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夢を買う

皆さんは、「まんが日本むかし話」をご存知だろうか。1995 年まで放送されて
いたアニメ番組で、内容はタイトル通り、日本の昔話である。その中には「花さ
かじいさん」とか「三枚のおふだ」のようなメジャーなものもあれば、聞いたこと
のないような話も収録されている。物語自体のジャンルも、心あたたまるお話
や伝記、ホラーっぽいものなど様々だ。
昔話というのは昔から語り継がれているだけのことはあって、大切な示唆を含
んでいるものが多い。だからこそ子供に見せるべきなのだが、大人にもちゃん
と大事なことを教えてくれるのだ。
私はこのまんが日本むかし話の中で、とても好きな話がある。タイトルは「夢を
買う」。あらすじは以下の通りである。
"落ちぶれた商人と絵描きが旅の途中で大きな木の下で出会う。商人が身の
上話をしている間、絵描きはうたたねして、不思議な夢を見た。山を越えて長
者の住む屋敷の庭に白い花の咲く椿の木があり、そのそばに一匹のあぶがい
て、その木の根を掘ると黄金がたくさん入った瓶がでてきたという夢だった。商
人は絵描きにその夢を買うと言って、お金を渡した。商人は夢の通りの屋敷に
たどり着くが、椿の木はたくさんあったが、花は咲いていない。そこで商人はそ
の屋敷に住み込みで働くことにした。ようやく春になり、椿の花が咲いたが、す
べて赤い花だった。次の年まで待つと赤い花の中に一本だけ白い花が咲いて
いる椿の木があり、一匹のあぶが飛んでいた。その根元を掘ると夢の通りに黄
金の入った壺がでてきた。商人はそのお金を屋敷の主人と半分ずつわけ、そ
れを元に商売をして大成功した。"
一見ラッキーな商人の物語でしかないのだが、冒頭に落ちぶれた商人と書か
れているのに注目してほしい。彼はこれまでに、数多の商売に失敗してきてい
る。それでいて夢を買う!などと突拍子もないことを言うので、そんなんだから
失敗するんだよ、とも言われている。しかしそれに対して、「それで結構」「夢を
見るのは楽しいものです」と言い、お礼を言って別れる。
こうして夢を買った商人だが、そんなに簡単に財宝を手に入れることはできな
かった。あらすじだとすぐに手に入れたように見えるが、彼は財宝の夢を信じ続
け、椿が見つからない何年もの時間を、屋敷の使用人として働いて過ごした。
ある時天啓のように椿を見つけ、財宝を見つけるのだが、その時は何ともたま
らない表情を見せてくれる。痛快としか言いようがない。
夢を見ること自体を楽しむ商人のスタンスが良いなあと思ったのだ。それが報
われるのも嬉しい。何だか、勇気をくれる物語である。

すぐに生きる意味が分からなくなる毎日だけど、とりあえず夢を持って生きよ
〜。

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