昭島駅北側開発巡り、市議会で各会派が代表質問 市側は「大変危惧」
2月28日に開会した昭島市議会の2022年第1回定例会は2日、各会派による代表質問が行われた。これまでこのnoteで取り上げてきた、日本GLPが開発を検討している昭島駅北側(昭和の森ゴルフコースやフォレスト・イン昭和館などの敷地)開発についても、取り上げられた。
市側は「周辺環境への大きな影響が生じる大規模開発となる」「交通量の増加に伴う諸問題や緑量の減少について、本市としても大変危惧をしている」と懸念を示した。その上で、今後、事業者側が実施する、東京都環境影響評価条例に基づく手続き等について、「関係機関と連携して対応する」と述べた。
質問1「多くの市民の皆さまは不安抱えている」
まず最初の代表質問に立ったのは自由民主党昭島市議団の髙橋誠議員である。髙橋氏の昭島駅北側開発に関する質問は以下の通りだ。
「先般、当該地区における開発について企業側より市民向けの説明会があった。ここで明らかになったのは、現在の民間ゴルフコース、ゴルフ練習場、ホテルが所在する地域において、敷地面積約40万平方メートルに物流施設6棟、同じく約18万平方メートルにデータセンター9棟の建設をはじめとする非常に大きな開発の計画だ。民間企業の事業活動であることから行政の立場でできることは限られていることは承知している。企業側の説明では開発に当たっては、昭島市の各種計画を当該地区の上位計画として整理し、開かれた水と緑の環境創出などをコンセプトに開発を進めるとのことだ。しかし、多くの市民の皆さまは、このようなあまりにも広大な地域で大規模な開発が行われれば、景観はもとより騒音や交通渋滞などにより生活環境が、そして、水と緑に恵まれた自然環境が悪化するのではないかとの不安を抱えているものと受け止めている。この昭島駅北側の大規模開発に対して昭島市としてどのように対応していくのか」
市長答弁「交通量増・緑の減少は大変危惧」
これに対する臼井伸介市長の答弁は以下の通りだ。
「当該開発事業については、交通量の増加に伴う諸問題や緑量の減少について、本市としても大変危惧をしているところである。周辺環境への大きな影響が生じる大規模開発となることから、事業者には市民に対し、早期に説明を行うとともに市民の思いをしっかりと受け止めた開発となるよう、また、本市の総合基本計画をはじめ、各分野別計画の尊重をしっかり求めているところである。そうした中、過日、事業者による事業概要の説明会が開催された。今後、東京都環境影響評価条例に基づく手続き等において、関係機関とも連携し、対応していきたいと思っている。市側にも「市長への手紙」にも担当部局にも、いろいろなご意見がきているので、都度事業者にこういうことがあるよ、こういうのがあるよ、というのは言っているところではあるので、よろしくご理解をいただきたいと思う」
質問2「開発は昭島市総合基本計画などと乖離」
代表質問では、みらいネットワークの林まい子議員も昭島駅北側の開発の質問をした。
「昭島駅北口で気候温暖化対策や環境行政と逆行する大規模開発が見込まれているが、当該地は市の計画上で水と緑を守り育てるゾーンに位置付けられており、環境行政を考えるに当たり非常に重要なエリアだ。昨年6月の一般質問で取り上げた『GLP昭島プロジェクト』について、先月市民向け説明会でその概要が明らかになったが、近隣の住環境が大きく変化する。住民と対話し、環境と共生するため考え得るあらゆる対策を取った上で初めて開発に臨むべきであり、市は市民の生活を守るために事業者に対してできる限りの働き掛けをするべきである。また事業者における気候正義の視点が欠かせないはずだ。持続可能なまちの実現を目指すためにも市から事業者に対して訴えていく必要があること、また同様の開発があったときのためにも今後市の各種制限に気候正義の視点を含めるべきことを指摘した上で質問をする。
まずGLP昭島プロジェクトについて、説明会で上がった市民意見をどうとらえ、市としてどのような対応をするのか決意を聞かせてほしい。特に市民意見を丁寧に聞くために協議会を設けるよう強く働き掛けるべきだが、お考えは。
また、計画上は交通量の激増が確実である。関係省庁に交通渋滞対策だけでなく、拡幅等渋滞対策や周辺道路の対策を働き掛ける考えがあるか、全ての物流関係車両のルートを大型車両のルートに限定したり、はなみずき通りは市民の通りとして提供してもらい、物流の車は通らないことを申し入れる考えがあるか、聞かせてほしい。また緑地保全は気候変動対策、災害対策、地下水保全等と密接な関係がある。当地には植物や生き物の豊富な地域も含まれ、生物多様性の観点からも保全は重要である。
昨年6月の一般質問の答弁にあった立川基地跡地と同様に、緑化率を都条例よりプラスして設ける対策について現在の考えを聞かせてほしい。また都市計画を市民が検証、見直すためのまちづくり条例が必要であり、考えを聞かせてほしい。この開発で総合基本計画をはじめとする各種計画との乖離が既に明確だ。関連部分について見直しの考えがあるのか聞かせてほしい。特に緑率については環境基本計画上、維持を掲げているが、今後昭島駅北口全般の開発や立川基地跡地の開発に伴い緑率が大幅に減少する。方策を聞かせてほしい。下水道の負荷を軽減するため計画的な雨水貯留浸透を強く働き掛けることについて市の考えを聞かせてほしい」
※補足 林議員が指摘した、はなみずき通りと呼ばれる通りは以下2つの図のオレンジと緑の太枠で囲った部分のようである。
市長答弁「市中心拠点の開発であり慎重に協議」
林議員に対する臼井伸介市長の答弁は以下の通りだ。
