自己中心野郎を分析する(実践編)
どうも皆さん。今回は小説『エロゲ転生 運命に抗う金豚貴族の奮闘記』の主人公の小さいころについて分析していきます。前回は理論編を書きましたので、先にそちらから読むことをお勧めいたします。
超大作と一部の界隈で話題となったエロゲをクリアして寝たら、目が覚めると寝る前にクリアしたエロゲに転生していた。しかも、序盤で主人公に決闘を挑んで敗北するかませキャラにだ。さらに付け加えると全てのヒロインルートで死亡が確定している。
そんなかませ犬に転生したのだが、状況はさらに最悪で既に決闘で敗北したところからなのだ。最早、死から逃れられない。だが、諦めてはダメだ。俺には前世でクリアしたエロゲの知識がある。それを駆使して生き残ってみせる!これはエロゲのかませ犬キャラに転生した主人公が生き残る為に一生懸命運命に抗う物語。
この作品では、異世界のレオルドの体に、日本人仙道真人(の魂?)が転生するというお話。そして題名道理、転生する前のレオルドは自己中心野郎です。では、なぜレオルドは自己中心的になってしまったのかということを『結局、自分のことしか考えていない人たち』サンディ・ホチキス(草思社文庫)を基に分析していきます。
なぜ自己中心的な人間になったのか
主人公レオルド(仙道転生前)は武術大会で優勝したことがきっかけで自己中心的になりだしたと作中では語られている。それに彼の家は公爵家、2つ下の弟と妹を持っており、母親は「自分がしっかり叱らなかったからあんなになったんだ」と語っている。だが、父親は作中ではしっかり叱っていた。これが現状だろう。
前回理論編で言ったが、自己中心的になる原因の一つとして母親が恥を感じている子供をしっかりケアしなかったことが原因であると書いた。
両親には悪いが、彼は本来母親のケアで学習すべき感情コントロール力を教えられず、独自の処理方法を確立してしまったという見方が濃厚だろう。そして、自己を確立させ、発達せずに1,2歳児のままになってしまったと考えられる。(まあ、レオルドがおかしくなったのは5歳なので、そこはつじつまが合わないが)
さらに言えば、彼には2つ下の弟と妹がおり、親の意識が弟妹に注がれ、レオルドとして最も大切な1,2歳児に、しっかりと見れていなかった(ケアができる余裕がなかった)ということも考えられる。(彼の家は公爵家なので、使用人がおり、レオルドをおざなりにしてまでも子育てが大変だったとは考えられないし、大変だったとしても養育者が必ず付くから心配はないということでつじつまは合わないが)
独自の放出方法
そういうことで、独自の放出方法として
①皆の前でゲームの主人公であるジークに決闘を挑む。
②父親に「自分は悪くない」と幻想を突き付ける(本来転生していなかった場合のレオルドが話す言葉を仙道が演技で話す)
暗殺者の執事と戦って負けても「自分は子供だから、大人になったら強くなっている」という歪曲。
④ジークを恨んで攻撃
⑤公爵としていやがらせ
(理論編と関連させている)
などなど、誇大感、万能感、特権意識という自己中心的な人間の特徴が描かれている。読者もこの小説を読んで理論に当てはまる行動を見つけてみるのが面白いだろう。
レオルドの心
描写はされていないが、ホチキスの理論に基づくと、レオルドはこの上ない恥の感情を感じていたであろう。その恥の感情を回避するため、認識しないためにネガティブな放出方法で意識をそらしたと考えることができる。
彼は父に叱られ、執事にコテンパンにやられていた。ということは、恥の感情は感じていたに違いない。しかし、自己中心的な思想は治らなかった。これは、もうすでに恥の感情の処理を確立してしまったことが原因ではないかと私は考える。
なぜ仙道の転生で、自己中心性がなくなったのか
仙道は自己を確立した人間である。つまり、他者と自分とを分けることができ、ネガティブな感情のコントロール力も日本から持ってきているであろう。つまり、「他者と自分は一緒」という意識を持っていたレオルドは、仙道の転生によって「他者と自分は違う」という意識に変わったことが原因だと考えられる。
母親ができたこと
理論編では脳が十分に発達していろいろな感情を自分で処理できるまでは、思いやりに満ちた母親の手助けが必要であり、耐え難い恥の感情から、幼児を守ってあげる必要があると書いたが、もう少し彼の感情を気に掛けるべきだったかもしれない。
注意:この視点はあくまでも一つの視点ですので、親が悪とは断定できません。親にも環境の問題などあり、やむを得なかったのかもしれません。ほかにも考えることができる視点があれば、考えてみるとよいかもしれませんね。