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1-1. サウジのお店が昼間に閉店する理由

【3行まとめ】
・サウジの国教はイスラム教。礼拝の時間にお店が閉まるなど、日常生活に様々な影響。また、アルコールと豚肉が厳格に禁止されている。イスラムの教えを理解するには、7世紀当時を想像するとわかりやすい。

(写真は、イスラム教のお祈りの時間に閉店しているレストランの看板。西部の港町ジェッダにて。) 

 サウジアラビアと聞いて、皆さんは何を想像されるでしょうか。「アラブの石油王」、「砂漠」など、ぼんやりとしたイメージしかないかもしれません。

 サウジアラビアという国を理解する上で欠かせないのがイスラム教です。サウジアラビアは、イスラム教を国教として定めており、日常生活の様々な場面にその影響がでています。

・お祈りの時間は最優先
 イスラム教において、お祈り(サラート)は、信者の最も重要な義務の一つとされており、信者は1日に5回、メッカの方角に向かってお祈りを行います。

 サウジでは、この礼拝の義務がとても重要視されており、1日5回のお祈りの時間の間は、昼間であってもお店を一度閉めなければなりません。サウジで生活をするには、このお祈りの時間と上手に付き合う必要があります。

 イスラム教徒ではない者からすると、一日に何度もお店が閉まってしまうのは不便で仕方がないのですが、イスラム教徒にとっては、神聖で重要な時間となっています。

 サウジ人にお祈りの効果について聞くと、「気分がリフレッシュされるし、心も安らぐ」と言っていました。日本人が神社やお寺に行って、お参りをするようなものなのでしょう。

写真:レストランが開くのを待つ人達。空腹で気が立っており、ドアをガンガン叩いて、お店を催促するのが日常。西部の港町、ジェッダにて。

写真:お祈りの時間で一度閉店しても、大きなお店であれば追い出されることはありません。忙しいお母さんたちは、閉まりかけたシャッターに駆け込みます。首都リヤドのショッピングモールにて。

・イスラム教徒は綺麗好き? お祈りの作法
 イスラム教のお祈りの作法は、いろいろなことが定められていますが、特徴的なのは、身の清め方です。お祈りの前に 決められた順序で、両手、口、両足を洗わなければなりません。

 この洗浄は、お祈りの前だけでなく、トイレに行った後や食事の前も欠かさず行われています。何も事情を知らずにいると、サウジ人は潔癖症なのではないかと誤解してしまいます。

 手や口だけでなく、足も洗わなければいけないので、なかなか手間がかかります。足洗い場がないところでは、足の洗浄を省略することもできますが、なかには、洗面台に足をつっこんで洗浄する人もいます。

 イスラム教が生まれた7世紀当時の衛生状況を想像すると、食事の前やトイレの後に、手洗い・うがいを徹底するというのは、感染症を防ぐために非常に有効といえるでしょう。

 このように、イスラム教の教えを考える際には、「7世紀はどんな状況だったか」と想像すると、腹に落ちる教義が多いように感じます。ちなみに7世紀というのは、日本では奈良時代、聖徳太子の時代です。

・サウジの休日は金曜と土曜
 さて、お祈りの中で、最も重要視されているのが、金曜日のお祈りです。イスラム教において、金曜日は聖なる曜日とされているためです。

 普段のお祈りは、職場の一室などで済ませていたとしても、少なくとも金曜日のお祈りだけは、近所のモスク(イスラム教の礼拝堂)に行ってお祈りをする必要があります。

 こうした金曜日のお祈りを忠実に遂行するため、サウジの休日は金曜と土曜となっています。金曜のお祈りの後は、家族や親族で集まって食事をすることが多いようです。

 余談ですが、一週間の仕事は日曜日に始まって、木曜日に終わるため、在住日本人の間では、木曜日は「華金」ならぬ「華木」と呼ばれています。ただし、金曜であっても、日本の本社からの問い合わせがあることもあるので、その点は駐在員泣かせな仕組みとなっています。

・アルコールと豚肉は一切禁止
 イスラム教の影響で、サウジにはアルコールと豚肉を一切持ち込むことができません。入国審査の際にこれらを持っていることが判明した場合、没収や罰金、国外追放など厳しい処罰を受けることになります。

 ただし、アルコールと豚肉は、それぞれ禁止されているニュアンスが異なります。アルコールは「飲みたいという誘惑があるけれども飲んではだめ」、豚肉は「汚らしくて食べるなんてとんでもない」という感覚の差があります。

 アルコールが禁止されているのは、アルコールによって信仰がおろそかになるためとされています 。

 他方、豚肉が禁止されているのは、コーラン(イスラム教の聖典)において、豚肉は死肉と並んでけがらわしいものと定められているためです 。

 このアルコールと豚肉の規制を考える際も、7世紀当時の状況を想像してみると理解の助けになります。

 当時、アラビア半島には、アルコール中毒が広まって、治安が悪化していました。また、豚肉はよく火を通さないと食中毒になりやすいので、豚肉を通じた食中毒が蔓延していたとの説があります。

 今もなお、これらを一律に禁止することが合理的かどうかは議論の残るところですが、7世紀当時だけを考えると、これらは合理的な規制だったと言えるかもしれません。

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