グルと過ごせば…(4)
日本について
サダナンダ先生は、福島までの車中で、様々なビジョンを語りながら日本についても、こんなことを語り始めました。
「日本には、血液を浄化するプログラムが必要だ。」
「アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患ですね?」
「そうだ。とても特徴的だ。そのためには人々を一箇所に宿泊させて、治療を行い、夜は教育をして、午後は料理を作って…という具合に..」
「ああ、教育キャンプですね….まさに、私たちも今それをしたいと思っていました。そのために、福島にお連れするのですよ。ここの温泉施設で私たちは、一週間くらいのリトリートをやりたいのです。」
「わかった。人々の役に立つように、実践的で、臨床経験豊富な、若い医師を1人送ろう。ここの気候や食べ物をわかってこそ初めて、最適な治療ができる。そのためには2〜3か月はかかる。最低でも1年くらい日本にすまわせれば…」
「いやいやいや、そんな人送られても食べさせられないですよ〜!」
「日本のあちこちにセンターを作って、そこへ行って治療をするようにしなさい、一度に無理なら、まず1つを作ってそれから次でもいい。」
「先生、私は医者じゃないので、インドのお医者さんを送ってくれても、日本の医者とセットで働いてもらわなくては、何もできないんですよ。そんなハイスペックな人たちをフルタイムで養うほど、私は稼げないし、もう60歳なんですから、あとは後進に道をゆずって、私は自分の糊口をしのげればそれでいいので…」と、いいかけると
「Listen (聞きなさい)」、と話を遮られた。
「聞きなさい、今、君は、この20年の経験、知恵、技術、全てが熟している。これを注ぎ込んで国内のあちこちにセンターを作りなさい。
そして、そこへ教えに行って、そこの人たちを教育して、そこから広げていくようにするのだ。
そうすれば、自分の稼ぎにもなる。お金は必要だ。
我々は知識を占有しているべきではない。知識を与えても、独立していくものもあるだろう。だが、一緒にやる人たちもいるはずだ。だから、やりなさい。
専門家として、優秀な人材に来てもらうためにはお金が必要だ。
彼らは低いレベルに降りてきてはくれない。
だから、我々が高いお金を出して教えにきてもらい、その高みへいくのだ。そのためにもお金が必要だ。
稼ぐことは悪いことではない。飲み食いやパーティーをしようと言うのではない。こういう目的のためには稼ぐことも必要なのだ。」
こんな話を、先生はいつも、私にしながら、自分で自分に言い聞かせたり、確認したりしながら話しているようにも見える。
面白かったのは、日立を過ぎたあたりで、12ものトンネルが続くところがある。先生が、重要なことを言おうとするたびに、トンネルが来て、うるさいので、黙らなければならず、話し出すと、またトンネルが続いて、話の続きはお預けになってしまい、6つ目のトンネルに入ったあたりで 私はもう、何の話をしているのか、さっぱり思い出せなくなってしまった。笑
だが先生はしっかり覚えていて、さっきの続きのところからドンピシャと、まるで何ごともなかったかのように、ビデオの再生ボタンを押したかのように、話し始めることができる。
さらに、そんなことをしながらも、「次のトンネルで最後だろう。出口の明るさが違う」とか、しっかり観察していて、その通りになったりするのだから、本当に能力が高い。
そして先生は時々、「そうだろう?」と言って、にこやかな笑顔を向けられた。それは本当に、本当に、もう、心の中のフィルムにしっかりと焼き付けておきたい笑顔だった。それが2回もあった。心の中の風景を現像できるアプリはないものかと思った。それほどに、貴重な瞬間だった。私の人生の中の宝物だ。
私には、悲しいくらいビジネスセンスがない。ましてや、この年で、畑ちがいのハードワークができるとは思えない。だが、そのために働く人たちを作ることならできる。今日からは福島へいって、セラピストの養成コースを行います。