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雨がやんじゃった時のこと

帰るとき、傘を忘れた男の子がいた。
取りに戻ろうか悩んでいた。
周りの大人も友達も、「明日でいいじゃん。」とめんどくさそうに言う。

「じゃあ、一緒に取りに戻ろうぜ。」と声をかけた。

一緒に戻りながら男の子はポツリと言った。

「傘ね、昨日の誕生日に買ってもらった新しいやつなんだ。大事なんだ。」
「そうか、きっとかっこいい傘なんだね。私も見たいからついていくよ。」

正面玄関をこっそり入って取りに行く。

「あった!」と言って大事に抱えた。

「いい色ね。かっこいいじゃん。」と言った。



「雨、やんじゃったな。」と男の子は靴を履きながら言った。

「そうだね。」

私は自分の傘を忘れていたことを思い出して、そっととって靴を履いた。


忘れ物をした恐怖も、親の残念そうな顔を想像した不安も、ほっとした気持ちも、きっと私達しか知らないのだ。


*画像はおくちはるさんからお借りしました。

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