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#SaveOurVoice - 代官山 晴れたら空に豆まいて(ライブハウス)【後編】「人間にとって必要なものすごく重要なことをやってきていて、それを続ける方法というのは必ずある」

Speaker : 松崎信太郎(代官山 晴れたら空に豆まいて)
Interview & Text : Nozomi Nobody

※このインタビューは2020年5月6日に収録したものです。

▶︎前編はこちら

配信ライブでいかに一体感をつくるか

ーー今はライブが生で楽しめないという状況の中で、さっきも仰っていたように配信ライブではやっぱりどうしても失われてしまうものがあるということを考えたときに今後試してみたいこととか、そこを補うためのアイディアとか、何か考えてらっしゃることはありますか?

|聞き手側の音環境を整える|

今回やってみてわかったのが、聞き手側の音環境っていうのがやっぱりすごく重要ですよね。ラップトップの小さいスピーカーから聴いていたのを、イヤフォンを着けるだけで全然変わるんですよね。あとは部屋を暗くして集中できる環境を作るとか。そういう「ライブを10倍楽しめる方法」みたいなものを作ることもすごく重要だなと思いました。あと、発信する側の音作りもやっぱりライブの音作りだと出音ばっかり大きくなっちゃって、バランスが全然違うんですよね。そういう技術的な部分はこれから色々試したいなと思ってます。

|「ライブを一緒に作ってるんだ」という感覚|

もうひとつはやっぱり、ライブって同じ空間にいることで一瞬目があったりとか、終わった後、喋ったりとか、リアルなやりとりがあるじゃないですか。放送だけを観ていてもやっぱりちょっと疎外感があるというか、いまいち参加している感覚がない。だから例えば、大きな画面を使ってのチャットなのか、みんなで共有できるZoom画面なのか、そういう臨場感のあるコンタクトの時間をライブの中に作って補っていくと一体感が生まれると思うんですよね。あとはライブ後のオンラインでの打ち上げ。終わった後にその日のライブのことを話したりするのって面白いじゃないですか。ミュージシャンの方もお客さんもみんなでそれができると「今日一日一緒に作ったね」っていう感覚が生まれてより楽しくなるし、本当のライブにちょっと近づく気がしますよね。

あとは演出としてカメラが複数台あれば普段ちょっと見えないピアノの手元とか、指使いみたいなものだったり表情だったりっていうものが配信ならではの見え方になると思うので、そこはいろいろやってみてっていうところですよね。今後色んな技術とか機材が出てきて進歩はしていくと思うのでそれをうまく活用していけばいいと思うんだけれど、一番大事なのは「ライブを一緒に作ってるんだ」という感覚。どんなにカッコよく撮っても一体感がなければあんまり面白くなくなっちゃうから。「やっぱりライブってすごいな」っていうところから考えていけるともうちょっと見えてくるのかなっていう感じはしてます。

5月26日に晴れ豆より配信された知久寿焼ちんどん楽団の無観客ライブ。無料での視聴も可能だが、LivePocketで一口2,000円の観覧料金を募っている。アーカイブの公開は6月4日まで。

乱立するライブハウスのクラウドファンディング

|みんな一様に苦しい|

ーー今いろんな箱がクラウドファンディングをやっていて、晴れたら空に豆まいて(以下晴れ豆)さんのように素晴らしい結果が出ているお店もある一方で、やっぱりそれを出来るところと出来ないところというのがあって、例えば地方の小さなライブバーのようなところとか、全体で見るとその辺りが本当に難しいなと思ってるんですけど…

うーん。例えば晴れ豆について言うと、これはちょっとデリケートな話なんですけど、毎月の固定費と変動費で700万かかるんですよ。あんな小っちゃいところでちょっと尋常じゃないじゃないですか。出ていただいてる方達には名前が通ってる方もいらっしゃるし、「一等地の大成功してる店」っていう風に思われることが多いんですけど、中身は全然違うわけです。今は700万からいろいろ削って、それでも400万近くかかるんですよ。っていうことは3月からの3ヶ月でもうすでに1200万くらいの赤字なんですよね。プラスそれまでの借り入れを考えると5月末までで2000万くらい。となると、クラウドファンディングで頂いた800万円を超える金額というのは、本当に有難すぎるお話しなんだけれども、でも金額だけで考えるとそれでも厳しいわけですよね。

多分色んな条件によって違うと思うんですよね。例えばクラウドファンディングで集まった金額が少なくても、大家さんが親切で家賃を交渉出来れば赤字を抱えることは避けられる場合もあるし、でもうちのように沢山支援を頂いても固定費がかかっていれば実は赤字だったり、一言では言えないというか、みんな多分一様に苦しいんじゃないかと思うんですよね。

晴れ豆が行っているクラウドファンディング。6月2日現在、1000万円を超える支援が寄せられている。

|金額以上のものを頂いている|

ただクラウドファンディングに関しては、気持ちの部分でとんでもない勇気をもらってるんですよ、毎日。泣いちゃいますよね、本当に。一件一件のコメントもそうですし、SNSで拡散していただくときのちょっとした一言とか、これは本当に金額以上のものを頂いているので、それによって私たちが執着を捨ててマインドセットをゼロにして、次の方向性が見えたときに底力を発揮して全力でその先にあるフィールドを提供させていただくっていうことをやりたいと思うんですよね。そしてそれは全国のライブハウスがみんな絶対できるはずなんですよ。それぞれのカルチャーを持っているから。人間にとって必要なものすごく重要なことをやってきていて、それを続ける方法というのは必ずある。それがみんな叶ったときにこの世の中はもっと良くなっていくんだろうなっていう気はしますよね。

今後に向けて

|奪い合いの資本主義から分かち合いの資本主義に変わる節目|

本当にわからないことがすごく多いんだけど、何がやりたいかを私たちは今この期間に炙り出してる途中で、それがはっきりしたときに多分いろんなことが大きく動いていくと思うので、そのときに色んな執着を捨てようと思ってるんですよね。それぞれのライブハウスってこれまでバラバラだったけど、今、前例のないものをみんなせーので作りはじめて、システムとか見つけたものは大いにシェアしていったらいいと思うし、奪い合いの資本主義から分かち合いの資本主義に変わる節目だと思うので、みんなで刺激的な世界を切り開いていきたいなと思いますよね。

|すごく楽しい世界があるっていうことを発信したい|

今、那賀町っていう限界集落と半々で暮らしていて、そこでは7部屋くらいある一軒家借りてるんですけれど、家賃が1万5千円くらいなんですよ。野菜は大体いただけるし自分でも作れるし、水はいいし、タンパク質は魚を釣ったり時々はスーパーで買ったり、そうするとお金を使う機会ってほとんどないんですよ。都市部の暮らしのサイクルとか考え方ってこれから終わっていくと思うので、新しい扉が次々開いていくと思うんですよね。「これを抜け出せば全然大丈夫、安心してやっていきましょう」「結構楽しいよ」っていうのはすごく思いますね。不安に苛まれている人はいっぱいいると思うけど、絶対大丈夫だからって、それも証明していきたい。すごく楽しい世界があるっていうことを発信したいですね。

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