銚子電鉄に公共性はあるか
【おことわり】
今回の記事は、本文中にオゲフィンな表現が多々登場します。品行方正に生きてきた方々には不快感しか与えませんが、私にとってはこれが平壌運転なのでご承知おき下さい。
2021年6月30日に開催された銚子電気鉄道の株主総会で、筆頭株主が竹本勝紀社長に鉄道事業からの撤退を迫る一幕がありました。
https://www.asahi.com/articles/ASP6Z6WYRP6ZUDCB00K.html
この発言に対しては、Twitter上の鉄道クラスタから「廃線したらぬれ煎餅が売れなくなるだろ」という総ツッコミが入っていましたが、ここで冷静に考えなければならないのは、果たして「ぬれ煎餅を売る為に鉄道事業へ公的資金を注入し続ける事が本当に正しいのか?」という事です。当然ながら、この筆頭株主はそこまで視野に入れて「銚子電鉄に公共性はない」と言っている訳ですが、鉄道クラスタで「その財政支援に費用対効果はあるか?」まで考えている向きは少ないようです。
鉄道事業を「本業」の看板代わりにしている事例として有名な企業に、紀州鉄道があります。
鉄道路線の総営業キロは僅か2.7km、年間の赤字額は数千万円にもなりますが、この会社の本業はあくまでもホテル事業であり、そこで鉄道事業の赤字額を遙かに上回る営業利益を叩き出しています。そのホテル事業で「鉄道会社のホテルである」と謳いたいが為に、広告宣伝費代わりに数千万円の赤字を垂れ流しているというのが、紀州鉄道の実態です。
一方、銚子電気鉄道はと言うと、鉄道事業の営業損失が大きすぎて、ぬれ煎餅等の物販事業では到底埋め合わせが出来ていません。国や地方自治体からの補助金を注入して何とか車両検査費用を捻出している為体で、とても「鉄道事業の赤字はぬれ煎餅の広告宣伝費」などと悠長な事を言っていられる財務状況ではありません。輸送密度が1,000人/日を大きく下回っている所を見ても、とても「地域公共交通として欠かせない存在」であるとは言えません。
そうなると、あとは「銚子電鉄が存続する事により銚子市に財政上のメリットが発生しているか?」という視点でしか財政支援の正当化を目論む事は出来ません。要は、銚子電鉄の存在が観光入込客数の増加や定住人口の増加、或いは企業立地の促進に繋がっているかという事です。更に言うなら、それが銚子市の市税収入に繋がってこそ、初めて銚子電気鉄道への財政支援は正当化されるのです。そして、この財政上のメリットすらないという事は、竹本勝紀社長自身が一番よく理解している事でしょう。だからこそ、テレビ出演の際に共演者から「税金の無駄遣い」だと指摘されても「全く反論できなかった」のです。
https://sirabee.com/2020/09/27/20162417135/
そして、銚子電鉄の存在意義を数字で示せないからこそ、「鉄道は(お金に置き換えられない)地域の広告塔であり情報発信基地でもある」という精神論に逃げざるを得なくなっているのです。要は、「銚子電鉄は銚子市のシンボルである」と言っているようなものですが、費用対効果のないシンボルなど、唯の飾りでしかありません。ハッキリ言って、今の銚子電鉄はキモヲタ童貞が「シンボルロック」を歌いながら未使用の粗チンを全裸でぶん回しているようなものです。
改めて、「鉄道事業に関する補助金で米菓製造販売会社の赤字を補填する事が本当に正しいのか?」という事は顧みられるべきです。銚子市の米菓製造販売業全体を底上げしているのであればいざ知らず(それでも鉄道予算を投じる事の是非については論じられるべきですが)、現状はとある1企業の赤字を補填しているに過ぎません。コロナ禍や2025年問題という財政上の大きな障害を前に、こうした財政支援には持続性がないものと言わざるを得ません。
店仕舞いする余裕がある内に会社を綺麗に畳むのも、また経営者としての重要な仕事です。