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どうする?アーユルヴェーダ

昨年12月にプネで行われたアーユルヴェーダによるガン治療学会で、一番感銘に残った発表は、Dr.Renuka Gayal(レイヌーカ ガヤル医師)による、コロナ禍でのガン診療の話でした。


ガン治療の話

彼女はサダナンダ先生の片腕として、長年パンチャカルマセンターのリーダーとして働いてきた医師ですが、今は自宅で小さな診療所を開いています。

そこに、ある日女性の患者がやってきました。腹は腹水で膨れていて、いろいろ症状があり、肝臓ガンが疑われました。

しかし、その頃インドの病院は、生死の境をさまようコロナ患者で溢れており、MRIを使うことはできませんでした。かろうじて使えた超音波の画像だけをもとに、肝臓癌なのか、それとも他の疾患なのかを判別しなければなりません。さあ、どうする?!

そこで役に立ったのが、ニダーナパンチャカという、診断のための理論体系です。

ニダーナパンチャカ

アーユルヴェーダ大学では、医学というよりも、哲学か論理学ではないか?と思われるような授業があります。ニダーナパンチャカはその典型で、私はこれを教わっている時に、難しいのと退屈なのとで、あくびばかりしていました。笑 が、今回はその重要性に気づかされました。

ニダーナパンチャカでは、病気の原因を調べるために、今見えている原因の他に、見えない原因があるのではないか?見えていないとすれば、それはなぜか?小さすぎて見えないのか?それとも、その前にもっと大きな原因があるから見えないのか?ならばどう確認すればよいか?と、いう具合に思考回路を組み立てていく方法です。

コロナ禍でMRIが使えない中、彼女が頼ったのは、この理論でした。それに基づいて考えていくと、頭の中にいくつかのシュローカ(詩節)の形で書かれた古典書の一説が浮かび、まさにその一つがこの患者さんの症状にピッタリでした。

その記述にあわせて薬を処方したら… 腹水もふくめてこの患者さんの全ての症状は改善し、今も元気に暮らしていらっしゃるそうです。

コロナがおさまったのちに西洋医学の病院で検査をしたら、確かに肝臓ガンであることは確認できたけれども、すでにすべての症状はおさまっていたので、西洋医学の治療は受けずに、アーユルヴェーダの処方だけで、今も普通に暮らしているそうです。

アーユルヴェーダの底力

これがアーユルヴェーダの底力だなあ〜と感銘を強くしました。

そして、思い出したのは、20年前に見た、ガヤル先生たちの通勤風景です。

その頃インドは、今よりマイカーが手にいれにくい時代でした。そのため、プネ市内から郊外のワゴリにある病院に通うドクターたちは、カーシェアをしていました。ガソリン代を割り勘で払い、1台の車に4人で乗って通勤をしていたのです。

私も一度、その車に載せてもらったことがありました。その車の中で4人はおしゃべりをせず、一人が古典書を読みあげ、他の人たちはそれを聞いて覚えようとしていました。

学生ではありません。卒業して、すでに臨床経験を積んだドクターたちですが、それでも ひたすら古典書を読み続けていたのです。

こうして蓄えた知識が、ニダーナパンチャカのような体系だった理論によって紐解かれて、実践に役立つのです。その素晴らしさが、コロナ禍の不自由さの中で証明された発表でした。

あの授業…たいくつだと思ってあくびをしていた不明を恥じました。笑 次回中級コースでこの話を教える時には、もっと丁寧に教えよう!と心に誓ったのでありました。

彼女が働いていたパンチャルマセンターでの治療ツアーは8月に行います。あと少し、お部屋の空きがあります。

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