「開発事業者に対しては、当初より、市民意見の計画への反映のために概要説明会の早期開催を強く求めてきたところだ。そうした中、過日説明会が開催された。市民と事業者の協働の場においては現在、開発事業者において前向きに検討していると聞いているところだ。説明会の参加者からの意見は、緑の減少や周辺環境への悪化に関わるご心配やゴルフ場、ホテルの存続に関すること、市民との協議の場の設置など多岐にわたるものだったと受け止めている。林議員からも交通渋滞、緑化率、緑率への影響など質問を頂戴しているが、本市としては東京都環境影響評価条例に基づく手続き等において関係機関と連携して対応していきたいと考えているところである。
また本事業のほか、昭島駅北側においては複数の事業者による開発が検討されている。良好なまちづくりを進められてきた本市の中心拠点における開発事業となるとから、複数検討されている事業は総括的にとらえ、開発事業者と慎重に協議を行っていく。なお、大規模開発を機にまちづくり条例を制定することや総合基本計画をはじめとする分野別計画を見直すことは考えていない。ただ、いまこういった議会でこういう質問があるということを含めて、これからも委員会があり、こういう質問がきていることはしっかり伝えていきたい」
質問3『水と緑が育むふるさと昭島』をどう実現
この日最後の代表質問には、日本共産党昭島市議団の荒井啓行議員が立った。昭島駅北側開発の質問は以下の通りである。
「市長は施政方針で、今年は(市長として)初めてとりまとめた昭島市総合基本計画の幕開けとなる大変重要な年になる。第4次計画から続く、『人間尊重』と『環境との共生』のまちづくりの理念のもと、安全で利便性に富んだ都市基盤と、水と緑の自然環境が調和した快適で暮らしやすい住宅都市としての地域特性を、次世代に引き継いでいきたいと語り、新たな総合基本計画に掲げる将来都市像『水と緑が育むふるさと昭島』の実現と、多様性を認め合える地域社会の形成を目指し、魅力ある、楽しい昭島の未来に向け持てる力を傾注していく、と語った」
「昭島市総合基本計画とも関連から、昭島のまちづくりに今後大きく影響してくるであろう、昭和飛行機工業株式会社が売却した跡地開発について、昭島市の基本的な立場と市民の声をどのように把握し、受け止め、将来都市像『水と緑が育むふるさと昭島』を実現していくのか、対処していくのか、所見を問うものである。なお説明会が4回開かれたが、会場で発言した市民の声、意見、要望を、市当局は把握しているのか。どのような意見、要望が出されていたのか。説明会には市長、副市長をはじめ幹部職員は参加したのか。答弁を求める。さらに、昭島駅北口にかかる『昭和飛行機都市開発』が進める計画だが、開発計画をどのように考えているのか、どのように対処するのか、答弁を求める」
市長答弁「事業者に説明会の報告書提出求める」
荒井議員に対する臼井伸介市長の答弁は以下の通りである。
「昭島駅北側開発については、周辺環境への影響を及ぼしかねない大規模開発事業であることから、事業者に対しては、当初より市民に対する早期の説明および市民の意見の計画への反映を求めており、こうした中、過日、3日間にわたり事業者による事業概要の説明会が開催されたところである。
説明会への市の幹部職員の参加については、各々の判断に委ねたが、私も含め、多くの職員が説明会の内容を確認したと認識しているところである。また、事業者へは説明会での質疑などをまとめた報告書の提出を求めており、まずはその速報として参加者数および主な意見等の報告を受けた。
参加者からの意見は、緑の減少や周辺環境の悪化に関わるご心配、あるいはゴルフ場、ホテルの存続に関すること、また市民との協働の場の設置など多岐にわたるものがあったと受け止めている。本市としては東京都の環境影響評価条例に基づく手続き等において、関係機関と連携し、対応していきたいと考えている。
また、本事業のほか昭島駅北側においては複数の事業者による開発が検討されている。良好なまちづくりが進められてきた本市の中心拠点における開発事業となることから、複数検討されている事業を総括的にとらえて開発事業者と慎重に協議を行っていく」
■総合基本計画との整合性はいかに
現在2期目の臼井市長は、自身が市長に就任してから初めて策定した第5次昭島市総合基本計画が、4月に始まることから、2022年は重要な年と位置付けた。その年に計画概要が明らかにされたGLP昭島プロジェクト。各会派の代表質問で取り上げられて「あまりにも広大な地域での大規模な開発」「水と緑に恵まれた自然環境が悪化するのではないか」「気候温暖化対策や環境行政と逆行する大規模開発」「将来都市像『水と緑が育むふるさと昭島』をどう実現していくのか」といった質問が飛んだ。
いずれも住民の不安を吸い上げた質問であり、住民向け説明会で各人が述べた意見の集約ともいえるかもしれない。臼井市長は「『水と緑が育むふるさと昭島』をどう実現していくのか」という荒井議員の質問などには明確には答えていない。ただ、林議員の「総合基本計画をはじめとする各種計画との乖離が既に明確だ。関連部分について見直しの考えがあるのか」との質問に対して、「総合基本計画をはじめとする分野別計画を見直すことは考えていない」と明確に述べている。
昭島市総合基本計画の理念である『人間尊重』と『環境との共生』、そして昭島市の将来都市像の『水と緑が育むふるさと昭島』を実現する上で、昭島駅北側開発案件は、市民や学識経験者、行政がまとめ、市議会で審議した「市民の市民による市民のための計画」である昭島市総合基本計画と整合性を取ることができるのだろうか。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?