サウナの妖精
「いやあ暑いね!」
ゴールドジムの更衣室。長渕剛似のムキムキのおじさんがやおら語りかけてきた。面識はない。ほかの誰かに話しているのかと思ったが、誰もいない。うん。おれだな。
「キミはサウナに入るのか?」続けて語りかける長渕おじさん。
「いや、ぼくサウナには入らないんですよ」
「ここはゴールドの中で一番暑いかもしれん!!」聞いちゃいない。胸筋をピクピクさせながらニカッと言い切った。そうか。ここはゴールドで一番暑いんだ。
何かコメントしようとしたところで、別のひとがぼくと長渕さんの間のロッカーで身支度を始めたので、話はここでなんとなく終わった。
「失礼します!!」
長渕おじさんが空手家のような気合の入った挨拶をぼくに投げ、通り過ぎる。
「お疲れさまです!」つられて今日イチの声で挨拶した。いや誰なんですか?
「あ」ふと思い当たった。妖精だな。
最近今更ながらサウナに興味を持ったんだ。まだ腰を上げれていなかった。そんな煮え切らないボーイの背中を押しに来たんだな、とひとり合点。
みなさん、サウナの妖精は長渕剛似のムキムキおじさんです。