16日に面談が決まって。だから(面談まで)丸1ヶ月かかってるんだけど、今は多分もっと混んでるからそれでもまだ早い方なんだよ。
ーー入金はいつ頃になるんですか?
書類申請の時に資金繰りが厳しいっていうことを伝えて、「いつ頃入金になりますか」と聞いたら、早ければ4月末には入金出来そうだと言ってた。それが通ればまずは危機を脱してちょっと安心出来ると思う。4月の資金繰りはやっぱり大変で、家賃と人件費をどうにか払わなきゃっていう状況だよね。
※4月16日に面談に行った際、審査に1週間、審査が通った場合でも入金までは約2週間かかり、5月中旬以降の入金になると言われたそう。
今後に向けて
ーー今必要だなと思うものとか、今後必要になるだろうなと思うものとかありますか。
政府からの補償が出ればそれが一番いいとは思うんだけど、今のところそれも期待出来ないと思うから、そう考えると営業再開した時にアーティストには「今はライブする時期」と思ってどんどんライブやってもらって、そこにお客さんもどんどん見に来てもらって、っていうことだろうね。やっぱりライブハウスはアーティストありきだしアーティストがいないと何も出来ないから、またやれるという暁にはみんなに協力してもらって盛り上げていけたらいいよね。
ーーアーティストもみんなライブ飛んじゃって今は何も出来ないし、本当にうずうずしてると思いますよ。早くやりたいですよね。
|営業再開に向けて|
本当に折れそうにはなるけど、スタッフ一丸でまたやれる日にむけて前を向いてやれることをやるだけだよね。またみんなで楽しい時間を作れるように、まずはお店を潰さない、潰すわけにはいかないっていうのが本当に第一。それだけをなんとか守れるように、今は必死にやるしかないって思ってる。
《GrapeFruitMoonを応援して頂いている皆様へ》
クラウドファンディングへ本当に多くのご支援、応援メッセージ頂き本当にありがとうございます。
出演者さん、アーティストさんからの情報拡散のご協力も本当に沢山頂いています。スタッフ一同励みとして頑張れています。
店は今までで最も苦境の中にありますが、この仕事をしていて良かった。間違いがなかった。と実感する毎日です。1日も早くこの事態が終息することを願っています。今後ともGrapeFruitMoonを何卒宜しくお願い致します。
河邉健吾(GrapeFruitMoon)
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