LONG TIME AGO #18杯目

あの日から中村と一緒にいることが多くなった。

彼の自宅で自慢のステレオを覗き込むようにすわってキヨシローの名曲を聴いた。最後は決まって歌詞の話になる。

「タイマーズのロング・ タイム・ アゴー、こんな原爆の歌ってすごくねえか」

「なんで反原発ソングだと発売が中止になるんだ? 」

「なんで放送禁止の用語ってあるんだ? 」

キヨシローの「なんで」が僕らの「なんで」になっていく。

「ロックだよな! キヨシローは」

その魅力に取り憑かれていく僕に中村は言った。

「東京でゲリラライブがあるって噂なんだ。行ってみないか?」

友だちと一緒に東京に行くのは初めてだった。

この日のために「むげん堂」で買ったピンク色の象柄プリントのシャツを着て、アフリカ産のウッドビーズアクセサリーをあしらい、赤黄緑が激しくぶつかり合うラスタカラーの帽子をかぶった。サングラスはジョン・レノンがかけていたような黒く丸いものにした。

宇都宮駅の改札に行くと、僕と同じ黒くて丸いサングラスをかけた中村が立っていた。

「おう。イカした格好してんじゃん」

改札前の青白い光の下、駅の通路を行き来する人たちが、僕らを見てみぬ振りをしている。何かが起こりそうな土曜の朝を感じながら、ポケットに手を突っ込んだままホームの階段を降りて行った。

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