父のこと2
わたしが思春期の時、父親が不倫をした。
思春期というのは父親が特にイヤになるものである。
ダブルパンチというか、とにかく最悪な時に最悪なイベント勃発という感じである。
うちは事業をやっており、その従業員に手を出した。
母にバレた時、父はその女性宅(会社の寮)に家出して
1週間帰ってこなかった。
本当に地獄の1週間だった。
未だにあんまり思い出したくもない。
わたしは、不倫は置いといて、家族を捨てた(1週間でも)ことが許せなかった。
当時は真ん中の兄は家を出ていたので、母と長兄とわたし三人で頑張ろう、離婚してイイよ、という話になっていた。
それから普通に父親は帰ってきた。
夫婦のことだし娘に謝ることはないと思っていたのだろう、何の言い訳も説明もなかった。
わたしも聞かなかった。
一般の家庭と違って、事業をやっているので従業員には全部バレているし、お客さんにも伝わっちゃうし最悪だった。
事実なのに他人にイジられると感に障る。
お客さんにお父さんは不倫してるんじゃなくて恋愛してるんだねって言われて余計にイライラ。
それからわたしは20年近く父親のことを許せなくて、表面上普通に接してはいたものの心の底では許せなくていなかった。
心の底ではわたしは無視し続けていた。
病気で倒れた時、2度とももこの人もうすぐ死ぬんだなとドライに思っただけだった。
ずっと死を覚悟してしていたのにその後父は何十年も病気と戦い、寿命を全うした。
それを見ているうちに気持ちが段々と変わって行ったのだと思う。
母親は表面上許しているように見えたけど、本当のところは分からない。
わたしは父が死んでも泣かないだろうと思っていたがその通りになった。
泣かなかった理由は別で、お葬式はじめ死に関わる煩雑な手続きのせいで泣いている暇はなかった。
身近な人が亡くなったことがある人分かるだろう。
現実が一気に押し寄せてくるのだ。
ただ葬式後、役所などの手続きを終えて帰る電車の中で一人藤井風を聴きながら涙が止まらなかった。
みなさんもお気をつけください。
心が敏感な時の藤井風の破壊力ヤバいです。
もうすぐ納骨。
当日わたしは何を想うか。
父の好きだった曲を流してあげたいと思う。
許せてるか分からないけどあなたの生き様、見届けました。